ギリシャは日曜日の選挙の結果を受け、300議席のうち149議席を確保した急進左派連合が「独立ギリシャ人」と連立を組み、政権交代を実現しました。当初は急進左派連合は第一党になるものの前政権の新民主主義党の連立の方が優勢であり、政権交代はないとみられていました。
ところが右派で急進左派連合とはほとんど一致点を見ない「独立ギリシャ人」と連立を組むことでとりあえずの政権交代を達成しました。「独立ギリシャ人」は財政再建に反対して前政権の与党・新民主主義党(ND)を飛び出した離党組が立ち上げた政党(日経)という事ですから緊縮財政に反対するという事だけは急進左派連合と一致するという細い糸が一本繋がってるだけの安定感がない新与党という事になります。
ギリシャの首相に就いたチプラス党首は若干40歳。氏が対峙するハードルとは国内経済の安定化、連立与党の安定化、2月末に来るEUの融資期限に際してその更改をすること、そして与党として選挙公約通り「反緊縮」ECB、EUから取り付け、実現することであります。一つでも大変だと思いますが、これだけの作業を比較的短期間でこなし、一定の成果を上げることを新与党として期待されているのです。
下馬評では内閣そのものが経験不足で不安感が大であるとみられています。次にほとんど主義主張が違う「独立ギリシャ人」とどう意見調整していくのかという疑問が湧きあがります。
私がギリシャ問題は前回のような大事にはならないとみているのは今のギリシャに抵抗力はさほどないとみているからであります。つまり、新政権に戦うだけの十分な力はないだろう、と見ています。もつれれば当然ながらユーロ圏の強者達と直接交渉に臨まなければならず、百戦錬磨のECBやドイツとどのような戦いが展開できるかといえばヘビー級とフライ級のボクシングを見るようなものでありましょう。
ブルームバーグには「ギリシャ新首相が踊るのはサンバかタンゴか 急転換の公算も」とあります。サンバとはブラジルで2002年に大統領に就任したルラ氏が反資本主義から大統領就任後、市場主義に転換した柔軟姿勢を指します。一方のタンゴとはアルゼンチンが2001年にドルとのペッグ制を離脱し、ディフォルトに陥ったケースであります。 つまり、自国の主張を強硬に推し進めれば頓挫する、だから世の中の流れをよく観察し、味方ををつける方が大事である、という示唆でありましょう。
そのブルームバーグの記事ではギリシャがサンバになる可能性は5割としています。5割とはある意味、無責任で中途半端な予想の様にも思え、見出しのトーンとは若干違う気もしますが、この記事の意味するところは面白いとは思います。
ユーロを構成する国々にとって大切なのは和でありますが、その中心のテーブルに座っているのはドイツ・フランス・イタリア・オランダ・ベルギー・ルクセンブルクでしょうか? それらの共通点とは欧州共同体の創立メンバーが主体であり、旧フランク王国の流れであります。その歴史的流れをベースに考えればそれこそ、ローマ帝国時代までさかのぼりながら欧州支配の歴史が今でも脈々と続いているのであります。そこには力による支配関係があり、怠惰だから支配関係から逃れられるという奇妙な論理は成り立たないのであります。むしろ一昔前ならパニッシュメントがあったわけであります。
新首相のチプラス首相もユーロからの離脱など考えていないと言明していますがそれが現実的ではない選択肢だというのは十分わかっているという事でありましょう。つまり、今回の政変で起こり得るのはEUとECBからの融資条件をいかに改善し、緊縮具合を緩めるか、ここにすべてがあるかと思います。それ以上でもないし、それ以下でもない、という次元に立てば今回のギリシャ問題は前回とはまるで違うピクチャーとなると思っております。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2015年1月28日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。