もし「補正予算」を行うならば!  ―前田拓生(大学教員)

前田 拓生

「その政策では駄目」ばかりではなく「対案を」というコメントを多くいただきましたので、私の考えをお話します。

結論的には「エコカー減税」「エコポイント」の拡充、または、これらと同じように「消費すれば減税」という商品類の拡大が良いように思います。そもそも「エコカー減税」「エコポイント」は、自公政権下の政策として“唯一”と言っていいくらい「良い政策」なので、この考え方をもっと工夫して独自策を練れば良いと考えています。

まぁ。民主党としては自公政権の「すべてを否定したい」という気持ちなのでしょうが、現下の経済状態や経済効果を考えれば、やはりこれしかないでしょうね。できれば、「子育て支援特別手当て」の実施を先延ばし(または、やめて)、「エコカー減税」「エコポイント」のような政策を拡充してほしいものです。

ということで以下では、まず簡単に「子育て支援特別手当て」が政策的に「何故、効かないか」を解説します。

そもそも、リーマンショックの前から日本の経済は良くなかった上に「年金の問題」などがあったため、国民の多くが将来に対して大きな不安を持っています。このような状況においては「貯蓄を増やしたい」と考えるのが普通です。にもかかわらず、景気悪化のため給料等が減り、自分が思っている金額の貯蓄を行えないのが現状です。そうなると人は「さらに不安になる」ものです。

そこに「子育て支援特別手当て」などによって所得が増えても、増加分を消費に使うようなことはせず、できるだけ「貯蓄しておこう」とするものなのです。それも理性によって「できるだけ消費を控えて貯蓄しよう」と考えているのですから、経済状態がますます不確実性を高めている状況下では、いくら「所得が増えたから」といって、安易に「消費を増やそう」とする人など皆無といえます。

とはいえ、政府としては「子育てをする世帯は消費をするはず」と考えているのかもしれません。

しかし・・・

この世帯は「家を買いたい」「子供に教育保険をかけたい」など、いろいろと将来に向けてできるだけ「備えておきたい」と思っている上に、何よりも「子供の将来が心配」なので、最も貯蓄をしたいと考えている世帯ではないでしょうか。したがって、少しでも余裕がある世帯であれば、消費せずに貯蓄へ回したいと考えるはずです。その意味では民主党は拒んでいるようですが、「所得制限」が効くかもしれません。

以上のように、ほとんど政策効果のない「子育て支援特別手当て」におカネを使うくらいなら、「エコカー減税」「エコポイント」のような「消費をすれば得をする」という策を行ってほしいものです。

つまり、「エコカー減税」「エコポイント」のようなやり方は、当該商品を買わないとメリットがないことから、「今買わないで貯蓄する」のと「今消費をすれば儲かる」という事実を、各家計がそれぞれ理性的に比較することになります。とすると、「いずれ買う必要のある商品」であれば、今、買う(消費する)ことに「合理性がある」ので、消費が促進されるわけです。この政策に対しては「買った人だけが減税になるというのは不公平」という意見もありますが、買った人は「消費」ということによって「社会的に貢献している」わけですから、利己的に貯蓄をする人たちとは違うのです。そういう意味で「エコカー減税」「エコポイント」は公平であると思いますし、何よりも「消費促進」ということでは非常に優れた政策であるといえます。

モノは「耐久財」なら何でも良いわけですから、この際、車の乗り換えなら「どんな車でもOK」などにすれば、さらに消費動向も上向くことになると思われます。

コメント

  1. harunaakiha より:

    >、「いずれ買う必要のある商品」であれば、今、買う(消費する)ことに「合理性がある」ので、消費が促進されるわけです。

    このような話を聞くといつも思うのですが、将来の需要を現在へひっぱりだしてきたら、将来の需要が減るだけで、結局のところ何の解決にもなっていないのではないかと、直観的に思うわけですが、この点はどうなんでしょうか。

  2. 前田拓生 より:

    harunaakihaさん、コメントありがとうございます。

    >、将来の需要を現在へひっぱりだしてきたら、将来の需要が減るだけで、結局のところ何の解決にもなっていないのではないかと

    将来の需要の先食いはおっしゃる通りです。

    しかし・・・

    金融システムは、本来、将来のために貯蓄されたおカネを、「貸出」「金融的投資」などの方法によって、赤字主体におカネを手渡し、その主体に支出させることによって経済的付加価値を作り出しています。

    つまり、金融システムが健全であれば、常に将来の需要を現時点に先食いさせることになるのです。ところが現在、銀行は「貸出」を増やさず、金融市場だけで回るおカネに投資をしているので、貯蓄が現在の支出になっていないのです。

    それが現在の不況の要因なので、人為的に「将来の需要の先食い」を作り出す必要があるのです。

  3. 前田拓生 より:

    追伸です・・・

    閉鎖経済で、政府を無視すれば・・・

    国内所得Y=C+S
    国内需要Y=C+I

    以上より、事後的にはS=Iとなります。

    つまり、S→Iのおカネの流れがないとYは縮小均衡していきます。そして「S→I」が金融システムです。

    現在この部分が壊れているので、「S→C」になるような政策が必要ということになるわけです。