最近何かと目に付く財務省 - 余野部 剛

アゴラ編集部

まず最初に指摘して置きたいのは、官僚制とは、為政者の個人的な能力や好みに左右されないという点で、極めて安定性に優れた制度だということである。仮に現在の官僚独裁が崩壊したとして、まず最初に襲ってくるのは、ポピュリズムの嵐だろう。その時には、かつてのナチスドイツのように、一群の喜劇的人物が政権に就き、好き勝手な政治を行うという歴史的悲劇が再現されるかもしれない。小泉元首相から始まって、そういう匂いのする政治家たちが、まるでいつか官僚支配と交代する時の下準備ででもあるかのように舞台に登場し出したのは、気がかりな現象ではある。


とはいえ、今官僚により行われている政治運営自体、すでに十分恣意的なものだと言ってよいだろう。これまで影の権力であり、最近ようやくその巨体をわれわれの前に現わし始めた「財務省」、彼らの振る舞いは、「独占」を越えて、殆ど国家の「所有」の段階に入っているとしか言いようのないほどに恣意的である。

主権在民を原則とするこの国が、その最上部にこうした組織を戴いていることに気付き、そのような存在の重荷にもかかわらず、日本がこれまで無事やって来れた幸運に、改めて我々が驚きの念を覚える時、彼らの方では、誇りに胸を張りながら、自分たちのおかげで日本が無事にやってこれたと結論を下すのだ。或いは、このような組織は、村の中のごく身の回りにしか関心を向けない、世間知らずの田舎者の集まり、といったイメージでわれわれの眼に映りがちなのに対して、彼らの方では、自分たちこそ経験と知識に富んだ国家運営のプロフェッショナルであると自負しているのだろう。いずれが真実かは別にして、これほど現状認識に差があれば、国として何らかのコンセンサスを形成することなどできるはずもない。そして一致が得られなければ、大衆の最大の欲望である、マスの力を発揮することに支障を来たす(プルードンの言を参照)ため、人々はとりあえず現行の秩序に妥協しようとするだろう。

しかし例えそうなったところで、自分たちのお金を、一旦お上に納めたうえで、それを再配分してもらうという従来のプロセスに価値を見出す者など、もはやどこにも存在しないに違いない。確かにコンセンサスの形成という点では、それは有効なやり方だろう。しかしお上を通過するたびに巨額の中間マージンを搾取されるのであれば、ローマ皇帝のもとを通るたびにコインの縁が削り取られたという故事と、何ら変わりないではないか。また、そもそも自分たちのもとにお金を集めるのが、唯一の彼らの行動の動機だとしたら、われわれが心配する1000兆円に上る財政赤字にしたところで、彼らにとっては、問題どころか勲章でしかないのだろう。

つまり、その存在の論理からしても、もはや財務省は国家に害をなすことしかできないのではないかと疑う。といって、それに代わり得る存在が、どこかにあるであろうか。民主党に何らかの期待が持てるとでもいうのか。すでに自民党にしろ民主党にしろゾンビ政党であり、新たな政党の編成が必要されているのだろう。そうした状況で民主党がいまさら政権を握ったところで、財務省の反動の手先となることぐらいしか、彼らに存在意義は残されていないはずだ。

当の財務省が受け入れるはずもないことを承知で、敢えて私が彼らに要求するとしたら、財務省は、国民のスケープゴートになって、巨額の国家債務を作った戦犯の役割を、甘んじて引き受けるべきである。かつての小渕首相のごどく、万死に値すると認識すべきだろう。今の彼らは逆に、国民に戦犯の役割を押し付けようとしているのである。そしてまず手始めに、郵政や、JT、NTT等、自己の傘下の企業を、内外問わず民間に100%売却し、国家債務の何割かの返済に充てるべきだ。今回は連合国はどこにもいないのだから、主権者たる国民がこの審判を下さなければならないのである。

コメント

  1. fk2002742 より:

    小泉氏のポピュリズムというのは、詭弁でしょう。

    小泉元総理は、諮問会議などの政府主催の委員会に全出席です。ワーキンググループなどでも東京や関西の若手の研究者を入れて新陳代謝をはかってます。他にも数多くの委員会では経済学者や官僚、周辺の専門分野の専門家などの人選を強化し、意見を吸い込み、官邸に上げさせてます。

    党側でも、政調会長の権限を高め小委員会を発足させ、学者のレクなどは増えてます。部会などでも、専門性が高まりました。

    それに・・・竹中さんが内閣府をシンクタンク化しようとしたでしょう。「独立官庁型の不透明なシンクタンク」からの脱却を行おうとしたわけです。何から何まで政策決定の透明化を試みています。

    大臣も堅実な実務型を登用してます。情緒的なイナカ議員はほとんど消えました。

    財務省や内務系の官僚を重用してます。