管制空域見直しで地方空路の活性化を ~横田空域という見えない壁~ 務台俊介

2010年04月17日 01:00

経営難の日本航空が県営松本空港の定期路線から撤退することになった。その後をFDAという静岡空港を拠点とする新参の航空会社が引き継ぐこととなって地元はホッとしている。


この問題に関し、2009年10月に村井長野知事が松本空港と羽田空港の間の定期路線開設の可能性につき、「羽田に直行で行けたら、飛行時間も30分程度で済むのではないか。県内でも最も便利な場所になる」と指摘した。
 
松本空港の存続は、羽田空港との接続が究極の解決策であることは識者の間では暗黙の前提であった。実は、1965年の松本空港開港当初から、羽田空港との路線を開設しようとする動きがあったが、空域の制約などから迂回ルートとなり採算が望めないという理由で開設に至らなかった経緯がある。
 
日本航空の経営難による路線廃止の議論が浮上したことで、改めて松本空港をはじめとする我が国の空港が置かれている環境と日米の安全保障上の関係がクローズアップされることになった。
 
村井知事の考えを実現するためには、米軍横田基地が管制業務を行う「横田空域」を回り込む必要があり、時間短縮効果を得るためには横田空域の我が国への返還が不可欠となってくる。
 
防衛白書によると、通称「横田空域」と呼ばれる管制区は、1都8県におよぶ広大な空域の航空管制を横田基地で行っている。この空域は1992年に約10%が返還され、高度約7,000m~約3,600mの6段階の階段状の管制空域となり、更に2008年には横田空域の南半分のうちの約40%、横田空域全体では約20%が日本側に返還され、一部返還後の横田空域の南半分は高度約5,500m~約2,400mの5段階の階段状となっている。これは羽田空港の4本目の滑走路が供用開始される2009年末に間に合うように行われた措置である。
 
この空域は米空軍の管制下にあり、民間航空機であってもこの空域を飛行する場合は米軍による航空管制を受けることになる。この場合、「事前協議」により飛行経路を設定する必要があり手続きが煩雑なため、羽田空港を離発着する民間航空機は同空域を避けるルートが選択されているのが現状である。羽田空港や成田空港から西日本・北陸方面へ向かう民間航空機の飛行ルートの障害となっているため、航空路が過密化する要因の一つとなっていると言われている。
 
実はその最大の「被害者」は松本空港であり、路線の設定すらできないことになり、結果的に飛行場存亡の危機に見舞われることとなったのである。
 
東京都は、石原知事がこの問題を取り上げ、横田空域の返還運動を展開してきている。東京都は、横田空域について、「広大なエリアに広がっている」、「飛行ルートの設定の障害」、「航空路の過密化を招いてる」との認識を示し、空域返還により、「需要に応じた空域の再編が可能」、「新たに多様な飛行ルートを設定することができる」、「首都圏の空の過密が緩和」といったメリットを掲げている。
 
我々が羽田空港や成田空港を利用する際に、何故か房総半島を大回りして離着陸する不可思議を味わってきたがその原因が横田空域にあったのである。

現在は沖縄の普天間基地の移転ばかりが大きな政治問題となっているが、日本の安全保障の在り方の議論の中で、地域の振興のために横田空域の在り方をどのように考えていくのか、戦後60年以上を経過し首都を囲む日本の空域の重要部分が引き続き米軍の管理下にある現状、そのことが日本の地域振興の阻害要因となり日本経済発展の支障要因となっている現状をどのように考えていくべきかも大きく問われている。

(神奈川大学教授)

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