「みんなの党」の経済政策を評価する - 池田信夫

2009年08月11日 20:55

先週出た自民党のマニフェストは、ひどいものでした。民主党のマニフェストが、それなりに長期間かけて党内の議論を経てつくられたのに対して、こっちは告示が迫っても中身がなく、各省庁に政策を出させ、それをホッチキスで止めたようなものです。政策だけで評価するなら、一番まともなのは渡辺喜美氏の結成したみんなの党でしょう。


特に経済政策では、成長戦略を最初に置き、日本経済を立ち直らせるために「ヒト、モノといった生産要素を成長分野にシフトする」という、経済学では当たり前の(しかし自民・民主に抜けている)原則が書かれていることは評価できます。「アジアの内需」に注目してサービス業をグローバル化しようという発想もおもしろい。税制でも、租税特別措置を見直して法人税を減税し、給付つき税額控除(負の所得税)を提案するなど、経済学的に一番オーソドックスです。

しかし年金は「一元化する」と書いてあるだけで、具体的な道筋がはっきりしない。「増税しない」という方針を掲げているため、基礎年金については「徴収制度を抜本改革」というだけで、これでは年金制度の崩壊は防げないでしょう。財源を「埋蔵金」に求めているのもおかしい。これは税金の使い残しにすぎないので、そのぶん国債の償還が減るだけで、ネットの財源ではありません。また一度きりなので、恒久的な政策の財源にはならない。

いただけないのは、雇用対策です。「日雇い派遣、スポット派遣等は原則廃止。製造業への労働者派遣については、労働者のニーズや産業実態等を精査し、その見直しについて一年以内に結論を出し法制化」というのは、民主党と同じ規制強化路線で、成長戦略とも矛盾します。正社員の過剰保護を改めるとともに転職を支援し、「ヒトを成長分野にシフトする」ことが重要なのです。これは厚労省の家父長主義にも民主党の労組依存にも汚染されていない、みんなの党が独自性を発揮できる目玉だったのに残念です。

今のところ泡沫扱いされているみんなの党ですが、総選挙で民主党が圧倒的多数を取れなかった場合には、キャスティング・ボートを握る可能性もあり、おもしろい存在です。将来の「第三極」のコアになる可能性もあります。それだけに、日本経済のボトルネックである労働市場の問題で、旧来型の発想しかできないのは残念です。今後、経済学者の意見を取り入れて合理的な政策に進化させ、マニフェストの評価で自民・民主をしのぐようになれば、おもしろくなるかもしれない。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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