スパコン予算復活の次に来るもの -西 和彦

2009年11月24日 00:13

菅副総理が何を言っても、まだ気を緩めてはいけない
テレビや新聞でスパコン予算は復活と言っているが、私は安心していない。そんな簡単に仕分け人たちがあきらめるはずは無いではないか。もし、「はい、わかりました」で引っ込んでしまうなら、仕分け人は軽すぎる。いい加減すぎる。ちょっと偉い人に言われただけで、「もっとちゃんと説明してくれたら・・」なんて酷すぎる。結局、あれは次の参議院選挙のための政治SHOWだったのか?


次に待ち構えているのは、閣議決定のための、各省の大臣の合意である。これは、事務方が準備するにしても、その次には、予算委員会。与野党の議員による応援の質問も必要である。誰がそれをするのかが、興味津々である。また、その質問に誰が政府与党として答弁するのであろうか。仕分け人を全員、参考人として、予算委員会に呼んだらいいのに。彼等には絶対答えられないであろう。あの、えらそうな発言を、国会でやっているのを、もう一度テレビで見たい。

これらのことを全てクリアして、国会の両院で予算案が可決されるまで、巻き返しの働きかけを続け、気を緩めてはいけないと思う。政治はサイバースペースではなく、永田町と霞ヶ関で行なわれているのだ。パブリックコメントだけでは足りないのである。

スパコンのプロセスの検討して、問題を発見した
このたびの10PETAスパコン計画をリセットする必要はないが、復活の予算額は、そのままでよいということでもあるまい。何らかの自助努力も必要である。それに、スパコンの競争はこれからもずっと続く。次の100PETA FLOPSに向けて体制を作ってゆくときに、関係者に聞いてもらいたいことはなにかということを考えてみた。

文部科学省
NECと日立が撤退したときに、富士通一社にしたことに問題があったと思う。あの時に、富士通にそれまでの開発の精算金を払って発注を白紙に戻して、あらためて国際調達をおこなうべきであった。これは、富士通の研究開発がいい、悪いという問題ではなく、国の調達とは、そういうものであるからである。その結果、国のお金を効率的に使うことができる。そのプロセスの経て、富士通に決まれば、誰も、何も言わないのではないか。

理化学研究所
独立行政法人の理研が日本のスパコン全部を仕切っているようなイメージになってしまっているが、スパコンの研究と開発は誰がやっても自由である。ただ、日本としてのスパコンに関する政策は、「再編」というより、開発の主体である理研の組織の権限と責任をさらにはっきりさせる「細編」が必要ではないかと考えざるを得ない。それは、「最高の計算環境を構築し、国の研究者に提供するという責任」と、「最速のスパコンを開発し、必要とする組織に提供するという責任」は分離した方がいいということである。今はこの両方が理研の責任になっているから、今回、しどろもどろの回答しかできない混乱とも言うべき事態になったとも言える。しかし、最高のスパコンができたときには、結果として今回のような体制になる。もしできなかったときには、誰の責任になるのであろうか。

最高の計算環境は、文部科学省だけでなく、厚生労働省、経済産業省、防衛省、金融庁、消防庁、気象庁など、その機能が必須と考えられる科学技術に関係する官庁の共管でもいいのではないだろうか。予算もその利用状況によって、分担するほうがいいのではないだろうか。アメリカではNSF DOD DOE NIHなどがスポンサーである。

最高の計算機を作る研究の中で、理研のスパコン研究は世界のトップクラスであったことは皆が認めていることである。しかし、これからの国策スパコンの開発は、文部科学省の下の理研だけでなく、国立天文台、大学の研究室や、経産省の産総研、防衛省、ことによっては、日本のベンチャー企業も開発に参加できるようにするべきではないだろうか。そしてその開発に国の助成の予算が付くべきであろう。

富士通
復活したからと言って、このたびの計画にかかるお金は、一円も値引きしないというのは許されないのではないか。同じスペックでも、ある程度の値引きはしなくてはならないのではないか。デフレでもあるし。また、富士通には公のお金をもらっているということで、その成果としてのCPU、SPARC64シリーズのCHIPや基板を外部に安く販売するということをするようにという指導を、国にお願いしたい。

スパコンの未来
IBMは引き続きビッグプレーヤーでありつづけるであろう。IBMにはPOWER CPU、CELL CPUがある。
富士通はSPARC64を積極的に外販してほしい。小さなWSやクラスターを安く売ってほしい。また、そういうパソコンを学内でつないだりする、広域スパコンができるかもしれない。
スパコンのCPUとして、パソコンのCPUを無視できないところがある。だから、次の課題はIBMがどうx86アーキテクチュアに取り組むかということで、もっとも考えられるのはAMDの買収もしくは出資であろう。IntelはアメリカではIBM,DELL、日本ではNEC、中国ではXXXというようにどことでも組むだろう。このパソコン系のx86CPUに外部のアクセラレーターが付くというのが、ある種の方法であろう。
今は、スパコンのハードごとにアプリケーションが書かれているが、プログラムのトランスポータビリティがもっと大切になるであろう。誰かの好きな時代遅れのFORTRANも、その意味でいいかもしれない。

「日本のスパコン政策」にお願いしたいこと
スパコンのCPUについて
富士通は1250億円を、もう少し安くしてもいいのではないかという話はかならずでるであろう。しかし、その安くなった分は、国に返納しないで、未来のための他の開発に使って欲しい。
例えば、日本で生産できるCPUを作る会社が、富士通のほか、もう一つは欲しい。
できればx86のファミリー。NECはインテルから買うといっているので、残る日立がいいのではないか。いまから作るなんて、愚かだということになれば、日立に特融してAMDを買えばいい。そうでないと、IBMなどにAMDは早晩買われるだろう。インテルコンパチのCPUを新しく作るならば、それこそ1000億円はかかるであろう。それに、特許の問題もある。インテルとAMDは、つい最近、特許で和解したところである。これだけでも大きな値打ちがある。
CELLはIBMが作っているように、SONYがCellベースの新しいスパコンCPUを作って欲しい。その仕様は、汎用CPUとの結合インターフェイスとインターコネクトを1チップに統合して欲しい。SONYのハード嫌いのイギリス人のトップはゲームの開発でいそがしいといいそうだから、開発予算をつけてあげるのがいいかもしれない。

スパコンの建屋について
伊勢神宮のように、今のスパコンのサイトの横に次のスパコン予定地があっても良かったのにと思っている。神戸の土地の隣を買っておくことを進めたい。もしくは第二のスパコンサイトの確保も課題にしたほうがいい。
ヨーロッパとアメリカと提携して、アーカイブセンターが必要である。神戸でまた地震があったら、どうするのか。すべてのデーターは消えてしまう。すくなくとも神戸のスパコンは地震保険に入るべきであろう。その予算の計上もお願いしたい。
大学が預けることができる設備もあってもいいのではないか。大切なのは、それぞれの大学がキャンパスに神殿のようなスパコンセンターをまた作ることではなく、離れていても、安全にスパコンを運転することのできる設備ではないか。

ES:地球シミュレーターを捨てないでほしい
引越しして、アップグレードしたらいい。また、これまでに開発されたソフトのコンバージョンができるならば、ベクトル的なアルゴリズムをスカラーにどう移植するのかという研究もおもしろい。

平和利用の約束と秘密の確保
アメリカのスパコンは原子力研究のためというのが、大きな目的の一つである。日本のスパコンは核爆弾の研究には絶対に使わないという方針はこれからも守ってほしい。それと、計算結果の秘密の確保とは、相反する課題である。世界最速のコンピューターで、どういう研究が行なわれているのかということを知りたい人は多いと思う。インターネットで世界中からアクセスできるなら、ぜひ、最高の対策を講じて、ハッキングされないようにしてもらいたいものである。アメリカの暗号システムを使うということは、アメリカに見られるということであるのだ。

御参考:私の独断と偏見のスパコン現状認識
スパコンのCPU
IBM POWER7 16コア
SUN SPARC 16コア(40nm)
Intel IA64 16コア(32nm)
AMD OPTERON 16コア(32nm)
これらは来年2月のISSCCでいずれも発表されるので、要注意である。

IBM・SONY CELLはIBMがスパコン用に拡張している。SONYは?
GRAPE LINPAKが走らないので、あまり目立たないが、評価されているCPU。

スパコンのOS
LINUX  ほとんどコレ!
WINDOWS あまり興味ないみたい・・・

スパコンのシステムメーカー
IBM スパコンの総合デパート的な存在 パソコンを捨てた気持ちが分かる。
SUN 余裕が段々なくなってきて・・・
CRAY・SGI スカラーに切り替えは成功したけど・・・
DELL パソコンを沢山つないだらスパコンになると信じている会社 前金で受注したら作りますというのではないだろうか。
FUJITU アメリカAMDAHL、ヨーロッパICLと唯一世界を相手に頑張ってきた会社
HITACHI レンタルという利益体質で儲かったが、そのために苦しんでいる会社
NEC パソコンで儲かりすぎたけど、NGNでは儲からなくて、困っている会社

CHINA INC 大国の威信を掛けて取り組み中

以上

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑