ブルームバーグは積水ハウスが開発する東京、白金の30階建て高層マンションで大成建設が手抜き工事をしたことをすっぱ抜きました。大成が自社の検査で補強筋が一部入っていないことが判明、コンクリートを壊して再度やり直すという事態になっています。
一方、三菱地所レジデンスが開発していた青山の高級マンションは竣工検査に入っているところでインターネットの書き込みからコア抜きが多数行われているという情報がもたらされ、施工業者である鹿島に確認したところその日の夜のうちにあっさり事実を認めました。こちらの方は完成間際だったこともあり、事態は深刻で結局ところ、すべての売買契約を一旦解約というとんでもない事態に発展しています。
まず両方の物件に共通するのは日本を代表する建設会社において発生した事件であるということです。しかも、一昔前の小さい物件であれば実質的には下請けに丸投げに近い形で施工するのですが、今回の両物件はそれなりの規模があり、現場体制もある程度整っていたはずです。にもかかわらず、このようなミスが起きたということは何かおかしな状況があると考えるべきです。
特に鹿島のケースは施主である三菱地所レジデンスが問い合わせてすぐにそれを認めたということは鹿島の社内ではわかってたということです。そして、竣工間際であったということは黙っていたらばれないかもしれないという淡い期待があった可能性は大いにあるでしょう。
一方、大成のケースは時間軸から鹿島の事件が表面化し、鹿島に多大なる損害賠償がかかってきていることを鑑み、30階建てのビルで鉄筋が足りないなどということが将来ばれればとんでもないことになるリスクは取れなかったのでしょう。当たり前ですが。
鹿島は施工やり直しに約1年かかると言われています。内装はほぼ完了していた中でウォータージェットで補修していくため、建物は一旦水浸しになります。つまり、内装は作り直しになります。売り主の三菱地所レジデンスはマーケティングをやり直さねばなりません。しかも「パークハウスグラン」シリーズの第一弾プロジェクトということで戦略的に非常に重要な物件でした。もちろん、遅延の金利もかかります。勿論、工事保険でカバーされる部分も多いのですが、三菱、鹿島という両ブランドにとってとんでもない代償となってしまったのです。
私が思う可能性としては施工管理できる組織が十分ではない気がしています。両社とも年間施工高が1兆700億円前後の最大手の建設会社でありますが、アベノミクスを受けた受注額も大きくなる中、ここ数年施工高があまり変化ないのは施工をこなしきれない状態になっている可能性はあります。
工事の請負において一般には現場作業員が不足していると言われていますが、施工管理者も不足しているのであります。そこで今まで5人で管理していた現場に一人抜け、と上から言われれば仕方なく4人で管理する体制になってしまいます。施工管理ミスはこういうところから発生します。つまり、現場が忙しすぎて細かいところに手が回らないのです。ましてや経験が少ない若い管理者(=現場監督)に任せていても上司はどこまでやったかすべて把握できないものです。「図面チェックしたか」という質問に「はい、やりました」と言われれば「そうか」で終わるケースが多いというのが現場の実態だと思います。
日本はこういう問題が見つかり始めるととことん追求する癖があります。マスコミもこぞって追いかけるかもしれません。今回のケースのように施工中の物件ならまだ救いようがありますが、完成引き渡し後の物件で問題が出たらもはや手の施しようのない状態になりかねません。この手の話題がニュースに出始めるのは姉歯事件以来だと思いますが、同じ業界にいる人間としてちょっと恐ろしいものがあります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年3月26日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。