ユダヤ民族とその「不愉快な事実」 --- 長谷川 良

アゴラ

1917年のロシア革命は人類史上初の社会主義革命だった。その革命の主導者、ウラジーミル・レーニン自身はロシア人だったが、彼の側近にはユダヤ系出身者が多数を占めていた。


レーニンも厳密にいえば、母親がドイツユダヤ系だからユダヤ系ロシア人だ、ともいわれている。カール・マルクスもユダヤ系出身者だったことは良く知られている。すなわち、マルクス・レーニン主義と呼ばれる社会主義思想はユダヤ系出身者によって構築されたわけだ。スターリンがその後、多くのユダヤ人指導者を粛清したのはユダヤ人の影響を抹殺する狙いがあったという。

興味深い点は、ユダヤ民族はロシア革命にユダヤ人が関与したという事実を否定してきたことだ。ノーベル文学賞受賞者のソルジェニーツィンは「200年生きて」という歴史書の中でボリシュヴィキ革命におけるユダヤ人の役割について書いている(200年とは1795年から1995年の間)。

ソルジェニーツィン氏は「ユダヤ人は1917年革命の関与について否定し、『彼らは本当のユダヤ人ではなく、背教者(otshchepentsy)だった』と弁明する。ユダヤ人の主張を認めるなら、同じ論理でボリシュヴィキ革命を主導したロシア人は本当のロシア人ではなかったと主張できるはずだ」と書いている。
     
冷戦後のロシアでもユダヤ系ロシア人の影響は少なくない。ソ連解体後、新興財団のオリガルヒ関係者にはユダヤ系が少なくない。代表的な人物はプーチン大統領の政敵だったミハイル・ホドルコフスキー氏だ。同氏は石油会社ユコス社元社長で昨年末、プーチン大統領から恩赦で釈放されたばかりだ。英国サッカーのプレミアリーグの「チェルシー」のオーナー、ロシアの大富豪ロマン・アブラモヴィッチ氏もユダヤ系だ(ホドルコフスキー氏の場合、父親がユダヤ人だが、母親はロシア人だ。母親がユダヤ系でない場合、正式にはユダヤ人とはいわず、ユダヤ人の父親を持っているロシア人ということになる)。

ロシア革命とユダヤ民族の関係について当方の見解を少し述べる。

ユダヤ人のイエスは2000年前、ユダヤ社会で指導的立場にあった聖職者や指導者から迫害され、十字架に処刑された。「復活のイエス」からキリスト教が誕生し、その教えは多くの殉教の歴史を経ながら古代ローマ帝国で公認宗教となった。しかし1054年にキリスト教は東西両教会に分裂(大シスマ)。現在のロシアには東方教会が伝達され、ロシア正教会が広がっていった。

そして1917年、ロシアで唯物思想の無神論国家を目指す社会主義革命が発生した。その背後に、2000年前イエスを殺害したユダヤ民族の末裔たちの影響があった。

イエスを殺害したユダヤ民族は“メシア殺害民族”という追及から逃れるためロシアで革命を支援し、無神論社会を構築していった。そしてロシア革命への関与を追及されると、「彼らは決して本当のユダヤ人ではなく、ユダヤの背教者だった」(ソルジェニーツィン)と突っぱねてきたわけだ。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年4月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。