インフレの二つのタイプ - 池田信夫

2010年03月04日 01:50

磯崎さんからコメントをいただいたので、簡単に答えておきます。テクニカルな話なので、マクロ経済学に興味のない人は無視してください。


たぶん最大のポイントは


仮に「国債が大量に市場にバラまかれそうだ」ということなら、国債の市場での消化が困難になって金利があがるはずですが、日銀が国債引受けをするというのは国債が市場を通らないということです。市場の需給に影響がないとしたら、はたして国債は暴落する(金利が上昇する)んでしょうか?

という点だと思います。これは他人の権威を借りるわけではないが、白川総裁が懸念している点です。たとえば毎日新聞はこう書いています:

白川方明総裁は2月18日の記者会見で「金融政策は財政ファイナンス(財政赤字の穴埋め)を目的とせず、そうした中央銀行の姿勢を政府が尊重する(ことが必要)」と、買い入れ拡大圧力をけん制した。「財政悪化のツケを日銀が引き受けた」との見方が市場で広がれば、長期金利は急騰しかねないからだ。

太字の部分は記者の解説ですが、「日銀幹部」がそう説明したようです。この金利上昇は国債の需給によるものではなく、「日銀が引き受けないと国債が消化できないのか」と市場が受け止めて、国債のリスク・プレミアムが上がるわけです。

リフレ派の人達と今回の池田さんの記事が共通していまいちよくわからないのは、「期待」だけで本当に物価が動くんだろうか?という点。[・・・]「インフレ目標掲げただけでインフレが起る」なんてことを思いつく人は、実際に企業でマーケティングやったり価格を決める現場にいたことが無い人なんじゃないか、と思います。

この後半はおっしゃる通りで、白川総裁のもとではどんな目標を掲げてもインフレは起こらないでしょう。しかし極端な話、亀井氏が日銀総裁になって「国債を500兆円引き受けてインフレを起こす」と宣言したら、邦銀は急いで売り逃げ、長期金利が暴騰してインフレになるでしょう。

理論的にいうと、新ケインズ派フィリップス曲線では、インフレ率がインフレ予想とGDPギャップによって決まるので、人々がみんなインフレを予想すると国債を売って実物資産に換え、これによってインフレが激しくなってインフレ予想が強まり・・・というループに入って、ハイパーインフレが起こります。この予想は根拠のないsunspotであっても、多くの人が信じたら「自己実現的な予言」になります。石油危機のときの「トイレットペーパー事件」って覚えてます?

つまりマイルドなインフレを起こすのはむずかしいが、ハイパーインフレを起こすのは簡単で、現に途上国ではありふれた事件です。私の記事は思考実験ですが、日銀の信認が失われると危険であることは間違いないでしょう。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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