「21世紀は陸と海のたたかい」~400年ぶりの歴史的大転換の始まり~

2010年02月16日 12:14

藤井 まり子

あなたが道の迷いそうになるのは、あなたのせいでは決して無いのです。
なぜなら、世界経済は、なんと400年ぶりの「歴史的大転換」に遭遇しているのです。
こういった断絶の時代、あなたが道に迷い、自分を見失いそうになるのは、至極当然、当たり前のことなのです。


2月10日、私が主催者になって、三菱UFJ証券チーフエコノミスト:水野和夫先生をお招きして、「21世紀は、陸と海のたたかい」というセミナーを開催しました。

水野和夫先生は、2006年後半時点で既に、資源コモディティー価格に着眼して、アメリカ・不動産バブルの崩壊を予測し、2007年3月時点で既に、グローバルインバランスに着眼して、アメリカ発金融危機を予測された大変優秀なエコノミストの方です

以下、二回に分けて、2月10日の水野和夫セミナー「21世紀は陸と海のたたかい」の内容を、アゴラ言論プラットホームでご紹介します。

ー21世紀は陸と海のたたかいー(その1)

世界経済史は、有史以来、「陸と海のたたかい」の繰り返しである。

中世ヨーロッパでは、「陸の国」(主にスペイン王家とイタリア)が永らく世界の交易を支配していた。
彼らの支配のルールは、「中世カソリック教会の聖書」であった。聖書は、陸の上のルールしか定めていなかったので、よりいっそうの自由(略奪)を求める中世の人々は、海へ海へと出かけて行った。

中世スペイン王家ももちろん、海の覇権を確立していたが、中世のスペイン王家では、まだまだ「中世カソリック教会のルール支配」の影響が強かった。
イギリス人から見れば、スペインは、まだまだ「陸の上に上がった不自由な鯨(クジラ)」だったのである。

スペインの無敵艦隊がイギリス艦隊に完敗した1588年のアルマダの開戦では、スペイン艦隊の総司令官:アロンソ・ペレスは、陸軍出身者であり、海での戦いの経験が皆無の人物であった。
いや、スペイン海軍はほとんど陸軍出身者によって占められていた。総司令官:アロンソ・ペレスは海が嫌いで船酔いをする人であった。

このとき、「中世から近代へ」と、歴史は大きく動いたのである。

これに代わって、当時のイギリスは、「中世の陸の上でのルール」=「中世カソリック教会のルール」の影響から、自由であった。

イギリス王家は、ヘンリー8世の時代からエリザベス1世の時代にかけて、「中世カソリック教会」からの束縛から離れて、より一層の自由を求めて、イギリス国教会を設立してゆく。

海賊国家:イギリスのよってインドで東ンド株式会社が設立されたのは、1600年。
これにより、「海(海賊)の国」イギリスは、その後300年以上、7つの海を支配下に収め、インドなどの植民地から略奪を繰り返し繰り返し続けることが可能となった。

イギリス生まれの資本主義とは、先進国で売られる一杯500円のコーヒーのうち、わずか1円をコーヒー豆の産地(陸の国)へ渡すシステムであった。アメリカ生まれのスターバックスは、この500円のうち3年をコーヒー豆の産地に渡していると威張っているけど、それでも、コーヒー豆の産地(陸の国)からみれば、不条理な略奪(海賊)である。
チョコレートの原料であるカカオに至っては、もっとひどい略奪(海賊)が未だに横行している。

今日に至るまで、世界は「イギリスが主導する10億人の経済圏の成長」を謳歌していた。
しかも、この10億人の経済圏(イギリス・アメリカを筆頭とする経済圏)の中で、繁栄を謳歌できたのは、わずか15%。
10億人の先進国の経済圏の繁栄には、常時「定員15%」が存在していた。

近代史とは、「イギリスによるアメリカの開拓史」であったとも言える。このアメリカには、カナダやオーストラリア、後に日本も含まれる。
イギリスの経済学者:アダムスミスが「アメリカに独立させたほうが、イギリスは豊かになれる」と指摘したので、アメリカの独立は、イギリス経済の繁栄に貢献するので、アメリカは独立できたのである。
同じように、日本の戦後の独立は、イギリス・アメリカ経済の繁栄に貢献するので、日本は独立できたのである。

かように、イギリスは7つの海を支配しながら、イギリス国内の内需を開拓することなく、400年近くの繁栄を続けることになる。

近代とは、七つの海を支配したイギリスとアメリカが、オーストラリアと日本の助けを借りながら、ユーラシア大陸およびヨーロッパ半島・アフリカを、大陸間弾道ミサイルや原子力潜水艦搭載ミサイルで常時威嚇していた時代でもある。
近代史とは、「陸の国」たちが、7つの海を制覇した「海の国」たちから、「いつミサイルを撃ち込まれるかもしれない」と警戒していた時代でもある。

しかしながら、「海の国」(イギリス・アメリカ)の「絶対的に優位な時代」は、1970年代から、少しずつ崩れ始めている。

たとえば、1974年、ベトナム戦争が終結し、「海の国」アメリカが「陸の国」ベトナム(およびソ連)から撤退しなければならなったことは、象徴的である。アメリカの近代戦が、ベトコンの人海戦術に屈した日であった。

さらに、1970年代に、中東をはじめとする「陸の資源国」で、資源ナショナリズムが台頭する。

1995年以降は、グローバルな資源コモディティー価格の上昇が本格的に始まり、「海の国」10億人(アメリカ・イギリス)は、人口の多い「陸の国」「陸の資源国」57億人(EU,ロシア、中国)に対して、防戦一方になってしまっているのである。

21世紀は、「海の国」10億人に対する、「陸の国(EU、ロシア、中国)」57億人の「挑戦の時代」となるだろう。

21世紀の今後こそは、「海の国」は、「陸の資源国」から安い資源を略奪することはできなくなる。

「海の国」(アメリカ・イギリス)の勝ち目は今度こそないだろう。

台湾と沖縄がやがてはアメリカの手を離れたら、ミサイル(海賊)攻撃においても、「海の国」の時代は終わりを告げるだろう。
「陸の国」の時代になると、少なくとも「ミサイル(海賊)」は出てこなくなる。

ちなみに、「陸の国」であるドイツとフランスは、17世紀以来、幾度も「海の国」(イギリスやアメリカ)に「たたかい」を挑んでは負け続けて来た。
フランスのあのナポレオンさえも、ドイツのヒットラーさえも、「陸の国」が「海に国」に「たたかい」を挑んでは負け続けたのである。
あのナポレオンやヒットラーでさえも、なぜ負けたのか?
なぜなら、当時はまだ「海の国」の時代・資本主義・民主主義の時代だったからだ。

20世紀の初頭も、まだまだ「海の国」の時代であった。
よって、戦前の日本が第一次世界大戦前に日英同盟を結んだことは、選択としては、当時は極めて正しかったのだ。
第二次世界大戦の前に、日本が日英同盟を破棄して、ドイツやイタリアといった「陸の国」と同盟を結んだことは、時代の趨勢としては、大変な間違いだった。時期尚早だったのである。当時はまだ「海の国」の支配権がまだまだ強固だったのだ。第二次世界大戦は、「陸の国」が負けて、「海の国」の資本主義と民主主義の勝利で終わってしまった。

かように見てくると、16世紀にイギリスで誕生した「資本主義」は、普遍的な原則ではないかもしれない。「イギリス生まれの資本主義」に裏打ちされた「民主主義」も、普遍的な原則ではないかもしれない。

それを証拠に、資本主義は収奪対象が減少するにつれて、言い換えたら、海上のフロンティアが無くなって、これといった投資先が少なくなってゆくにつれて、「海の国」イギリス・アメリカは、より一層の自由を求めて、バーチャルな金融空間、バーチャルな三次元空間へと、収奪の対象を広げていってしまった。
これが、1990年代末からの、「アメリカおよびイギリスにおける金融規制の極端なまでの緩和」=「金融資本主義」の始まりである。
こともあろうに、アメリカは、自国民さえも収奪(=海賊=略奪)の対象としてしまった。それがサブプライムローンである。

「極端なまでの金融規制緩和」をはじめとする英米生まれの「新自由主義」は、確かに、1970年代から確実に斜陽の始まっていた「海の国」アメリカ・イギリスの経済の延命措置としては、極めて有効に機能した。が、「新自由主義」は、あくまでも、一時しのぎ的な「延命策」であった。

21世紀の世界経済は、「新自由主義」だけでけでは補いきれないような、大きな「歴史的大転換」が400年ぶりに起きているのである。
これは、400年に一度起きるかどうかの「歴史的大転換」である。この「歴史的大転換」とは、「陸の国」「陸の資源国」が「海に国」を再び支配する時代の始まりでもある。

人口57億人が参入する21世紀では、資本主義は普遍性を維持できなくなるだろう。
21世紀では、「陸の国」(厳密には資本主義国家とは呼べない国々)が経済的勝者になる。

21世紀では、日本は、「陸の国」(EU、ロシア、中国)と仲良くしたほうが、とくにEUと同盟を結んだほうが、今度こそは「経済的には勝てる」かもしれない。
(その2(来週)に続く・・・)

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