バルセロナから (Mobile World Congress) - 松本徹三

2009年02月20日 16:36

今週は、スペインのバルセロナで行われているMobile World Congress にずっと出ていました。(ニュース記事などはこちらを参照ください)これは、かつては欧州生れのGSM / GPRSという第二世代の技術を採用し、現在はWCDMA / HSPAと呼ばれる第三世代の技術を採用しているモバイル通信事業者が中心になって運営している「GSMA」という組織が、毎年一回開催する業界最大のイベントです。(この組織の活動状況については2008年1219日付の私のブログ「GSMで起こっていること」をご参照ください。)


現在の経済危機のあおりで、さすがに今年の入場者は昨年に比べると15%程度少なかったようですが、それでも会場内には十分な活気がありました。GSMA内部のBoard Meetingなどの諸会議は、Congressに先立って先週末に行われましたが、ここでの討議はむしろ例年以上に活発でした。

GSMAの諸会議の冒頭に、先のDavos会議に出席した事業者のCEOの何人かがその報告をしてくれましたが、そこでもTelecommunication、特にMobile Communicationに対する期待は極めて大きく、逆に言えば、全産業の中で、このセクターの話題のみが辛うじて前向きのものだったようです。ここでも最大の牽引車として期待されているのは中国で、「遅ればせながら第三世代施設の導入を決めた中国が、この為に600億米ドルの投資を見込んでいる」ということが発表されると、それだけで、会場内には控え目ながらもどよめきが起こったようです。(尤も、これは分科会でのことで、本会議の話題は90%以上が金融に関するものであり、それも、「今回の問題はどうして起こったか」「再発防止のために何をなさねばならないか」という議論が殆どで、「現在の状況から一日も早く脱出するためには何をせねばならないか」という議論は殆どなかったとのことでした。)

GSMAのBoard Meetingでは、当然日本の状況についても説明が求められましたので、私は大略下記のようなことを言っておきました。

「新しい車や住宅には深刻な買い控えが起こっているが、幸いにも、電話やメール代を気にする人はそんなにいない。 むしろ、若い人達は、携帯電話機さえ持っていればそれだけで済むような『ささやかな楽しみ』に傾斜している。ビジネスやサービス産業に対しては、我々は『合理化によるコストダウン』を提案する立場にあるので、不況はむしろ追い風と受け止めている。トヨタ自動車など、これまで日本経済を牽引してきた輸出産業の業績が極端に落ち込んだので、NTTが再び最大の法人納税者として浮上しているが、我々は、今こそ、サービスを多様化することによって更なる競争を促進し、結果として、日本経済の不況脱出に重要な貢献が出来るよう、心を引き締めている。」

欧米各国の事業者の考えも、大体同じであるような感じでした。

さて、このようなイベントでは、日本企業のプレゼンスが年毎に低下していくように見えるのが、私にとってはいつも気がかりだったのですが、今年のバルセロナでは、幸いにしてそのような印象は受けませんでした。ドコモ、NEC、Panasonic、東芝、日立、アンリツなどの各社が、かなり見栄えのするブースを出していました。特にアンリツは、最新技術に対するテスト機器の分野では、常に世界をリードしているように思えました。

面白かったのは、最近ドコモを辞めて慶応大学の教授になった夏野さんのスピーチでした。彼は「日本がいつもガラパゴス島に喩えられるのは不適切だ。ガラパゴス島は外の世界から隔離されているために進化に取り残された島だが、日本は外の世界より早く進化を続けている」と言い、「欧米諸国こそガラパゴス大陸だ」とまでは言わなかったものの、相当強い調子で日本が常に進化の最先端にあることを訴えていました。(尤も、彼は、「日本は何でも最初にやるので、試行錯誤にたくさんの時間を要するが、欧米諸国やその後に続く発展途上諸国は、日本の試行錯誤から学べるので、ずっと短時間で追いつける」とも付け加えていました。)

成る程、そうなのかもしれません。新サービスに対する興味や、これを実現するための集中力にかけては、日本は世界をリードする力を持っていることは事実のようです。しかし、いつも気になるのは、コストに対する感覚の鈍さと、グローバルベースでのマーケッティング能力の欠落です。恐らく「コストが高いので世界市場では売れず、日本でしか売れないから規模の利益が出ず、従って、コストは高止まりのまま、マーケティングのための金もケチらなければならない」という悪循環が続くのでしょう。

ソフトバンクは値段に厳しいので、メーカーさんからは相当嫌がられているかもしれませんが、「ソフトバンクを満足させることが出来れば、世界市場でも勝てる」と考えていただいて、ご容赦いただければと思います。

バルセロナより 松本徹三

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