過払い金訴訟に歯止めを - 池田信夫

2009年04月11日 15:13

kabarai

池尾さんのおっしゃるように、消費者金融に規制が必要であることは当然です。特に債務者が合理的に行動すると期待できないときは、そのバイアスを勘案した規制が必要だということは、私もブログに書きました。問題はその手段です。


日本のサラ金規制は、きわめてアドホックで不透明なかたちで行なわれてきました。その最たるものが「グレーゾーン金利」です。これについて2006年に最高裁が「みなし弁済」を認めない判決を出して実質的に上限金利を下げ、今年1月にその時効を大幅に延長する判決を出したため、過払い金の返還を求める訴訟が激増しています。

グーグルで「過払い」を検索すると、400万件も出てきます。驚くのは、検索広告に弁護士事務所がずらりと並ぶだけでなく、検索結果のトップに「借金が貯金に!」という過払い金.jpなるサイトの広告が出てくることです。そこには、こう書かれています:

のんびりしてると、過払い金を回収できなくなるかもしれませんよ! というのも、近頃は、過払い金の請求があまりに多く、どの消費者金融も、経営が厳しい状況になってきているからです。 アイフルやプロミスなどの大手消費者金融が、店舗を閉鎖したりして、業務を縮小しはじめたというニュースを聞いた人も多いと思います。消費者金融にお金があるうちに、急いで請求しないと、「もう返すお金がありません」と言われてしまうかもしれません。ですから、今決断しないと、後悔するかもしれません。過払い金の回収は、はっきり言って、早い者勝ちです。

これがれっきとした「法律事務所オーセンス」という弁護士事務所の広告なのだから、恐れ入ります。この広告は借金の返済に困っている人を救済するのではなく、すでに借金を返した人に「返した金を取り戻せ」と勧誘し、消費者金融業者の資産を債務者の貯金に変えると宣伝しているのです。業者が「クレサラ弁護士は財産権の侵害をビジネスにしている」と怒るのも理解できます。

今回の貸金業法改正によって、こうした「錬金術」に群がる弁護士はますます増えるでしょう。すでに消費者金融業界は、昨年3月から3割減少するなど、大きな打撃を受けています。時効が大幅に延長され、昔の過払い金の返還を求める訴訟が増えれば、中小の業者のみならず大手も経営破綻するおそれが強い。金融庁は今年中に改正法を施行するそうですが、不況の最中に信用収縮を起こす法改正が必要でしょうか。

さすがに金融庁は総量規制は延期する方向のようですが、最大の問題は上限金利です。すでに下げた法定金利を上げることは政治的に不可能でしょうが、過去の債務について遡及して返還を認める「徳政令」は、法治国家としての日本の信用を毀損するものです。昨年、日本の消費者金融から撤退するときシティグループが言ったように、ルールのない国でビジネスはできない。少なくとも過払い金訴訟には歯止めをかけるように、金融庁が政令などでルールを決めるべきだと思います。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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