キャノンがスウェーデンの世界最大の監視カメラ企業、アクシスを3300億円で買収するニュースはキャノンのビジネスを見続けてた人たちにとって「ようやく」という気持ちがあるでしょう。同社の手持ち資金が8600億円まで積みあがってアナリストあたりからは企業の成長という点で疑問符がついていたわけですから非常に良い会社をTOBできることになりました。
実は監視カメラは私は無限の成長の可能性があるとみています。もちろん、通常の防犯もあるのですが、道路に据え付けて取り締まりに使えるのです。
ここバンクーバーの主要な交差点にはあるカメラが設置されていて時々、フラッシュが閃光します。これは既に信号が変わっているにもかからわず交差点を通り抜ける車の違反者を取り締まる為であります。カメラは車後部のナンバープレートを読み取り、それが自動的に車の所有者を割り出し、所有者のところに違反切符が送られてくる仕組みです。すべて自動で行われるため、異議のある場合には申し出る必要があります。また、反則金を払わないとクルマの保険が更新できなくなります。
バンクーバー近郊の有料道路と有料橋。ここでもカメラは威力を発揮します。国を横断するハイウェイ1号線には数年前にかけ替えられた有料橋があるのですが、片側5車線の通行量に対応するには料金ブースはとても機能しません。そこに待ち構えるのは数十のカメラ。これが車のナンバープレートを読み取り、自動的に車の所有者に通行料3ドルが請求されるのです。こちらも支払いが滞れば車の保険が購入できなくなる仕組みが組み込まれています。
パトカーにはあるカメラが組み込まれています。それはパトカーのそばを走る車のプレートを読み込み、盗難車が通ればパトカーの中にあるパソコンがすぐさま反応し、犯人逮捕に役立てるのです。日本と違い、海外ではクルマの盗難はシリアスな問題です。あるいは容疑者が乗った車を探すのもこれは非常に威力を発揮するのです。
5-6年前、当社で管理する駐車場から最新型の最上級BMWが盗難されました。犯人は夜中、駐車場のゲートを破り、逃走したのです。しかし、パトカーのプレートリーディングシステムのおかげで3日後にはクルマが見つかりました。また2年前には当社のレンタカーが返却されず、盗難されました。この時も警察は犯人の行動範囲を絞り込み、ほぼ一日で車のありかを特定し、無事、車が戻ってきました。これらは全てカメラのおかげなのです。
そんなバンクーバーでは今、道路に更にカメラを設置するか検討が進んでいます。それはスピード違反の摘発カメラであります。仕組みは交差点の信号無視監視カメラと同じです。こんなカメラができればアクセルを踏み込むことができなくなってしまいますが、世界規模で普及するようなことがあればとてつもない数のカメラ需要が見込まれることになります。
世の中、カメラだらけで今後はその是非も当然議論されてくるでしょう。しかし、セキュリティ強化という観点は会社から個人まで皆同じインタレストを持っています。近いうちに各家庭にはいくつもの監視カメラがごく普通に設置され、スマホでモニターする時代がやってくるでしょう。そう考えるとキャノンの世界最大の監視カメラ企業を有り余るほどの手持ち資金で買収が出来たことは極めてプラスの材料となるはずです。
ところで日本の経営陣の中でもきっての国際派である御手洗会長の判断は立派ですが、今年80歳となるわけでキャノンもそろそろ経営のバトンタッチも考えなくてはいけない企業の一つではあります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
岡本裕明 ブログ外から見る日本 見られる日本人 2月14日付より