米連邦準備制度理事会(FRB)が21日に公表した4月29~30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、住宅市場に懸念を表明していました。
下方リスク要因としてFedが注目する住宅市場、春から回復の足取りを固められるのでしょうか。本日発表された米4月中古住宅販売件数でうらなってみましょう。
米4月中古住宅販売件数は465万件となり、前月の459万件から1.3%増加した。4ヵ月ぶりにプラスに反転し、年初来で初めての増加となる。しかし、市場予想の469万件を下回った。内訳をみると、複合住宅が前月比7.3%増の59万件と5ヵ月ぶりの高水準。一戸建ても0.5%増の406万件となり、前月の横ばいから増加に反転。4ヵ月ぶりにプラスに転じた。
在庫件数は、前月比18.2%増の201万件と足元久々に200万件台に乗せた。在庫件数が急増したため、在庫相当は前月の5.1ヵ月から5.9ヵ月と2012年8月以来の水準へ延びている。金融危機後で最も短期化した1月の4.3ヵ月から、かい離した水準を保った。中央価格は前年比で5.2%上昇の20.17万ドル。5ヵ月ぶりに20万ドルを回復した。前月比では2.5%、3ヵ月連続で上昇している。
買い手の内訳は、以下の通り
・差し押さえとショートセールを合わせた不良債権物件は15%>前月は14%、前年同月の18%
(差し押さえ物件は10%と前月と変わらず、ショートセール/担保残債価額よりも安い価額で販売する住宅は5%と前月の4%から上昇)
・新規購入者 29%<前月は30%、前年同月は29%
・現金での購入者 32%<前月は33%、前年同月は32%
・投資向けに購入者 18%>前月は17%、前年同月は19%
売り出し平均期間は48日と、前月の55日から大幅に短縮した。ただし、足元最短だった2013年6月の37日から遠のいた水準を保つ。
(出所 : Washington Post)
BNPパリバのエコノミストは、結果を受け「4月FOMC議事録で明記されたように、高齢化を背景とした賃貸需要の高まりを一因として複合住宅が増加をけん引する半面、一戸建ては小幅増にとどまる」と分析。住宅投資は大寒波に見舞われた1~3月期の前期比年率5.7%減に落ち込んだが「4~6月は10%増」を見込みつつ、「若年層の雇用回復の遅れ、依然として厳格な信用基準が住宅市場の回復の重しとなりうる」と付け加えた。
以上を踏まえると、書き入れ時を迎えながら在庫が急増するように需要はイマイチ、何より新規購入者も足踏み状態であることが分かります。
春到来でもスッキリしない天候が続くように、住宅市場も上昇気流に乗り切れない事情も潜んでいます。
住宅調査会社ジローによると、住宅評価額が未返済残高を下回る「アンダーウォーター」の割合は、1~3月期に18.8%の970万世帯でした。最悪を記録した2012年の31.4%、2013年10~12月期の19.4%から改善が進んだとはいえ、ざっと5世帯に1世帯がアンダーウォーターの物件を抱えていることになります。住宅の純資産価値が20%以下の世帯も約1000万に及び、1)仲介料、2)不動産権限移転コスト、3)次に購入する住宅の頭金の支払い──などが困難な状況というワケ。中古物件の在庫不足に伴い新規購入者の買い控えを招きかねず、春到来でもモメンタムが急回復するとは想定しづらいんです。
月々の住宅ローン支払い額を踏まえると、家賃がお得という考え方も広がってきています。特にニューヨークでは、中国人を始め外国人の現金購入などを通じバブルの様相を呈する半面、マンハッタン中心部まで45分という郊外(ブルックリン、クラウンハイツ)のタウンハウスですら165万ドル(1億6840万円)まで高騰してきました。仮にこのお宅で30年ローンを組んだ場合、金利が5.0%とすれば月々の支払い額はざっと8860ドル=90万3700円也。半面、マンハッタンで5000ドル支払えばエンパイア・ステートビルから10分の好立地に住めるんですよね。住宅ローンという負債を抱えたくない若手層を中心に持ち家より賃貸を選好する理由が、ココにあります。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年5月22日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。