ハーグ核セキュリティサミット ~「核燃料サイクル」への言及は未定 --- 石川 和男

アゴラ

3月24~25日、オランダ・ハーグで第3回核セキュリティサミットが開催される。これについて、昨日付けの東京新聞では、安倍首相が『原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった』とする批判記事を掲載している。


首相の発言要領は未だ公開されていないので、「核燃料サイクル」に関してどのような言及がなされるのかは、現時点ではわからない。このハーグ・サミットの件で、核燃料サイクル云々の記事を書いているのが東京新聞だけなのは、甚だ不可解である。

それはさておき、核燃料サイクルに係る政策上の要請を改めて考えてみると、下の資料1~3が最も端的にそれを表しているだろう。核燃料サイクルとは、原子力発電所の使用済燃料をリサイクル燃料として活用する場合の一連の事業を指す。

世界的に見ると、核燃料サイクルを推進しているのは日本以外にはイギリス・フランス・ロシア・中国など(資料1)。日本は今、六ヶ所再処理工場が原子力規制委員会の審査プロセスに入っている。日本の原子力発電事業におけるプルトニウム利用に関する方針・計画(資料2・資料3)は、東日本大震災以前に構想されたものであるため、今後修正を要するはずだ。

現時点での核燃料サイクルに関する日本政府の方針は、エネルギー基本計画政府原案p41以降に書かれている。そこに書かれているように、『核燃料サイクル政策については、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を持たせる』ことを今後の基本線としていくことが見込まれる。 

 文言の調整は今後幾分かあるかもしれないが、結論から言うと、諸々熟慮した上で『核燃料サイクル政策の推進』の旨は明記されるだろう。反発はマスコミを一瞬大きく賑わすと思われるが、以後粛々と竣工を待つことになるはずだ。原子力も、それに代替するものが実用化されるまでの『過渡期のエネルギー』なのだ。
 

<資料1>
各国の使用済燃料対策
(出所:資源エネルギー庁資料

<資料2>
我が国Pu利用方針
(出所:資源エネルギー庁資料

<資料3>
我が国Pu利用計画
(出所:資源エネルギー庁資料


編集部より:この記事は石川和男氏のブログ「霞が関政策総研ブログ by 石川和男」2014年3月24日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった石川氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は霞が関政策総研ブログ by 石川和男をご覧ください。