最近いまどきの若者論が目につく。不況打開を若者のパワーに期待しているのか、グローバル時代への適応を求めているのか、日経新聞によくそんな記事が載っている。
連載「こもるなニッポン」の3回目には、米国留学するアジア人が増えているのに、日本人だけが激減しているグラフが載っていた。ハーバード大に留学中の日本人は現在たった一人らしい。商社マンの中にも海外駐在を望まない社員が増えている。伊藤忠の丹羽宇一郎会長は若者世代を伝書バト世代と呼んでいる。自ら考えることをせず、いわれたことを単に伝えるだけ。指示待ち人間が多いというのだ。
いつの時代にもいまどきの若者はという議論がある。年寄りから見ればいつの時代も若者は頼りなく見えるものだ。古代の文書にもいまどきの若者論が書かれていたとモノの本で読んだことがある。最近の若者論もそのたぐいと変わるのか変わらないのか。
この5年非常勤講師として慶応大学で学生と付き合うようになって、自分の学生時代と比較することが多くなった。違うなと感じるのは苦学生が少なくなったことだ。親の経済力がついたこともあろう。奨学金制度が充実した背景もあろう。
アルバイトで簡単に小遣いを稼げる事情もあるだろう。衣食足りて礼節を知るではないが、とにかく良い子が多い。慶応大学の特殊事情かと思ったが他大学の学生にも良い子が多いのだ。
海外へ出たがらないというが、夏休みなどを利用して海外旅行をする学生は少なくない。たった一人でアフリカまで出かけ、ボランティア活動をしてきた女子学生もいる。イチロウのように海外で活躍する選手も多い。それなのに若者が内向きになっているといわれるのはなぜか。
1ドル360円という為替レートでかつ持ち出せる外貨が500ドルに制限されていたわが学生時代は海外に行くには苦労が多かった。当時に比べ、海外に出やすくなったのに、若者の内向き志向が強くなったといわれる。
明治維新時代、海外から学ぶことは多かった。留学組みの多くが日本近代化のリーダーになった。最近までその傾向が続いた。だが今は、留学したからといってそれだけで出世したりリーダーになれたりするわけではない。だとしたらあえて海外を目指すこともない。
日本のガラパゴス化を嘆く人たちがいる。日本国内だけの事情を考慮し、グローバルに考えないから、国際競争力を持てないのだという批判である。80年代に「もう米国から学ぶものはない」と豪語して批判された人がいた。そういう先輩もいたのだからいまどきの若者が内向きになるのも仕方がない。だがいつの時代にも内向きの若者もいれば、この狭いニッポンを脱出したいと考える若者もいる。若者が海外に出なくても国内で活躍できる機会があることは決して悪いことではない。ただその場が用意されているのかが問題だ。就職氷河期、彼らの力を発揮させる環境を整えてやることが先だろう。戦後公職追放で多くの旧世代経営者がいなくなり、代わりに登場した若い世代が日本の復興を担った。いまどきの若者を嘆く年寄りは自ら退陣することが彼らに力を発揮させる早道である。
コメント
「若いという、それだけで価値がある」といっていた
本田宗一郎さんを思い出しました。
http://www.youtube.com/watch?v=AUdIF_dJB4k&NR=1
http://www.youtube.com/watch?v=4yGvnTc7lug
http://www.youtube.com/watch?v=fKusr6v7Ywk&feature=related
今時の若者である僕ら(大学生)は、オジサン達の書く若者論を読むと笑ってしまいます。見当はずれな分析が多い気がしますね。やっぱり若者の考えは若者にしか分からないものだし、苦労してまでオジサンたちに分かって欲しくもありません。
日本をここまで悪くしたオジサンに説教されてたまるか!みたいなw
ryokautasさん、
>日本をここまで悪くしたオジサンに説教されてたまるか
正論だと思います。が、問題はそんなこと言ってももうどうにもならない、ということです。
池田さんをはじめ、多くの方が危惧する日本の近い将来が現実になったとき、誰もあなたを助けてくれません。国も、学校も、現在周囲にいる友人もです。その時にあなたは
>オジサン達の書く若者論を読むと笑ってしまいます
こんなこと言っている暇と実力があったかどうかが分かります。
新入社員のものです。入社して感じたのは同期で外の国に目を向けている人のなんと多いことか・・ 決して内向的になっているとはとても感じられません。
いまどきの若者を嘆く年寄りは自ら退陣することが彼らに力を発揮させる早道である。 これには激しく同意します。 チャンスがあれば・・と思っている若者が多いのは確かですし私の周りにもいます。しかし、それができないしがらみだらけの世の中で最初から諦めている人がマジョリティーなのが現実です。