北の地震は「人工」でも「自然」でも大変

韓国の聯合ニュース(日本語版)によると、韓国気象庁は24日、23日午後5時29分(日本時間)のマグニチュード(M)3.2の地震の前、23日午後1時43分にもM2.6の地震が起きていたという。すなわち、23日に少なくとも2回の地震が6回目の核実験を実施した豊渓里から北北西に約6kmの地点で発生していたことになる。いずれも自然地震という。

そこで先ず、23日の聯合ニュース(日本語版)の地震関連記事を最新ニュースからラースト記事の順序で紹介する。

▲北の地震を報じる韓国「聯合ニュース」日本語版(2017年9月23日)

▲北の地震を報じる韓国「聯合ニュース」日本語版(2017年9月23日)

①聯合ニュース(現地時間9月23日23時8分)

韓国気象庁と韓国地質資源研究院によると、23日午後5時29分(日本時間)ごろ、北朝鮮北東部、咸鏡北道・吉州の北北西23kmでM3.2の地震を観測した。
気象庁は当初、M3.0と発表したが、同3.2に修正した。震源は北緯41.14度、東経129.29度から、同41.351度、同129.056度に修正した。地震の発生場所は6回目の核実験が実施された位置の北北西6km付近という。
気象庁は今回の地震について、核実験場がある豊渓里近くで起き、規模が小さくないことから爆発による地震との見方が出ていることについて、音波が発生しないことなどから自然地震と分析している。

②聯合ニュース(同21時27分)

韓国気象庁によると、23日午後5時29分(日本時間)ごろ、北朝鮮北東部、咸鏡北道・吉州の北北西23kmでM3.0の地震を観測した。韓国気象庁と国連の核実験全面禁止条約機関(CTBTO)は自然地震との分析結果を出したが、中国当局は爆発による地震と分析している。
震源は北緯41.14度、東経129.29度という。韓国気象庁は地震の規模が大きくなく、観測網から外れていたことから震源の深さを明らかにしていない。同庁は地震波の特長、音波が発生していないことなどから、自然地震と分析している。
同庁の地震専門分析官は、「今回、地震が発生した場所は6回目の核実験が実施された位置から南東に約20km離れている。自然地震の際に表れるP波とS波がはっきりと出ている。(核実験などによる)人工地震で観測される音波も発生していない」と述べた。

③聯合ニュース(同19時35分)

韓国気象庁は23日、同日午後5時29分(日本時間)ごろ、北朝鮮北東部、咸鏡北道・吉州の北北西23kmでM3.0の地震が発生したと伝えた。咸鏡北道吉州郡の豊渓里には核実験場があるが、同庁の地震火山センター長は、「波形を分析したところ、自然地震だった」と話している。
震源は北緯41.14度、東経129.29度という。気象庁は地震の規模が大きくなく、観測網から外れていたことから震源の深さを明らかにしていない。
同庁の地震専門分析官は、「今回の地震は自然地震の際に表れるP波とS波がはっきりと出ている。(核実験などによる)人工地震で観測される音波も発生していない」と説明した。ただ、中国の地震局が今回の地震は爆発によるものと発表していることから詳細な分析を進めている。

④聯合ニュース(同19時1分)

韓国気象庁によると、23日午後5時29分ごろ、北朝鮮北東部、咸鏡北道・吉州の北北西23kmでM3.0の地震が発生した。
咸鏡北道吉州郡の豊渓里には核実験場がある。同庁の関係者は、「波形を分析した。自然地震とみられる」「北が6回目の核実験をした場所から20kmほど離れている」と話している。

上記の4つの記事で共通内容は、①地震発生時刻の午後5時29分、②震源地、北北西23km、③「自然地震」の3点。相違はマグニチュード。当初m3.0としていたが、最終的に3.2に修正された。

中国が当初、爆発による地震らしいと報じたことから、北が7回目の核実験を実施したのではないか、という懸念が沸いたが、韓国気象庁がいち早くその報道を否定し、地震のS波とP波を検証し、「人工地震ではなく、自然地震」と発表した。そのため、北の7回目の核実験説は消えた(中国側も修正している)。

ただし、「良かったと」といって喜んではおれない。M2.6とM3.2の2回の自然地震が前回のM5.7記録した6回目の核実験を実施した場所から余り離れていない所で起きていることが判明したからだ。爆発規模250ktともいわれた6回目核実験で地盤が崩れたという情報も流れた。ひょっとしたら核実験周辺の地盤が崩れ落ちているかもしれない。その上、白頭山の爆発の懸念も排除できない。7回目の核実験ではなかった可能性が濃厚だが、白頭山の火山爆発や大地震の前触れではないかといった不安は払しょくできないからだ(「水爆実験で『白頭山』噴火の危険は?」2017年9月7日参考)。

「人工地震」「自然地震」、どちらに転んでも周辺国家に大きな被害を及ぼす。前者の場合、トランプ米大統領はもはや黙っていないだろうから、米朝間で軍事衝突が勃発する危険性が出てくる。後者の場合、想定できない災害をもたらす危険性が考えられる。「人工地震」でも「自然地震」でも北の地震はやはり心配だ。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。