社会起業家の誤った認識 - 松本孝行

2009年12月20日 08:55

週刊東洋経済の2009年12月19日特大号で社会起業家が30歳の生き方として紹介されている。その一方で、サイバーエージェントの藤田氏をはじめ、数人から社会起業家という生き方が批判されている。NPO法人フローレンスの代表である、駒崎弘樹氏がそのブログで紹介したことにより、一部で波紋を広げる格好になった。駒崎氏はこの一件を「旧起業家が新起業家をバッシングするのはある意味登竜門である」と言ったニュアンスの発言をしているが、事の発端はなんのことはない、社会起業家という存在が正しく認識されていないだけに過ぎない。


元々、社会起業家の発端はイギリスと言われている。「ゆりかごから墓場まで」という言葉が有名になるほど、福祉国家を目指していたイギリスは国家財政が逼迫し、福祉を削らざるを得なくなった。サッチャー政権時から特に顕著になった小さな政府志向により、多くの福祉業務をNPOや民間団体に払い下げられるようになると、NPOや民間団体も自らの食い扶持を自ら稼ぐ必要に迫られた。そこで生まれた概念が社会起業家だ。「NPOであっても自ら金を稼いで継続する必要がある」と考えられたのだ。

この歴史から見ても、社会起業家はボランティアでもなければ、企業のCSR活動でもなく、決して皆が低賃金なわけでもない。もちろん、社会問題を解決すると同時に事業を拡大・継続して行くという理念を持っているため、経営者としてのプレッシャーはベンチャー企業と同等以上である。しかし残念ながら、社会起業家という言葉だけが先走り、正しい認識がなされていないために、「社会起業家は低賃金である」「社会起業家は経営のプレッシャーが弱い」などの誤解が生まれる結果になった。

経済産業省の調査では日本で社会起業家という言葉を知っている人は全体の2割しかいないとも言われている。実際、具体的な社会起業家の名前を上げられる人がどの程度いるだろうか。ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスくらいは名前が出てきたとしても、日本人の社会起業家はあまり知られていない。途上国の商品をブランド化し、先進国で販売するアパレルブランド、マザーハウスの山口絵理子、病児保育という新しいカテゴリを発見し、母親の保育を応援する「フローレンス」の駒崎弘樹、食事をするだけで途上国支援ができるTABLE FOR TWOの小暮真久、移民の全国送金システムを構築したMFICの栃迫篤昌など、少なからず存在している。

日本では社会起業家フォーラムや社会起業支援サミットといった、全国で社会起業家を支援する団体があるが、現状の認識はこの程度であるのは支援団体・支援者は真摯に受け止めねばならない。2009年は社会起業家という言葉がたくさん飛び交ったのは事実かもしれないが、それが正しく認識されているとは到底言えない状況だ。まずは社会起業家の正しい認識を社会に広める必要があるのではなかろうか。私も支援者の一人として真摯に受け止めねばならない。

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