科学技術は役立たず、環境を壊すという教育 - 岡田克敏

2009年07月06日 13:12

 毎日新聞6月27日の「発信箱」に興味深い話がありました。筆者は科学環境部の記者です。初めの部分を紹介します。

『高校に出前授業に出かけた研究者がため息まじりに話してくれた。
 「科学技術が役に立っていると思う人?」と生徒に聞いたら、しばらくして半分ぐらい手が挙がった。「科学技術が環境を壊していると思う人?」と聞いたら、間髪入れず全員の手が挙がったという。「若者は科学技術より環境を大切に思っているんですね」


 事実、公害は科学技術を支える企業活動が生んだ。しかし科学技術は環境問題の解決にも貢献するはずだ。それをすんなり受け入れられないのは、大人たちの言動にどこかウソっぽさを感じ取っているのではないか。
 高校生でない私でも納得いかないことは多い。省エネを叫びながら、消費電力の多い大型テレビほどエコポイントがつくのはなぜか。ためたポイントでガソリンが買えるのは変だ。化石燃料使用を減らせと言いつつ、高速道路料金を1000円にしてドライブを奨励するのはどうなの?』

 後段は、経済発展に偏る政府批判で結ばれるという、お決まりのコースであります。しかし高校生の答えは別のもっと重要な問題を投げかけているのではないでしょうか。

 高校生の半数が「科学技術は役に立っていない」と認識し、全員が「科学技術が環境を壊している」と考えている事実に驚きます。それは現在の教育とマスコミの成果であると言えるでしょう。科学技術と環境とを対比させる見識もどうかと思いますが、少なくともこの記者はその「成果」をかなり肯定的に受けとっているようです。

 我々が日常的に享受している便利さだけでなく、飢餓と隣り合わせの生活から解放してくれたのも科学技術であることに異論はないでしょう。しかし高校生達は現在の文明は先人達の努力によって築かれたものという認識が希薄で、それは「あってあたりまえのもの」と思っているかのように感じられます。「科学技術は役に立たず、環境を壊している」という否定的な認識の背景には教育現場とマスコミの同様の認識があるのではないでしょうか。

 中でもマスコミの影響を重視すべきだと思うのは、マスコミの認識が教師に伝染し、それが高校生に及ぶという迂回ルートの存在が考えられるからです。つまり高校生は直接と、教師を中継者とする二つのルートからマスコミの影響を受けます。当然のことながら、教科書や指導要項が科学技術に否定的であるようなことはないと思います。

 彼らは科学技術と公害を結びつけるなどして、科学技術の負の側面ばかりを強調してきたのではないでしょうか。例えば、我々が薬から受ける恩恵は計り知れないものがありますが、薬害を完全になくすことはできません。恩恵を伝えず、薬害ばかり強調すると誤った認識を与えてしまいます。医療や原発に関しても同様のことが言えるでしょう。

 むろんこの一例だけをもって断定することはできませんが、このような認識をもつ高校生が多数を占めているならば、若者の理系離れは当然の帰結と考えられます。それは憂慮されているように、国の将来に大きく影響していく問題です。

 また、科学技術に対する高校生の認識の偏りに何の問題も感じないとすれば、この記者の見識には強い疑問を感じます。問題にすべきは科学技術の使い方であり、科学技術そのものではない筈です。

 高校生の認識に影響を与えているのはおそらくマスコミ自身の認識だと思います。マスコミは文系出身者で占められ、科学に対する理解が十分とはとても思えません。批判力のない高校生の認識はマスコミの認識を素直に反映したものと考えられるのではないでしょうか。

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