いまどきの若者論 - 原淳二郎(ジャーナリスト)

2010年04月13日 14:50

 最近いまどきの若者論が目につく。不況打開を若者のパワーに期待しているのか、グローバル時代への適応を求めているのか、日経新聞によくそんな記事が載っている。


連載「こもるなニッポン」の3回目には、米国留学するアジア人が増えているのに、日本人だけが激減しているグラフが載っていた。ハーバード大に留学中の日本人は現在たった一人らしい。商社マンの中にも海外駐在を望まない社員が増えている。伊藤忠の丹羽宇一郎会長は若者世代を伝書バト世代と呼んでいる。自ら考えることをせず、いわれたことを単に伝えるだけ。指示待ち人間が多いというのだ。

いつの時代にもいまどきの若者はという議論がある。年寄りから見ればいつの時代も若者は頼りなく見えるものだ。古代の文書にもいまどきの若者論が書かれていたとモノの本で読んだことがある。最近の若者論もそのたぐいと変わるのか変わらないのか。

この5年非常勤講師として慶応大学で学生と付き合うようになって、自分の学生時代と比較することが多くなった。違うなと感じるのは苦学生が少なくなったことだ。親の経済力がついたこともあろう。奨学金制度が充実した背景もあろう。

アルバイトで簡単に小遣いを稼げる事情もあるだろう。衣食足りて礼節を知るではないが、とにかく良い子が多い。慶応大学の特殊事情かと思ったが他大学の学生にも良い子が多いのだ。

海外へ出たがらないというが、夏休みなどを利用して海外旅行をする学生は少なくない。たった一人でアフリカまで出かけ、ボランティア活動をしてきた女子学生もいる。イチロウのように海外で活躍する選手も多い。それなのに若者が内向きになっているといわれるのはなぜか。

1ドル360円という為替レートでかつ持ち出せる外貨が500ドルに制限されていたわが学生時代は海外に行くには苦労が多かった。当時に比べ、海外に出やすくなったのに、若者の内向き志向が強くなったといわれる。

明治維新時代、海外から学ぶことは多かった。留学組みの多くが日本近代化のリーダーになった。最近までその傾向が続いた。だが今は、留学したからといってそれだけで出世したりリーダーになれたりするわけではない。だとしたらあえて海外を目指すこともない。

日本のガラパゴス化を嘆く人たちがいる。日本国内だけの事情を考慮し、グローバルに考えないから、国際競争力を持てないのだという批判である。80年代に「もう米国から学ぶものはない」と豪語して批判された人がいた。そういう先輩もいたのだからいまどきの若者が内向きになるのも仕方がない。だがいつの時代にも内向きの若者もいれば、この狭いニッポンを脱出したいと考える若者もいる。若者が海外に出なくても国内で活躍できる機会があることは決して悪いことではない。ただその場が用意されているのかが問題だ。就職氷河期、彼らの力を発揮させる環境を整えてやることが先だろう。戦後公職追放で多くの旧世代経営者がいなくなり、代わりに登場した若い世代が日本の復興を担った。いまどきの若者を嘆く年寄りは自ら退陣することが彼らに力を発揮させる早道である。

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