医薬分業は、廃止すべきだ  井上晃宏(医師、薬剤師)

2010年03月24日 20:31

 30年以上前から、日本薬剤師会は医薬分業を金科玉条のごとく唱えてきた。彼らは厚生労働省と一体になり、医薬分業を推進してきた。
 素人向けに説明すると、「医薬分業」とは、処方権を医師に、調剤権を薬剤師に、それぞれ独占させる制度である。日本では、病院で渡せる薬を、わざわざ、外部の薬局で調剤させる、「院外調剤」を意味する。ここでは、医薬分業=院外調剤という意味で使う。
 王が毒殺を避けるためとかいう真偽の疑わしい歴史話や、他の先進国ではどうだとかいう確かめようがない話は、どうでもいい。ここで問題にしたいのは、日本において、医薬分業が合理的かどうかということである。
 結論から言えば、非合理的である。


 院外調剤をすると、医薬品の使用が安全かつ効果的になるという、日本薬剤師会の主張は信じがたい。
 薬剤師が当直していない病院や診療所では、薬剤師法第19条に従って、無資格者が調剤を行っているが、これといって、事故は発生していない。誤調剤を避けるのは、現場における習熟であり、高度な薬学知識などではない。
 院外薬局で調剤をすると、コストは確実に高くなり、患者の利便性は低下する。病院・診療所で会計を済ませた後で、外部の薬局まで患者は移動しなければならない。診療所や病院内で薬を渡す方が、はるかに手間がかからない。また、調剤手数料は、分業した方が高くなる。
 院外薬局で調剤をすると、薬剤師が薬について懇切丁寧な説明をしてくれるという話があるが、その「情報」とは、製薬会社の作る資料をプリントアウトして渡すだけで済む程度の情報である。それは薬剤師でなくてもできる。
 かかりつけ薬局を決めておくと、2箇所以上の病院・診療所からもった薬の相互作用をチェックできるというが、その程度の判断なら、コンピュータで十分に可能である。薬局や薬剤師が関与する必要はない。処方箋だけでチェックできる医療ミスは、電子カルテやオーダリングシステムで自動チェックできるし、実際に、そうなりつつある。
 院外薬局において、処方箋だけではわからないミスを薬剤師が発見することは不可能である。なぜなら、薬剤師には処方箋しか情報が与えられていないからである。
 「薬剤師による処方のチェック」という観点から考えるなら、院外調剤などしない方が有利である。病院内なら、電子カルテを通じて、薬剤師が医師の相談に乗ることができるし、実際に、そういう仕事は行われている。
 院外調剤にすると、公定薬価と仕入れ値の差、即ち薬価差益が病院から薬局に移るので、医師が不要な処方をする誘引をなくせるという話もかつてあったが、度重なる薬価引き下げによって、薬価差益はほとんどなくなっている。病院が薬を売っても、それ自体で儲かるということはない。
 医薬分業=院外調剤は、街の薬局にとっては飯のタネであるが、患者にとっては、余計に金をとられて、手間を食うシステムでしかない。廃止すべきである。

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