NTT川添雄彦常務にもらった「IOWN構想」という本を読みました。遅ればせー。
NTT澤田体制が打ち出したテクノロジー先導の新ビジョン。
ネット、スマートからAI/IoTに転ずるに当たって、GAFAやBATの向こうを張る通信キャリアの気概が読み取れます。
IOWNは、80年代のINS=ニューメディア、90年のVIP=マルチメディア、2000年代のNGN=ブロードバンドに次ぐ大構想。同時にそれはネットやスマートをうまく主導できなかった通信キャリアの追試答案のようです。壮大でありながら、夢物語を描くのではなく、真面目な技術屋魂が読み取れます。
IPを超える「オール光」によるネットワーク刷新と、サイバー空間に現実空間と同じモデルを作る「デジタルツイン」。伝送容量125倍、低遅延200倍、低消費電力100倍を打ち出しています。そこにAI、VR/AR、量子コンピュータ、バイオメディカルなど11のテクノロジーが入れ子のように絡み合う。
ぼくが惹かれたのは、技術主導でありながら社会実装を深く見つめている点。あらゆるモノにセンサーやカメラが装着され、社会課題の解決に向けられる。
例えば容量や速度の問題でデジタルはリアルの情報をカットしてきたが、人間の目では判別がつかないような異常もデータとして処理できるようになる。
さまざまなセンサーで情報をデータとして捉え「蜂の視覚やゴリラや犬の嗅覚、コウモリの耳、そうしたものもナチュラルに捉えてていねいに拾い上げていくとしたら、人間の五感を大きく拡張していくことができるだろう。」
身体拡張。おもしろい。
「サイバー空間にもうひとりの『私』が再現される」。いいね。
コロナはぼくらの存在を一気にバーチャル世界に押し込み、その中でどう暮らし、働き、遊ぶのかが現実問題となりました。ぼくはかけもちZOOM会議も多くなり、アバターに代理してもらいたい。そんな技術の到来を待ち望みます。
IOWNは「桁違いの正確さと迅速さ」で未来予測を行う、というのもおもしろい。公共空間での人流予測。バイオデータに基づく感染症の対策。正確・瞬時の渋滞予測や事故回避による自動運転。人と人のAVコミュニケーションを遥かに凌ぐデータ量が飛び交う世の「インフラ」を提供する、ということですね。
NTTがラスベガスで推進しているスマートシティも構想の一環として紹介されています。その後発表されたトヨタとの提携による静岡県裾野市の構想も同様ですね。Googleがトロントの構想を中止するとの発表がありましたが、街づくりのような長期の公的な仕事は「インフラ」屋に面目を保ってもらいたい。
ユースケースとして、MaaS、医療、金融、教育、公共などを挙げています。オープンイノベーションが大事です。通信キャリアはつなぐことが仕事。そのプラットフォーム力が技術力とあいまってどう発揮されるのか。注目します。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2020年11月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。