国債利回りが“今”低いから「大丈夫」って、本当?!   ―前田拓生

2010年02月27日 15:18

現在、日本国債の利回りは1.30%を若干下回る水準にあり、しかも近年(多少の上下はあっても)世界的にみて、非常に低い金利になっています。これだけ「財政規律が守られていない」「政府債務残高が高すぎる」と言われながら、また「さらに財政赤字が増加する」という状況になっているにも関わらず、日本国債利回りが上昇する気配は見えず、逆にジリジリ下がっているというのが現状です(利回り低下⇔国債価格の上昇)。

財政規律等の問題は後で話すとして・・・

日本国債利回りが、今、「ジリジリ下がっている」のは、日銀も金融緩和を続けているのでインターバンク市場においては資金的に余剰感があるものの、国内には前向きな資金ニーズがなく、また、為替変動等を考慮した場合、新興国を含めて他国へ流出させてまでリターンを求める気にもなれないということから、邦銀を中心に日本国債を買っているということが原因だと思われます。つまり、「危ない」と言われても日本国内であれば「日本国債」は、名目上、無リスク資産になるので、BIS規制にも問題はなく、ディーリングも行うことができることから運用資産としても有効ということなのでしょう。

では「このまま低い状態が続く」と考えて良いのでしょうか?

もし、「このまま低い状態が続く」ということなら「(国債利回りは)これだけ低いし、上がる気配がないのだから」ということを根拠にして「もっと国債を発行しても大丈夫」「財政出動をして景気を支えるべきだ」という話をする人々の意見も頷けます。

ここで「このまま低い状態が続くか否か」は、今後、「国債が破たんするか否か」に関係します。つまり、今時点で日本国債利回りが低いのは「他に投資対象が見当たらないから」なのでしょうが、今後も「買うか否か」となると、将来的な「財政規律の問題」が重要になってきます。

ということから考えると・・・

そもそも「国債」は「国の債務」という意味ではありますが、ここの「国」とは「政府」の意味なので、政府が責任を持って返済すべきものということになります。したがって、政府に返済できるだけの税収がなければ“破たん”することになります。ところが、政府債務が「邦貨建て」である限り、政府には「徴税権」があるので、政府債務の返済に対して税収に問題があれば「増税をする」ことによって対処できることになります。

そういう意味で日本国債に関して市場では「日本人は所得が高いので、まだ、増税余地がかなりある」とみているように感じます。このような「安心感」が「現状程度の政府債務残高であれば問題ない」という雰囲気になっていると思われます。つまり、将来における「増税」は、市場ではすでに織り込み済みであり、だから「大丈夫」として「日本国債を購入している(利回りが低下している)のだ」ということなのでしょう。

したがって市場では、“すでに”「増税」が見込まれているので「利回りが低い水準で落ち着いているだけ」ということになります。なので「だから、国債を発行しても大丈夫」「財政出動をして景気を支えるべきだ」というのは非常に危険な話であり、政策の議論という意味では疑問を感じます。

すでに「危険水準」なのですから、これ以上、増税(または、予算の規模削減の)議論がないまま財政を拡大させる話になれば、市場は「話が違う」ということでパニック症状に陥る可能性も否めません。一旦、市場がパニック症状に陥れば、人為的に云々できるものではありません。さらに国債利回りは当該国の基準となる金利ですから、これが上昇すれば、様々な金利がすべて上昇することになるため、国民生活に大きなマイナスの影響を与えることになってしまいます。

他方、「国債を発行しても大丈夫」「財政出動をして景気を支えるべきだ」という人々の中には、増税をしなくても、中央銀行を巻き込むことができれば、理論上、返済に懸念はなくなるので、この場合、「破たんなどということを考える必要はない」という人がいるようです。

つまり、中央銀行に通貨をドンドンと発行させ、それで当該国債を(間接に、または、直接に)引受させれば、政府と中央銀行だけの債権債務の関係になるので、中央銀行が無理やり返済を求めない限り、しかも、財政ファイナンスを続ける限り、国債は破たんしない。だから、日銀を巻き込んで「うまく」やれば、何の問題もなく、景気浮上を達成できると考えているようです。

まぁ、これは論外でしょうね。一例を挙げれば・・・

国債にはクーポンが付いているので、今のまま借り換えを続けても、徐々に政府債務残高は増加することになります。したがって、税収のうちの国債利払い費は徐々に増加する形になるわけですから、増税しないことを前提にすれば、いつかは「税収=国債利払い費」という金額になった段階で「借換債」さえ発行できなくなってしまいます。況して、これから「増発する」となれば、「税収=国債利払い費」となる時期が、なお一層早まることになり、破たんが近づくだけです。

つまり、日銀に国債を(直接であろうが、間接であろうが)引き受けさせたとしても、返済のための増税の実施時期を「遅らせる」だけであり、返済を免れるという話ではありません。しかも、現状の日本経済が、1970年代のような高い成長率を期待できるのであれば、政府収入(税収)の増収が見込まれますが、そのような可能性は非常に低い状況において「借金を増やす」という選択は無謀としか言いようがないと思います(日銀の資産になっている国債を「償却」してしまえば「政府は返済を免れることができる」という話も聞かれますが、これは「通貨価値の安定」というような話を持ち出すまでもなく、「議論の対象外」といえます)。

さらに「通貨価値の急激な低下」を招く可能性もあり、その点も懸念されます。

以上のように「国債利回りが低い」ということが「だから財政拡大は大丈夫」とはならないわけであり、政策的な問題として「財政規律」を踏まえた議論を進めるべきであると私は考えています。そういう意味で、このところ、菅財務大臣などが「増税の議論」に積極的になっているのは良いことだと思っています。

ただ問題は「増税をして子育て支援の財源に」という話になっていることが気になります。民主党は「おカネはあるのです」「埋蔵金を探したり、仕分けをすれば、大丈夫!」と言い続けてきたので、国民は「おカネがあるなら、やればよい」と思っているだけなのではないでしょうか。増税してまで「子育て支援」というのは話が違うと思います。

しかも財政規律問題は、今、世界的な関心事になっているのですから、「マニフェストをやりたい」という議論の前に、政府債務残高の問題に対して明確な政府方針を打ち出さないと「市場からの信認」は続かないと思います。

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