12月1日にOPEC総会と非加盟国のロシアが参加するOPECプラスが開催されます。焦点は年内を期限とする日量770万バーレルの減産を延長するかどうかに注目が集まります。方向性としては延長があり得るのではないか、という読みからこのところ原油価格が締まっていたわけです。ただ、イラクやUAEなどが後ろ向きとされ、その行方は読み切れません。
仮に減産延長が決まれば原油価格は中期的に更に引き締まる可能性があります。また、バイデン氏がアメリカのシェールオイルに対するネガティブ感から個人的にはアメリカ国内の石油開発は今後長期低迷する可能性を見て取っています。
特にESG(環境、社会、ガバナンス)が今後、キーワードになることは確実で、環境重視政策をとるならばアメリカの石油供給量が減るわけで原油価格は目先、上がれども下がりにくくなる可能性はあります。もちろん、超長期的に見れば代替エネルギー源が増えてくるでしょうし、原油に頼らない社会が少しずつ進んでくるでしょう。しかし、そこに到達するにはまだ何十年とかかるとみています。
話は横にそれますが、ベトナムの火力発電開発に関して旗振り役の三菱商事、中国電力、メガバンクなどに対してESGを重視する欧米の投資家連合が計画撤退要求を突き付けていると報じられています。書簡は12通でうち8通が日本企業だと日経が報じています。
先進国ではもはやESGは避けて通れない案件であり、日本のように資源がない国だからこそ、代替エネルギー開発で世界のトップを走るべきだったのにいまだに石炭火力発電を推進するのは世界の同調を得られにくくなっています。
但し、日本の瀬戸内海に中国電力とJパワーの実験施設があり、そこでは石炭火力発電から発生するCO2の9割を回収する技術開発が進みます。よって石炭火力=悪というイメージは変得られないわけではないとも言えます。
さて、中東ですが、私がなぜ注目するのか、といえば対立構図が中東=イスラム対イスラエル=ユダヤからスンニ派とイスラエル連合対イラン=シーア派に本当に変わるのかという点であります。
ご承知の通り、トランプ大統領の努力でイスラエルと中東の3つの国(UAE,バーレーン、スーダン)と国交を樹立、特にイスラエルとUAEではビジネス関係が急速に膨れ上がっていると報じられています。特に石油ビジネスに胡坐をかいてきた中東諸国が脱石油時代の到来を感じ、新たな分野の産業育成に取り組み始めています。その点からイスラエルがパートナーとして急浮上したとも言えます。
一方、サウジアラビアのムハンマド皇太子とイスラエルのネタニヤフ首相が極秘会談したのではないかとも各方面で伝えられています。
この会談の意味合いは二つあるとみています。一つは連続して起きている中東諸国とイスラエルとの国交樹立に関してイスラエル側からサウジへの秋波、もう一つがバイデン氏が大統領になった場合、イランとの核合意復帰を通じたアメリカとイランの距離感が縮まることに対する意見交換ではないかとみられています。
これが意味することはバイデン氏が容易にイランと接近する、あるいは交渉のテーブルに着くことに抵抗を持っているとも取れ、以前から指摘するように民主党の外交政策では問題が早速噴出する可能性が出てくるともいえそうです。
トランプ大統領が仕組んだであろうイスラエルと中東各国との国交樹立を私はノーベル平和賞ものと以前、申し上げたのは歴史的に絡まり、ほどけなくなっている糸を経済の連携という切り口で岩盤の切り崩しをしたことを評価したいと思ったからです。
アメリカの民主党が掲げる政策は小学生向けに平たく言えば「世界は一つ、仲良く手をつなごう」ということかと思いますが、そんな理念ばかりでは表面繕いの真の関係は築けないことは多くの人が既に分かっています。
オバマ元大統領のG20がほとんど成果を上げていないのはパーティーでお互いが顔見知りになってもそれ以上突っ込んだ関係を作れなかったのにその反省がいまだ十分になされていないからでしょうか?
イランはアメリカを心底嫌っています。そこにバイデン氏がスィートディールを今、持ち込むべきなのか、と言えば私は違うと思うのです。中東とイスラエルの連合をもっと強化し、まずは難攻不落のサウジとイスラエルの国交正常化を目指すべきかと思います。
サルマン国王はパレスチナ問題を最優先していますが、ムハンマド皇太子はもっと現実派とされます。またサルマン国王が皇太子への早期の権限移譲を考えていることを踏まえればアメリカが対イラン政策を優先する理由はないと考えています。
21年、環境問題に端を発して脱石油化が進む中、経済面を含め、中東がどう動くのでしょうか?動かし方次第でその行方は大きく前進もするし、作り上げたものを一瞬にして壊すことも可能です。世界の潮流という意味で重要性はあると考えています。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年11月30日の記事より転載させていただきました。