May_Roma氏こと谷本真由美氏の「世界のニュースを日本人は何も知らない2」で世界のニュースを勉強しました。
この本自体は、「日本人は世界のニュースをほんと知らないわねえ」と著者が半笑いを浮かべながら日本人に教えてくれるというよくあるちょっと偽悪的な本でもあります。
内容は、日本人は海外(主に欧米)が進んでいると錯覚しているけれど、じっさいは酷いものだという暴露と、日本は住みやすいというものです。
谷本氏は「日本が世界一「貧しい」国である件について」「世界でバカにされる日本人」というような著作のタイトルからもわかるように、日本ディスな本を何冊も書いて日本社会の後進性を説いてきた英国在住の「国際人」であったし、私はその舌鋒の鋭い日本批判に喝采を送っていた一人でした。
私の手元にある「日本が世界一「貧しい」国である件について」の帯によりますと、
ロンドン在住、元国連職員の著者が見た「日本は世界でかわいそうな国だと思われている」という現実。若者の自殺、「社畜」的働き方、「人付き合い地獄」の社会、「みんなで不幸になろう」という足の引っ張り合い、グローバル人材なんて育つはずもないおかしな教育、何でも人任せで自分で考えない「クレクレ詐欺」。空気を読み過ぎて「セルフ洗脳」に陥る日本人たちの「貧しさ」を、世界の現実と対比させながら問いかけます。
けれども、前著「世界のニュースを日本人は何も知らない」(12万部突破!)からは風合いが変わってきました。氏は「欧米はダメ、日本は素晴らしい、でも日本人はちょっと世界のニュースを知らなさすぎるわよね」という立ち位置をとることになりました。これは長年、氏の著作に親しんでいたものとしてはちょっとした驚きでした。
私はどちらかというと、氏の以前のスタイル、日本のサラリーマンなどの商慣行をシニカルに描いたスタンスが大好きでした。東日本震災時の日本政府やマスコミの対応も、以下のように厳しい指摘をされています。
復興が驚異的に早くて道路が数日間で直ってしまった、災害があったのに暴動にはならず秩序が保たれた――といった前向きなニュースもありました。しかし、それ以上に注目されたのは、原発で働く人々への冷徹な待遇とか事故を起こした関係者が処罰されないこと、被災者に対する支援が不十分なことでした。(「世界でバカにされる日本人」(2018)P62)
バブル崩壊までのわが国は、世界経済をリードして未来を象徴するようなキラキラと輝いた国だったのに、今や災害で悲惨な目に遭った人たちをないがしろにしているのです。(同書 P63)
それが一転して、以下のように変化しています。
このように、他の国にはコロナ禍にもかかわらず好き放題にバーティーをやったり、東アジア人を差別したりと、自己チューで配慮も何もない人々が大勢います。日本の野党やリベラル系の人は、麻生太郎さんの「日本はおたくの国より民度が高いんだ」という発言を散々批判しましたが、むしろ欧州では、この発言に同調する人が多いのです。自国政府やルール違反の人々にうんざりしているわけですから、「よく言ってくれた!」と絶賛です。麻生さんを批判するのは、海外の実態を理解していない日本の左翼やメディアだけでしょう。(世界のニュースを日本人は何も知らない2(2020) P88)
さらにこう言い切っておられます。
これは単に計算が早い、知識がたくさんある、他人を出し抜くのがうまい、といったことよりも、はるかに繊細な感覚と感受性を要求される能力です。日本人には、そういう資質を持った人がたくさんいます。これは他の国にはない重要な文化的資産です。それに気がついていないのは、今の日本の状況が当たり前だと思い込んでいる日本人だけです。ボストコロナの世界では、衛生環境がよく、統制がとれていて、地味だけど真面目で、自分よりも他人のことを考えようという国が、安全な「投資先」や「協力先」として大いに脚光を浴びていくはずです。
それはまさに日本です! 新型コロナの第二波を防ぐためにも努力を継続し、ふたたび「ジャパン・アズ・ナン バーワン」の世界が来るように頑張ろうではありませんか。(同書 P89)
私のような世界のニュースを知らない日本人には、ほんとうに心強いコメントです。
レビューなどで書評のような感想のようなものを読むと、「マスコミに騙されていました」「もっと考えて生きます」とおおむね好意的に受け取られています。
ただし、感想のなかで、前々著までの論旨と比較をする人はほぼいないようです。
最近の本の売れ方の傾向として、特定の著者を読むということはなくなっているのかもしれません。右にせよ左にせよ、自分の嗜好にフィットした刺激的なタイトルに惹かれて、われわれは本を買うようになったのでしょう。
谷本氏の往年のファンとしては、氏が心から日本を賞賛されていると信じたいです。
2021年、日本国民がますます内向きになれば、日本スゴイ論はさらに高まることでしょう。