誰がイスラエルの「核」を監視するのか --- 長谷川 良

アゴラ

ウィーンの国連内に事務所を持つ包括的核実験禁止機関(CTBTO)準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長は3月18、19日の両日、イスラエルを初めて公式訪問し、リーバーマン外相、シュタイニッツ情報国際関係・戦略関係相、そしてイスラエル原子力エネルギー委員会のチョレブ長官(IAEC)らと会談した。


ゼルボ事務局長はイスラエルのナショナル・データセンターと放射性実験所RL09が運営されているソレク核研究所センター(SNRC)を訪問し、「イスラエルの3カ所の監視施設がCTBTOの国際監視システム(IMS)に参加し、CTBTOを支援している」と感謝を表明している。

具体的には、イスラエル南部の都市エイラートとメロン山の補助地震観測所、そしてソレク核研究所センターの放射性核種研究所の3施設だ。

ナショナル安全研究機関(INSS)主催のセミナーに参加したゼルボ事務局長は、「イスラエルの懸念であったIMSの監視能力は向上し、加盟国間の連携は強化されてきた。CTBTが発効されることでで信頼醸成の枠組みを構築できる道が中東地域でも切り開かれる」と強調した。

同事務局長は、「2人の閣僚がIMS監視システムとCTBT機関のこれまでの歩みに強い関心を示したことは嬉しい」と報告している。

CTBT署名国は3月現在、183カ国、そのうち162カ国が批准完了。条約発効に批准が不可欠な核開発能力保有国44カ国中8カ国がまだ批准を終えていない。米国、中国、北朝鮮、イスラエル、インド、パキスタン、イラン、エジプトだ。

CTBT機関によると、337施設から構成されるIMSは現在、約90%が完了している。イスラエルは1996年9月25日に署名したが、監視システムについて不満を表明し、批准を拒否してきた経緯がある。

ゼルボ事務局長は19日、The Times Of Israelとのインタビューの中で、「加盟国は自国の安全を最優先するが、CTBTが発効すれば、その安全はさらに強化される」と述べ、イスラエルに早期批准を促している。

なお、イスラエルは核兵器の保有については否定も肯定もしない立場を維持している。西側情報機関筋によれば、同国は約200基の核兵器を保有している。同国は過去、核兵器を破棄する前の南アフリカと連係して大西洋上で核実験を実施した、といわれている。中東諸国では、国際社会の監視外にあるイスラエルの核に脅威を感じる声が絶えない。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。