加計問題でまだ政権や内閣府を叩くメディアは岩盤の何たるかをわかってないなと思いつつ、文科省を叩く側も構図が読めていないと思うことがあります。本件は文科省だって被害者じゃないかと思うから。
だって文科省は大学の設置を自由化する方向で政策を進めてきていて、獣医など4分野だけが岩盤として残っているわけで。だけどそれは文科省の意思じゃないですよね。
岩盤側の農水・厚労の官僚だって、好んで岩盤を擁護しているわけではありますまい。本心で岩盤を守りたいとしたら変態ですよ。あくまで業界やそれをバックとする政治からのプレッシャーで動いている。
ぼくも現役のころ、岩盤を守ろうとする役人とずいぶん闘いましたが、いずれのケースも、担当する業界や議員との板挟みで苦しみ、落としどころを探るものでした。業界や議員の意向を汲んで行政を進めないと左遷ですから。
たいてい厄介な案件は官僚が議員から吊し上げを喰らいます。民間の支持者から押された議員は、それに対峙する民間との調整を自分ですることは滅多になく、間に立つ官僚を吊し上げて仕事したことにします。民民を調整して落とし所を探るのが官僚の役割です。
今回の件、そういう意味では、文科・農水・厚労省ともさほどの抵抗や理論武装をせず、あわわあわわとなぎ倒されたように見えます。それは、ひょっとすると、岩盤崩しの阻止にわざと汗をかかなかったんじゃないか、とも思えてくるのです。
政権の意向で岩盤を崩そうというんだから、乗っとけ、となったんじゃないか、という気もするわけです。岩盤側に立ち向かうのは政権であって、政権の強さをいいことに、板挟みを避けたんじゃないかと。
官僚の気持ちを忖度するとですね。
だって課長・審議官級の協議で決しているわけでしょ。役所がホントにもめたら事務次官同士の折衝を経て官房副長官裁定まで行きますもん。ぼくも現役のころ、そんな案件を2回担当したことがあります(いずれも相手は通産省でした)。
現に流出した文書からは、政権側の政務が岩盤側の政治家と調整するさまが読み取れます。本件、官僚はあまり実質的な役割を果たさず、政治vs政治でコトを進めたんじゃないかと。
とすれば、けっこうこの国の政治は機能してるとも読めるのでした。
全方位に チョ~好意的に うがちすぎですかね。ぼくは。
編集部より:このブログは「中村伊知哉氏のブログ」2017年7月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はIchiya Nakamuraをご覧ください。