30年以上前から、日本薬剤師会は医薬分業を金科玉条のごとく唱えてきた。彼らは厚生労働省と一体になり、医薬分業を推進してきた。
素人向けに説明すると、「医薬分業」とは、処方権を医師に、調剤権を薬剤師に、それぞれ独占させる制度である。日本では、病院で渡せる薬を、わざわざ、外部の薬局で調剤させる、「院外調剤」を意味する。ここでは、医薬分業=院外調剤という意味で使う。
王が毒殺を避けるためとかいう真偽の疑わしい歴史話や、他の先進国ではどうだとかいう確かめようがない話は、どうでもいい。ここで問題にしたいのは、日本において、医薬分業が合理的かどうかということである。
結論から言えば、非合理的である。
院外調剤をすると、医薬品の使用が安全かつ効果的になるという、日本薬剤師会の主張は信じがたい。
薬剤師が当直していない病院や診療所では、薬剤師法第19条に従って、無資格者が調剤を行っているが、これといって、事故は発生していない。誤調剤を避けるのは、現場における習熟であり、高度な薬学知識などではない。
院外薬局で調剤をすると、コストは確実に高くなり、患者の利便性は低下する。病院・診療所で会計を済ませた後で、外部の薬局まで患者は移動しなければならない。診療所や病院内で薬を渡す方が、はるかに手間がかからない。また、調剤手数料は、分業した方が高くなる。
院外薬局で調剤をすると、薬剤師が薬について懇切丁寧な説明をしてくれるという話があるが、その「情報」とは、製薬会社の作る資料をプリントアウトして渡すだけで済む程度の情報である。それは薬剤師でなくてもできる。
かかりつけ薬局を決めておくと、2箇所以上の病院・診療所からもった薬の相互作用をチェックできるというが、その程度の判断なら、コンピュータで十分に可能である。薬局や薬剤師が関与する必要はない。処方箋だけでチェックできる医療ミスは、電子カルテやオーダリングシステムで自動チェックできるし、実際に、そうなりつつある。
院外薬局において、処方箋だけではわからないミスを薬剤師が発見することは不可能である。なぜなら、薬剤師には処方箋しか情報が与えられていないからである。
「薬剤師による処方のチェック」という観点から考えるなら、院外調剤などしない方が有利である。病院内なら、電子カルテを通じて、薬剤師が医師の相談に乗ることができるし、実際に、そういう仕事は行われている。
院外調剤にすると、公定薬価と仕入れ値の差、即ち薬価差益が病院から薬局に移るので、医師が不要な処方をする誘引をなくせるという話もかつてあったが、度重なる薬価引き下げによって、薬価差益はほとんどなくなっている。病院が薬を売っても、それ自体で儲かるということはない。
医薬分業=院外調剤は、街の薬局にとっては飯のタネであるが、患者にとっては、余計に金をとられて、手間を食うシステムでしかない。廃止すべきである。
コメント
医薬分業の最大の利点は、日本の医者がプラセボ効果しかないような薬を利益をめあてにやたらに処方する動機がなくなることです。
医薬分業の問題点はいくつかありますが、医薬分業そのものがよくないのではなく、薬剤師のレベルが低いとか、厚労相のやり方がよくないとか、日本薬剤師会のやり方がよくないということだと思います。
全国の医療機関にちゃんと仕事のできる薬剤師が常駐していれば、わざわざ院外薬局まで行かなくてもいいと思います。しかし、それも現実的に不可能です。
二度手間、負担金アップは事実ですが、ちゃんと仕事のしてくれる薬剤師のいる院内処方の病院に行けば、そうならないわけですからそのような病院を探して行けばいいかもしれませんね。
薬学6年制、質の向上、チ-ム医療における薬剤師の役割拡大等々、薬剤師として日々研鑽されている方が多くいるのにかかわらず元薬剤師の方から本発言があることにつき誠に残念でなりません。医薬分業を廃止して医師のみで医療安全が図れるとお考えなのでしょうか。コメディカルの存在抜きでよりよい医療ができるのでしょうか。元薬剤師をやっていたのにかかわらず自己否定をすること、効率化ばかり着目していること、に疑問に感じます。前職を通じ医師になられたわけですから、よりよい医療は何かを医師の立場から具体的に論じてほしいです。60%分業率を元に戻すことは法律上可能です。それを実行するとどうなるかおわかりでしょう。今後輩出される若き6年制の将来のことは全くお考えになっていないようです。
>2箇所以上の病院・診療所からもった薬の相互作用をチェックできるというが、
調剤薬局の「お客様」は薬を買う人ではなく、病院の「お医者様」です。仕事をくれるお客様の「ミス」を、薬局の薬剤師は「批判」できないだろうという意見が多いようです。
建前論はさて置き、医薬分業で、何がどう改善されたのか、事実のリビューを行ってほしい。
たとえば、医薬分業になって、医師の処方が情報公開されるようになりました。したがって、下手な処方はできなくなります。今でも、下手な処方は受け付けていますが、医師のことを考えて、患者さんには、うまくごまかしています。本当のこと言ったら、医師と患者さんの信頼関係はなくなってしまいます。医薬分業になったので、このような下手な処方は減ってくるはずです。いつまでも薬剤師がフォローできません。医薬分業がされていなかったら、いつまでたっても下手な処方が続いていたでしょう。
また、医薬分業が始まる前は、医師が、安い薬を患者に渡して、支払い基金へ保険請求するときは、高い薬で請求するという悪どいことが簡単にできました。しかし、医薬分業だと医師はずるして儲けられません。
廃止する~といった後ろ向きな改革では状況はよくなるとは思いません。思い切って、医師→内科医+外科医の二つに分割して、内科医の方に薬剤師を組み込むようにすれば、医師不足、医療費の拡大も解決されるのでは?
医薬分業に関して、いろいろな反論が付いていますが、この手の話でいつも気になるのですが。
「なんでそんなに薬局で薬剤師が出すことで、薬の間違いが見つかるとか、医者の不正が見つかる、と言うのに、一度でも『医者の間違えた処方を、そのまま薬剤師が患者へ提供した場合、薬剤師も同等の責任を受ける』と自ら責任を負う話をする方がいないのですか?」
医者の言いなりではないようですし、医者の間違った処方を見つけるというなら、それを責任を持ってやっていただくのが筋であって、それならば手間やお金が増えてもいたしかたありません。
権利ばかり主張して、誰も責任を果たすつもりがないというのが、この手の話ではすぐ見え、「既得権の保持」としか思えません。薬剤師がそんなにもすごくのであれば、処方に関して一定の責任を確実に負う事を約束し法制化すべきだと思います。たとえ医者の処方が間違っていても、それを手渡す薬剤師がその間違いを「見つけられる事」がメリットとして言うのであれば、当たり前だと思うのですが。
薬剤師の存在意義が医者の過誤や不正を見つける“お目付役”であるとしたら,さらにその薬剤師の過誤や不正を見つける別の職業が必要です。それで薬剤師の“お目付役”を作ると,さらにその“お目付役”が…。結局,このアホくさい数列を断ち切るには,n=1の医者に慎重さと倫理感を高めてもらってそれを信頼するしかありません。したがって“お目付役”としてならn=2の薬剤師は必要ない。薬剤師の必要性を主張する人は薬剤師単独の存在意義を語るべきでしょう。19850726131431-20100329184516-8378