トルコのエルドアン大統領が核武装を望んでいることは良く知られていることだ。中東において、現在核兵器を保有しているのはイスラエルだけである。それに加えて、サウジアラビアがパキスタンに資金を投入して自国の核兵器を開発させたということも公然の秘密となっている。そして、イランも何れ核武装をすると予測されている。
そのような中東の動きの中で、中東の大国と自負しているトルコが中東における勢力のバランス維持には自国も核武装の必要性があることをエルドアン大統領は常々感じているという。
8月8日にトルコのジャーナリストAbdolá Bozkurt が英国紙『Express』で、エルドアン大統領が原爆を手に入れようとしていることを明らかにした。
大統領を囲む側近のアドバイザーと政府で信頼されている内輪の官僚グループとの間でも原爆を手にれることについて議論されたということも彼は同紙の中で触れた。
更に、彼はトルコが最近ロシアと日本と会合を持ち、またNATOからの離脱の用意があることも同紙で言及した。
そして、彼が注目しているのがトルコに近い将来現れる2基の原子炉で、それが核兵器の製造に関係して来るとして疑っていることも同紙で表明している。この2基の原子炉とはロシアが建設する1基と日本とフランスのジョイント・ベンチャーによる1基である。
先ず、彼が指摘しているトルコと日本がつい最近会合を持ったというのは、恐らくトルコで科学テクノロジーの分野を発展させる為にトルコで日本と協力して大学が設立されるための会合ではなかったかと推察される。この分野において、トルコは日本に比べ遥かに遅れている。それを日本の協力で発展させるのが目的の大学である。この大学で日本の科学テクノロジーを学ぶということがどこまでトルコの核兵器開発に繋がるのかは読者の想像に任せる。
また、原子炉を建設した時のウラン濃縮及び再処理とプルトニウムについては両国の原子力協力協定のもとで移転が必要な場合は移転できるとされている。しかし、それが移転された場合に、核物質と副産物は日本政府が合意する場合に限り、トルコ国内で濃縮し、また再処理が可能となっている。
両国の原子力協定において日本政府が合意しない限り、トルコは国内で核燃料の再処理が出来ないということから、トルコが核武装に至ることはないと判断されている。しかし、この点が彼も不審に思っているということなのである。
その一方で、トルコが核兵器を開発するにはNATOに加盟している限り、米、英、仏などがそれに反対して核武装は出来ないというのは充分に認識されている。トルコがNATOの反対を無視して、ロシアからミサイル・システムS400の購入を決めたのも、トルコのNATOからの離脱が将来あることも視野に入れたものと思われる。
では、核武装に必要な遠心分離機は手に入るのかという疑問がある。トルコが既に相当数の遠心分離機を持っているというのは公然の秘密となっている。それは米国誌『The National Interest』が2015年9月22日付で、次のような内容を伝えた。2003年にマレーシアからドバイ経由でガダフィが統治していたリビアに送った10,000台の遠心分離機とその関連部品が途中で紛失したという事件がある。多くの専門家の間では、それをミステリーな「第4の顧客」と呼んでいる。この顧客というのがトルコだと専門家の間では結論づけている。
この遠心分離機はパキスタン人で核兵器の商人と呼ばれたA.Q.Khanによって1987年から2002年の間にイラン、北朝鮮そしてリビアに販売された。それに必要な電子部品はトルコ経由で入手していたという。パキスタンが秘密裡に核開発した時も必要な電子部品はトルコ経由で入手していたとされている。トルコはA.Q.Khanの核の商活動に当初から協力していたのである。1998年にはパキスタンのナワーズ・シャリーフ前首相がトルコに核開発のパートナーになることを提案したという。
また、トルコは濃縮ウランも旧ソ連からマフィアの仲介でコソボ、ボスニア、ヘルツェゴビナを経由して手に入れていると憶測されている。
米国シンクタンクの民主防衛基金に所属するトルコ議会の元議員だったAykan Erdemirは「エルドアンはトルコが原子力を持つ国になることを強く望んでいる。が、まだその能力を備えていない」と指摘した。一旦、原子力を備えれば、それを核兵器に変身させることは容易である。
エルドアン大統領はトルコ建国100周年の2023年までは少なくとも政権を維持するという意志は固い。彼が目指すのはロシアのプーチン大統領のような長期政権を維持できる体制の構築だという。