ダーウィンと神とイモムシ - 岡田克敏

2009年08月30日 10:24

「恵み深く全能の神が、イモムシの生きた体の中で養育するという明確な意図をもってわざわざヒメバチ類を造られたのだと、私はどうしても自分自身を納得させることができません」

 これはチャールズ・ダーウィンが友人に宛てた手紙の一節です(*1)。ヒメバチ類は他の生物の体に卵を産みつけます。孵った幼虫は宿主の体を食べて成長し、やがてその体を食い破って外に出ます。イモムシの体から数多くの幼虫が飛び出す光景はまことにおぞましいもので、映画「エイリアン」の、人間の体からエイリアンが飛び出す衝撃的なシーンそっくりです。


 以前、私の子供が野菜についていたアオムシを育てていたとき、突然幼虫が飛び出すのを見て食欲をなくしました。これはアオムシコマユバチで、モンシロチョウの幼虫に寄生します。(幼虫図鑑 動画・・・繊細な方には動画をお薦めしません)

 ダーウィンでなくとも、これが慈悲深い神が造ったものとは信じられません。体を食べさせてもらって成長し、最後に殺してしまう、まあこれ以上の恩知らずはないでしょう。

 ダーウィンの生きた時代、キリスト教は社会に強い影響力を持っていて、多くの人は幼少期から神の存在を信じ込まされていたと推測できます。ダーウィンがそこから逃れるのはきっと簡単でなかったのでしょう。

 現代なら宗教の影響力は小さく、ヒメバチを知らなくても、世の中の悲惨な出来事、戦争やテロ、病気や凶悪犯罪を知るだけで慈悲深い全能の神の存在を疑うに十分です。罪のない子供までが犠牲になる現実と慈悲深い神とはどう考えても整合しません。

 ヒメバチのように寄生虫は宿主に寄生し、自己複製をして広がっていきます。宗教も人間に取り付き、自己複製して他人に取り付き、世代や地域を超えて広がっていきます。そして一神教の歴史は戦争と殺戮の歴史でもあります。

 リチャード・ドーキンスは比喩の上手な人物ですが、彼は宗教を寄生虫、あるいはコンピューターウィルスに例えました。たいへん刺激的な比喩ですが、なかなか核心を衝いたものだと思います。もっともこの比喩はちょっとばかり顰蹙(ひんしゅく)を買いそうですが。

 巧妙に設計されたものは自己複製を通じて自動的に拡散していくわけで、設計者は継続的な努力が不要という優れたものです。2千年ほども昔に作られたプログラムが未だに命脈を保っているのは設計がよほど優れていたからでしょう。

 一旦寄生されるとその駆除はなかなか厄介です。功罪両面があるものの、所詮、宗教は人を騙すことなしには成立しないものであり、宗教組織は寄生拡大を推進するシステムです。それに対する非課税などの優遇措置は国がその活動をわざわざ支援するものであり、時代錯誤と言うべきでしょう。

(*1) R・ドーキンス「悪魔に仕える牧師」より

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