日本は国策としてEV(電気自動車)産業にコミットするべき(後編:HV vs EV) - 小川浩

2009年06月09日 19:39

後編こそが本題です。

そのまえに、前編の補足しておきましょう。
1. まず僕はホンダのクルマのオーナーであったことはあってもトヨタ車を買ったことはありません。トヨタ2000GTは好きですが(トヨタ2000GTも純正なトヨタではなく、ヤマハ製と言えますけど^^)。

2. HVではあってもトヨタのそれと同じではない、技術的に明らかに劣っているものであるのは確かです。燃費も高速道路をひたすら走ってデータをとればプリウスに接近したデータを出せますが、ストップ&ゴーを繰り返す市街地ではプリウスの方が上です。つまり、日常的な使用に耐えるエコカーとしての設計をしています。インサイトは、省エネのガソリンエンジンにモーターアシストをつけた構造であり、日常燃費についてはプリウスにはかなわないでしょう。また、間違ってはいけないのですが、プリウスは1.8リッター(2.5リッターと誤記、訂正しました→
Hirotnaraさん、深謝)、インサイトは1.3リッターであり、本来より燃費が悪いはずの大排気量車であるプリウスと小排気量車のインサイトの燃費を単純比較しても意味はないはずです。

3. だからといってインサイトのハイブリッドシステムが悪いと言っているわけではない。ただ、ホンダがトヨタを怒らせて、インサイトをクラスが上の(排気量が大きい)プリウスとの価格競争に直面させてしまったのは、マーケティングサイドのミスだと僕は思います。プリウスの価格を250万円程度に据え置かせたまま、UPTO 200万円の予算しか持たないユーザーを独り占めすることができたはず、と僕は言っているのです。

4. プリウスは長期戦略のもと生まれてきたHVであり、いますぐにでもEVになれるが、インサイトはとても無理。ここで後編に続きます。


■ HVからEVへのパラダイムシフトも加速中

さて本題です。

アメリカでも中国でも、ヨーロッパでも、いまやEVへの開発投資は莫大なものになっています。
現在の内燃機関のクルマは、HVへと進化するのではなく、いきなりEVへのリープをする可能性がでてきているのです。テスラのようなベンチャーの台頭もその一例です。

EVの普及の懸念材料は、電源の確保です。
電気を補充するための”充電ステーション”が町中に十分設置されない限り、EVには乗れません。しかも充電に何時間もかかったり、一回の充電での走行距離が数キロだったりすれば、とても実用には堪えません。

この難題を解決するための方法が、バッテリの高性能化と、家庭用電力を使って充電可能とする技術(プラグイン)です。

現在、EVの車載用バッテリはリチウムイオン電池が主流になりつつあり、この原料確保や抽出精度の向上が今後の焦点になると同時に、廃棄物の環境問題が顕在化する可能性がありますが、それはここでは触れずにおきます。
問題はプラグインです。

プリウスはすでにプラグイン対応車(PHV)のリリースが秒読みになっており、ここでも現在の市場の”その先”をみて開発されていることが分かります。そもそもプリウスの燃費は、他の欧米諸国が開発中のEVよりもよいとさえされていますし。(インサイトが限りなくガソリン車に近いHVであり、プリウスが限りなくEVに近いHVであると僕が言うのはこの点です)

■ スマートグリッド対応が決め手

ここでキーワードとして挙げたスマートグリッドを説明します。

スマートグリッドとは、Wikipediaの引用では「エネルギーとコストを節約するために、情報技術をもちいて供給者と消費者のあいだの電力伝送をおこなう技術のこと」です。分散した送電網は、Googleのサーバー環境にも似て、災害に強く効率的です。アメリカのオバマ大統領はスマートグリッドの普及目的で320億ドルの予算を組んでいます。

スマートグリッドが期待される最大の特徴は、例えば家庭用電源で充電したPHV もしくはEVから、余った電力を再利用するというアイデアです。つまり、双方向の電力共有ということになります。ネットの業界にいる僕には、これはWeb2.0以降にみられるソーシャルウェブの流れと酷似しているようにみえます。Web2.0はインターネットの普及と多くのユーザーの参加による、情報伝達の双方向化でもあります。スマートグリッドはこの考え方と同じです。Web2.0は、メディアのあり方を一変しました。とすれば、スマートグリッドもまた、エネルギー流通や社会インフラを一変するかもしれません。

この大きな流れに、日本のHVは入っていません。
そもそもプラグインが普及したとしても、例えばガレージから簡単に自分のクルマに充電ができそうな環境の米国に比べ、自宅と駐車場が物理的に離れている日本の多くの家屋の場合、簡単には自宅電源を動力源に使うことはできません。
また、インサイトはほとんどモータのみの走行ができない=EVではない、ので、そもそも車体に余分な電力を保てません。これに対してプリウスはEVモードで2kmを走れるだけの電力を貯められるので、これをスマートグリッドを介して他の電気消費に使わせることが可能になるでしょう。ただ、EVとしてのプリウスは、逆に言えばわずか2kmの走行距離ですが、GMのEV VOLTは64km、テスラにいたっては30分の充電で400km走ると言います。(テスラをガソリン車の燃費に換算すると50km/リッター程度)

スマートグリッドは今後、世界的な潮流になることは想像に難くありません。
少なくともアメリカではスマートグリッド(のエコシステム)に参加できるシステムを持ったPHVもしくはEVでなければ売れなくなることは目に見えています。ホンダはインサイトを売ることにかまけず、未来の指針となるハイテクカーを早く市場に出すべきだと僕は思います。

日本全体としても小手先のエコ減税(しかも海外メーカーにはまったく適用されず)でごまかさず、自社の基幹産業としての自動車産業を、後押しすることを考えないと、5年後には日本メーカーのいくつかが市場から撤退させられてしまうかもしれない。IT業界も、ベンチャーの起業環境も整備されてはいない中で、他の産業の心配をするのは僭越だとは思いますが、クルマを愛する身、そしてITやインターネットで起きている事象と同じような流れがリアルの産業を襲いつつあるという視点で、意見を具申しておきたいのです。

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