中国の「国家資本主義」は脅威か - 池田信夫

2009年10月23日 23:53

きょうのアゴラ起業塾の藤末氏の話で印象的だったのは、「これからの政治は右翼とか左翼とかいう軸ではなく、中国をどう扱うかで決まる」という話です。ケネス・ロゴフもこう述べています:

日本経済がなぜ今のような停滞に陥ったのか、もう一度きちんと考えるところから始めるべきだろう。私は、大きな原因のひとつは、中国の成長をうまく生かせなかった点にあると思う。それどころか、中国の台頭で、世界経済における日本のグラビティ(引力)が下がってしまった。要するに、新たに中国を中心に加えて回りだした世界経済において、日本は敗者となってしまっているのである。中国の経済成長からもっとポジティブなベネフィットが得られるように、とにかく知恵を働かせなければならない。


「世界の工場」にもっとも近い経済大国という有利な立地条件にありながら、それを工場として生かせず、「中国デフレの脅威」といった被害者意識ばかり強い。資産拠点の海外移転による「空洞化」を嘆き、国際分業をたくみに生かした企業に対しては「ユニクロが日本を滅ぼす」などと非難を浴びせる。中国を利用してもうけたのは、アップルやIBMでした。

藤末氏は「自由な市場がベストだという思想は、中国には当てはまらない。韓国も法人税を実質的に半分以下に下げている」と、日本がそれに対抗しないとアジア市場で圧倒されてしまう、という立場でした。こういう国家資本主義をどう見るかというのはむずかしい問題で、かつては途上国では独裁政権のほうが経済発展に効率的だという「開発独裁」という概念もありました。しかし今では、独裁的だったから発展したのか、それとも経済力があったので独裁的だったにもかかわらず発展したのかはわからないとされています。

中国についても、成長を支えているのは「国家」ではなく「資本主義」だという見方も多い。関志雄『チャイナ・アズ・ナンバーワン』によれば、国有企業の経営はボロボロで、成長を牽引しているのは「郷鎮企業」などとよばれる新しい企業です。日本も、かつては通産省がリードする「日本株式会社」だといわれましたが、最近では通産省の産業政策が成長産業にプラスになったケースはほとんどないというのが通説です。

しかし中国が最大の脅威でもあり、パートナーでもあるという事実には変わりありません。そのプレゼンスは、今後大きくなっても小さくなることはないでしょう。それに対して「友愛」の精神で「東アジア共同体」などを呼びかけたところで、乗ってくるとも思えない。中国は自分がアジアの中心になると思っているのだから、今さら衰退する日本と一緒にやる理由はない。

かといって保護主義は最悪の選択です。おそらく日中FTA(自由貿易協定)などによって徐々に経済統合を進めていくことが現実的な選択だと思われます。ところが鳩山政権には、そういうグローバル戦略がまったく欠け、中小企業の返済猶予や雇用規制の強化など内向きの「守り」の政策に終始しています。中国を初めとする新興国をどう位置づけ、日本の産業が国際分業の中でどういう役割を果たすのかというポジショニングが、成長戦略のコアだと思います。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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