ルーブルが対ドルで1998年以来の下落幅を示現した翌日の16日、ロシア中央銀行(CBR)が緊急会合を開き大胆な行動に打って出ました。
政策金利である1週間物レポ金利を10.5%から17.5%へ引き上げ、マーケットの度肝を抜いたのです。11日の100bp利上げがロシアをはじめ世界中の失望を招いただけに、裏をかいてルーブル防衛の本気をみせてくれました、650bpもの大幅利上げは、ロシア危機に見舞われた1998年以来で初めてとなります。年初来で6回目の利上げを受け、これまでの利上げ幅は11.5%ポイントに達しました。
大幅利上げを手掛かりに、ルーブルは一時1ドル=60ルーブルまでドル安・ルーブル高へ反転。15日のルーブルは1ドル=67ルーブル超えまでドル高・ルーブル安を示現したものの、7日ぶりに反発をみせています。
ナビウリナ総裁、利上げ後に会心の笑みを漏らしたのでしょうか。
(出所:Maxim Shemetov/Reuters )
CBRは「ルーブル安、および深刻な水準へ上昇したインフレ・リスクを制限するため」650bpもの利上げという大鉈を振るったと説明していました。
リセッションに直面するだけに、大幅な利上げだけではありません。景気動向に配慮しインフラ整備計画への融資を固定金利9%に設定し、従来から800bp引き下げています。また外貨建て28日物レポ取引での入札額も15億ドルから50億ドルへ引き上げ、国内企業や銀行を支援する姿勢を強調しました。
ただし、ニューヨーク市場関係者からは手厳しい。「海外への資金流出を食い止めるなけなしの手段」、「時間稼ぎに過ぎず、ルーブル安の底はまだ見えない」など、あれだけの大幅利上げでもロシアをみつめる目は冷たく、事態の好転を予想していません。
シルアノフ財務相は11月17日の時点で「景気後退は不可避」とコメントし、原油価格が60ドルまで下落した場合「マイナス成長に落ち込む」と予想しました。北海ブレント原油先物が12日に61.85ドルと約5年半ぶりの安値で引けた後、CBRも原油価格が平均60ドルで推移するようであれば「2015年の国内総生産(GDP)は最悪で4.7%減」との悲観見通しを提示。2009年以来の景気後退シナリオを描いていた裏には、650bpの大幅利上げの影響も加味していたのでしょう。
CBRの度重なる努力も空しく、原油相場とはサウジアラビアのヌアイミ石油鉱物相が突き放したようにマーケットの原理で動くもの。モルガン・スタンレーは原油価格が50ドルまで失速すればGDPは6%減まで悪化すると試算しており、ロシアが進む真っ暗なトンネルの先になかなか明るい灯の光りは見えてきません。
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2014年12月14日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった安田氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。