民に出来る事は、官に! - 北村隆司

2010年04月15日 16:00

「在留証明発行」と「パスポート更新」のため、ニューヨークの日本領事館に出かけました。

「年金機構」と「企業年金基金」向けの「在留証明」の発行願いを窓口に提出しますと、係りの方は「証明願い」を人差し指で1字1字確認しながら読んで「公的年金用の在留証明は無料ですが、企業年金用は13ドル頂きます。それから、企業年金用の在留証明発行には、戸籍謄本が必要です」と言ってきました。


私が「全く同じ書類なのに、企業年金用だけ戸籍謄本が必要なのは何故ですか?昨年は戸籍謄本など求められませんでしたよ!」と抗議調で説明を求めますと「町村合併などで本籍地の呼び名が変る事があるので、今回、規則が変ったのです」と言う。

「企業年金基金向けの本籍地だけ変ると言うのは理屈に合わないし、今回から戸籍謄本が必要になったなど、全く知らされていない」と食い下がりますと「しばらくお待ち下さい」と奥の部屋に。20分程待たされると、物腰の柔らかいキャリアー外交官の領事さんが出て来て、別室に通され「今回は謄本なしで結構です」と直ぐに印鑑を押してくれました。

私の旧知の外務次官の下で働いた事のあるという領事さんのご好意でしたが「海外で日本人としての身分を保証する唯一の書類だから大切に扱えと言いながら、有効期間の残るパスポートの更新に写真も付いていない戸籍謄本を添付しないと身分の証明が出来ない非常識極まりない要求が、やっと直ったと思ったら、新しい非常識が出て来るなど、秀才を言われる外交官も常識では小学生にも劣りますね。」と嫌味を残して領事館を後にした意地悪爺の私でした。

自宅に戻って、西アジア諸国の旅行記に目を通していると、こんな文章に出会いました。

「朝食を済ませた後、先ずはウズベキスタン航空のオフィスに行って、翌日のウルゲンチ行きのフライトの予約の再確認をする。まず最初のカウンターに行くと「あっちのカウンターへ行け」と言われ、そのカウンターに行ってチケットを差し出すと、しばらくチケットを眺めてから「ニエット・・!!!」と言ってチケットを返される。どうやらダメらしい。仕方ないので、国際線カウンターの方に行って、愛想の良さそうなオバちゃん係員に聞いたら、さっき断られたカウンターに一緒に付いてきてくれて、何やらごにょごにょ話すと、今度は別のお姉ちゃんが奥から出てきて、端末を叩いて、ようやく予約の再確認が終了。やれやれ!!こういうところは、旧ソ連時代から全然改善されてないらしい」。日本のお役所仕事はウズベキスタンの水準だという事です。

パスポートで思い出しましたが、今年の1月に日本に出張した折、パスポートをホテルの金庫に忘れた侭リムジーンバスに乗り、出発後30分程して気が付くと言う失態を犯してしまいました。

慌てた私は、運転手に手短に事情を説明してホテルに連絡して貰えないかと懇情すると、運転手さんは直ぐに配車センターに無線連絡してくれました。バスに乗った心地もせず、じりじりして待つ中に、到着寸前になって、「ホテルと連絡が取れて、次のバスの運転手にパスポートを渡したと」と言う無線が入ってきました。空港でバスを降りると運転手さんは「次のバスはxxx号車で、OOOさんと言う運転手がホテルから預かったパスポートを持って降りますから受け取って下さい。問題があればこの方と相談して下さい」と荷物の取り扱い責任者を紹介して呉れる徹底ぶりです。同じ日本人でありながら、民と官との仕事の取り組み方の違いを示す良い例です。

会社も役割も全く違う人々が、組織の壁やマニュアルの掟を超えて顧客のために裁量権を行使して顧客のために献身的につくす日本の民間企業のサービスに接した私は「これは間違いなく世界一の窓口サービスだ」と感謝と誇りの気持ちで一杯になったものです。

小泉首相は「民に出来る事は民に」と訴えて国民の共感を呼びましたが、ソ連時代のウズベキスタンと同じ水準がはびこる日本のお役所仕事の現状を考えると「民に出来る事は官に」と叫びたい気持ちです。

                 ニューヨークにて      北村隆司

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