現政権の“目玉”政策は、将来的には「悪夢のシナリオ」なのかも!  ―前田拓生

2010年04月11日 09:49

今週号の週間SPA!(4/6発売、4/13号)に「悪夢のシナリオ」という特集が載りました。この中の一つに私のシナリオ(「富裕層が海外に逃亡し、低所得者だらけの国になる!?」-シナリオ(7))も載っているのですが、ここに書いた「所得税関係」だけでなく、現政権では不安になるような政策を次々に打ち出してきています。口当たりは良いのですが、結局、国民に負担をかけるような政策が多いので心配です。


■「子ども手当」の逆進性

何だかんだと話題になった「子ども手当」でしたが、結局、ほんの少し修正があっただけで基本的には政府案通り可決成立しました。そもそも私は「子ども手当には反対」ということでアゴラにも数回投降しましたが、そのような声は完全に打ち消され、所得制限もないまま、今年は半額とはいえ「現金」で配ることになりました。

この「子ども手当」、条件さえ合致すれば一律に配られることから、所得分配の公平性があり、また、金額が一定なので“率”に換算すれば低所得者層に有利と考えられています。

ところが・・・

この「条件に合致した定額の給付」というのは、市場メカニズムを考慮すれば「逆進性」があり、低所得者層に対しては、むしろ、不利に働く可能性があります。

理由としては以下の通りです。

子ども手当というくらいですから、その給付を受けることのできる世帯は「子供を育てている世帯」に限られます。このような「特定層」においては、それ特有の消費行動が存在するはずです。例えば、「教育に関する財」などに対する支出が、他の世帯に比べて高くなることが考えられます。ところが「教育に関する財」といっても「一般家庭」の場合には「学習塾の授業料」などになるでしょうが、「所得の高い層」の場合には「家庭教師」などになることが想定されます。ここで「教育に関する財」はこのような「子育て世帯」にとっては「必需品」に近い存在なので、所得が低ければ低いほど、需要の価格弾力性が小さい(価格が多少高くても需要量はあまり変わらない)と予想できます。

このような想定の下で、子ども手当が支給されると、それまで学習塾へ通わせていなかった世帯も通わせることが可能になるので、学習塾の総数(供給量)が一定とすれば、需要量が増加することによって市場メカニズムから「月謝」が高くなることが予想されます。そうすると、給付分がそのまま転嫁されることはなくても、一般家庭によっては給付の恩恵が低下することになります。

他方、家庭教師を雇うような家庭はそもそも一定以上の所得があるはずですから、子ども手当が支給されたか否かで、家庭教師の需要量が増減するようなものではないはずです(低価格を“売り”にしている業者等は別)。需要量が増加しないのであれば、子ども手当による影響という意味での価格上昇もないはずですから、家庭教師を雇うような高額所得の家庭の場合、子ども手当はそのまま所得増になると考えることができます。

以上は学習塾(一般の家庭層)と家庭教師(高額所得層)という例で説明しましたが、特定層のみに単に「一律の現金支給」を配るという政策の場合、多くが市場メカニズムを考慮すれば、同様の現象、つまり、逆進性がある政策になると考えることができます。

これは一般家庭における現在の“親世代”にとって「現金がもらえる」ということから「良い政策」と受け止められるのでしょうが、実際には、市場メカニズムが働き、低所得者層ほど当該政策の恩恵は少ない上に“子世代”に付けを回すだけの政策といえます。

したがって、一般家庭(数の上ではこの層がマジョリティです)の現時点の“親世代”の取り込みという意味で「選挙対策」にはなりますが、それ以上の「社会的な効果」は「ほとんどない」または「逆に悪影響がある」ということになります。

◆高速道路「無料化」と道路建設

「子ども手当」とともに注目度が高かった政策として「高速道路無料化」があります。ところが、何故か「高速道路料金の一律(普通車)2000円」という政策に変わってしまいました(かなりショボイ無料化実験はやるようで、その点をアゴラでお話ししたことがあります)。無料と2000円ではかなりの違いあるように感じるものの、当初から「政府財政に余裕のあるときにやれば良い」と思っていたので2000円でも有料にするのは「良いことだ」と感じていました。

ところが、浮いたお金で「道路建設」という話です。

政府がいうには「そもそも道路を造らないと言ったわけではなく、いったん中断した後、しっかりと再考し、造ると決断した」ということです。でも、「何故、造ると決断したのか」「造る部分と造らない部分はどういう基準なのか」など、かなり不透明感が残ります。

本当に「国民のため」なのでしょうか?
見方によっては特定の「誰かのため」の政策決断のようにも見えるのですが・・・

国民は「その造るに至った過程を説明してほしい」と思っているのです。どのようなプロセスで決定されているのかを知りたいのであり、「再考した」というような話ではないのです。それが今まで曖昧だったので、政治不信があり、政治とカネの問題が根強く存在すると国民は理解しています。その辺りを透明にしない限り、「誰がやっても政治は変わらない」と思うでしょうね。

また・・・

そもそも「無料化」についても「どのような効果を考えているのか」「混雑した場合にはどうか」などいろいろと検討すべきことがあるはずであり、当初の説明すらしっかりと聞いた覚えもありません。

2000円を徴収することで財源ができるのであれば、これだけ財政が悪化しているのですから「国債発行を減らす」という決断が筋ではないでしょうか。

◆ゆうちょ預入限度額2000万円と政府ファンド

このような中、「民主党が」ということではないのですが、ゆうちょ預入限度額2000万円への引き上げという話も現実味を帯びてきています。この話もアゴラで散々お話ししましたが、結局、「国債の受け皿機関」という意味では致し方ないと思うのです。

ところが、政府の“言い訳”がうまくないですよね。最も悪いのは「限度額引き上げで集まった資金により政府ファンドを」という話です。

そもそもゆうちょの貯金は銀行預金同様に「一覧払い」ですから、変動性のある商品への投資は慎重でなければなりません。にもかかわらず「政府ファンド」などという話をすること自体が「資金性を理解していない」といわれても仕方ないと思います。まぁ「簡保部分だけ」なら、そういう考えも「あり」かもしれませんが、それでも「資金運用」というのは一朝一夕にできるものではありませんし、況してやゆうちょ関係の巨額資金を運用するとなれば、その適任者はそれほど多くいるはずもありません。

ただ百歩譲って「政府ファンドとは政府機関等への貸出」であり、その貸付金は「政府が保証するものばかり」ということであった場合、それなら「損失」という意味では気を使う必要はありませんが、これって「財政投融資そのもの」であり、昔に戻しただけと言う話です。このような財政投融資は、政府という極めて非効率な分野に貸し付けるわけですから、国民生活の向上には“全く”役立たないことになります。

■アカウンタビリティーを高めた政策運営を!

以上のように、今の政権の“目玉”といわれる政策を、少し違った視点で見るだけでも「問題だらけ」であることがわかります。問題ばかりなのに、何の説明もないまま、何となく数の論理だけで実行されているとしか思えません。

子ども手当は「子育て世帯の」、高速道路2000円で道路を建設するのは「当該地域の支援者の」、ゆうちょで財政投融資は「公的な利権による利害関係者の」、それぞれの選挙票を狙っているようにしか、一般の有権者にはみえないのですけれど・・・

もう少しアカウンタビリティーを高めた政策運営をしてほしいものだとつくづく思います。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑