電波埋蔵金とオークション - 松本徹三

2009年02月01日 10:31

はてなブックマークでアゴラについてのコメントの一覧を見ていたら、「類は友を呼ぶを実践。アレな人ばかりでいつまで続くのかな。某教科書みたいに内輪揉めもありそう」というのがありました。

硬派のブロガーとして人気の高い(敵も多い?)池田先生と異なり、この世界では無名な私や友人の北村隆司君は、お誘いを頂いたのが大変光栄で、喜んで参画しましたが、特に「類が友を呼んだ」とは思っておりません。「アレな人」というのは、「反体制で、強引な議論が多い」というような意味かなと、勝手に推測していますが、「まあ、そう言われればそうかも」と、素直に受け止めています。


しかし、私は「アゴラ」の趣意には諸手を挙げて賛同しており、「類は友を呼ぶ」ということではなく、むしろ「立場や意見の異なる人達が、真剣に堂々と議論を闘わす」ような場が出来ることを期待しています。私自身は、議論の相手には特に実名を出して頂く必要はなく、たとえ仮名でも、一貫して合理的な議論をして頂ける方なら大歓迎です。(例えば、官僚の立場を代表する一流の論客が、仮名で論戦に参画して頂ければ、とても面白いと思います。)

そこで、「意見が違うところもある」ことのデモンストレーションも兼ねて、「アゴラ」のサイトの左欄にリンクが張られていた池田先生の「オープン周波数オークション」というタイトルのディスカッションペーパーに関連して、この機会に私の意見をあらためて述べさせて頂きます。

「電波埋蔵金」の存在については、私も以前から指摘(2008年8月8日付の私のブログ)していますが、周波数オークションには基本的に反対の立場をとっています。(2008年5月26日付のブログ「良い競争、悪い競争」をご参照ください。)

私が周波数オークションに基本的に反対である理由は下記の通りであり、このことは、東洋大学の山田肇先生の主宰で昨年末に行われたICPF のフォーラムで、高橋洋一先生と池田信夫先生のお話に対する「反論」として、会場から挙手して発言したことでもあります。

1)オークションでは、「万一の落選」を恐れなければならないため、どうしても高値応札となり、このことが、結果として肝腎の設備投資を遅らせて、サービスの質を落としたり、サービスコストを上昇させたりすることにつながる恐れがある。(欧州の3Gサービスの充実が遅れたのはこれに起因した。)

2)これまでの周波数の割り当ては「済んだこと」としてそのままにされ、新しい周波数の割当のみにオークションが適用されるとすれば、結果として、新しい周波数割当に頼らざるを得ない新規事業者に「既存事業者に対するコストハンディキャップ」を課することになり、「既得権者の保護」につながる。

3)オークションにかかる周波数帯が限られたものであれば、大きな資金力を持つ既存事業者に、「敢えて採算を無視した高値で入札して、新規参入者を締め出す」オプションを与えることになる。(新規参入者を締め出せれば、仮に取得するために投じた大金が無駄遣いになっても、全体として採算が合う。)

4)技術や市場の本質を理解しない企業が「勘違い」によって高値落札し、事業化の途中で断念したり、サービス開始後に破綻したりすると、大きな経済的ロスが生じるのみならず、貴重な周波数が長期間にわたり使われず、その期間中、ユーザーは「よりよいサービス」を受ける機会を逸失することになる。

5)高値入札の結果得られた高額の収入は、そのまま国庫に納められ、一般財源として運用される可能性があり、こうなると、国が本来は最も育成していかねばならぬ筈の通信情報産業から、他産業への「資金の移転」が行われる結果になってしまう。

上記中の1)や4)や5)に対しては、池田先生などから反論も出ましたが、2)と3)については、これまでは考えていなかったこととして「留意が必要かもしれない」という結果になったと理解しています。

尤も、私も全てのオークションに反対しているわけではなく、上記のようなマイナスが生じないケースについては、一部オークションも導入してみたらよいと考えています。

例えば、今計画されている新しい放送衛星(BS)チャンネルについては、寿命のある既存のトランスポンダーの利用権の供与であって、大きな新規の設備投資を必要としないことから、上記の1)や4)は懸念材料とはなりえず、また、既存放送会社がこれまで赤字を蓄積しながら今日の価値を創出したものであることから、2)も反対の根拠にならないので、オークション適格案件かもしれません。

また、私は、免許を受けた事業者が効率利用の努力を怠って、周波数の無駄遣いをするようなことがないように、合理的な電波料を全ての事業者に課すことも提案しています。(2008年9月8日付のブログ「仮に電波が土地で、電波料が固定資産税だと考えたら」をご参照ください。)

松本徹三
(ソフトバンクモバイル副社長 ‐ 但し、このブログは個人として投稿しており、勤務している会社の見解を代表するものではありません。)

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