郵政民営化とは何だったのか - 池田信夫

2009年02月11日 13:02

麻生首相の郵政民営化をめぐる発言が、また二転三転して批判を浴びています。しかし私は、これはある程度やむをえないと思います。郵政民営化は何のためにやったのか、いまだにはっきりしないからです。


これを法案化した高橋洋一氏もいうように、問題の「本丸」は財投改革であり、それはほとんど注目されないまま90年代に終わっていました。資金運用部を解体して、郵便貯金を全面的に自主運用にしたことは、当時は郵便局長に歓迎されたそうですが、実は郵貯は非常に大きなリスクを抱え込むことになりました。彼らは資金運用のノウハウをもっていないので、300兆円を国債などの低金利商品で運用したら、高金利の定額貯金は逆鞘になってしまうのです。

だから郵政民営化によって運用の自由度を広げ、郵便局を合理化することは、むしろ郵貯の生き残りのために必要な内部改革で、国政選挙で問うような問題ではなかった。あと5年も放置していれば、郵貯に大幅な赤字が出て、自主的に民営化せざるをえなかったでしょう。その意味で、2005年の「郵政選挙」はかなり奇妙な選挙でした。

ただ郵政民営化の象徴的な意味は大きかった。「民にできることは民に」という小泉首相のスローガンはわかりやすく、80年代以降、多くの先進国で行われてきた「小さな政府」への転換をめざす点で正しい方向でした。これと同時に道路公団やの民営化や特殊法人などの削減が進められ、日本も遅ればせながら「普通の経済大国」になるように見えました。

ところが安倍政権になって求心力が低下し、福田政権では自民党内の抵抗勢力への妥協が始まり、最近では郵政民営化を否定する方向に舵を切ってしまいました。麻生氏の党内基盤はほとんどないので、これはやむをえないでしょう。では政権交代すればいいかというと、民主党は「郵政民営化の見直し」や訳のわからないバラマキ政策を掲げており、次の総選挙で政権をとっても短期間で崩壊するでしょう。

だから、いったん政権交代が起こり、自民党が野党に転落して、まともな政策を掲げないと選挙に勝てないという危機感が浸透し、小泉改革を継承する勢力を中心にして、保守派が自己改革する必要があると思います。しかし不安要因は、今の自民党に経済政策を理解している政治家がひとりもいないことです。中川秀直氏は、高橋氏の受け売りで時代錯誤のリフレ政策を唱えているし、「自民党随一の経済通」と思われている与謝野氏は不況の最中に増税を掲げるし・・・

たぶん経済学は、政治家が理解するにはむずかしいのでしょう。だからアメリカのように経済問題は経済学者にまかせるしくみを根づかせる必要があると思います。それには経済学のほうも、今のような自己満足の理論モデルではなく、実証的に説得力のある研究をわかりやすく発表して、与野党にアピールすべきです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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