「どうして解散するんですか?」という小学校4年生を名乗るアカウントがちょっと話題になりましたが、本物の小学生のみなさんはそもそも衆議院の解散って何のことかよくわからないと思うので、解説しておきましょう。
解散というのは、国会議員の任期の途中でみんなをやめさせることです。わからないのは、首相が勝手に国会議員をクビにしていいのかということです。世界中で、こんななんでもありの解散を認めている国は日本しかありません(イギリスはやめました)。
憲法第7条には「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」とあり、その中に「衆議院を解散すること」とあります。これは天皇が勝手に解散できるということではなく、実質的には内閣が解散するわけです。
では内閣は、どういう場合に衆議院を解散できるんでしょうか。憲法第69条には、こう書いてあります。
内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない。
すなおに読めば、解散するのは内閣不信任案が可決されたときだけで、第7条はその形式的な手続きを書いているだけでしょう。ところが、いろいろな大人の事情で、不信任案が出ていないときも「7条解散」といって、内閣が勝手にやっていいという解釈が通用しています(最高裁判所でも支持されました)。
この解釈だと、政権与党は自分に都合のいいときに解散できます。たとえば安倍さんが「アベノミクスはもうだめだ。来年はもっと景気が悪くなる」と思ったら、内閣支持率が高いうちに解散すればいいわけです。野党は不意うちでバラバラなので、自民党の支持率が低くても選挙では勝てるでしょう。
こういうのを党利党略といいますが、別に党利でも党略でもいいのです。政治家にとって自分が選挙で受かることが絶対条件なので、大義名分なんか必要ありません。
安倍さんは最初「代表なくして課税なし」と大義を語っていました。これは「増税は大事な問題だから民意を問う」という意味ですが、「野党がどこも増税先送りに賛成なのに何を問うのか」といわれると、「アベノミクス解散」だというようになりました。
でも経済政策がうまく行ったかどうかなんて、解散の理由になるんでしょうか。そんなことでいちいち解散していたら、しょっちゅう選挙をやらないといけません。日本の国政選挙は1年半に1回ぐらいあるため、政治家のみなさんはいつも選挙区をまわって、老人や主婦に受ける話ばかりするようになります。
こういう政治をもうちょっとましなものにするため、7条解散はやめて、政治家のみなさんが落ち着いて政策の勉強ができるようにしたほうがいいと思います。
追記:「法改正は困難なので解散が必要だ」というのはまちがいです。消費税増税法の景気条項(附則18条)には「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」と書かれています。これにもとづいて国会に改正案を出せば、反対する党はないので、全会一致で可決されます。