『朝日新聞』の社説を読んで驚いた。
『朝日新聞』は社説で、2022年度から実施される高校の学習指導要領の改訂案を「木に竹を接いだような内容」と厳しく批判している。
木に竹を接ぐとは、不統一、バラバラということだから、いったい何がそこまでおかしいのかと社説を読み進めていくと、『朝日新聞』らしい言い掛かりだった。拙著『「リベラル」という病』で描き出した「リベラル」の典型的な主張のように思われた。
社説によれば、新たに作られる「公共」という科目では、「自国を愛し、その平和と繁栄を図る大切さについて自覚を深める」との目的が定められ、 「地理歴史」の目標にも「日本国民としての自覚、我が国の国土や歴史に対する愛情」を深めることが明記されたという。
自国民に対する教育なのだから、自国を愛する態度を養うという姿勢は何らおかしなことではないと思うのが、常識というものだ。これらの目標の何を批判したいのか、不思議に思うが、『朝日新聞』は具体的には尖閣諸島に関する政府解釈を国民に押し付けるなと非難しているのだ。
社説では次のように説いている。
領土問題に関する書きぶりを見ても、たとえば「尖閣諸島は我が国の固有の領土であり、領土問題は存在しないことも扱うこと」などとなっている。
政府見解を知識として生徒に伝えることは大切だ。だが「これを正解として教え込め」という趣旨なら賛成できない。相手の主張やその根拠を知らなければ、対話も論争も成り立たない。他者と対話・協働して課題を解決する。それが新指導要領の理念ではなかったか。
『朝日新聞』の主張によれば、日本の公教育において、領土問題に関して、日本政府の解釈だけを正解として教えることに反対している。確かに『朝日新聞』がいうように、私も子供たちが、自国の見解だけでなく、相手国の主張や根拠を知ることも大切だと考えている。だが、その際には、相手国の主張の矛盾まで教え、日本側の主張の正当性を教えるべきだ。
仮に、『朝日新聞』の主張通り、領土問題に関して、日本政府の解釈のみを正解としてはならないということになれば、次のような事態が出現するはずだ。
ある試験で「尖閣諸島はどこの国に所属するか?」という単純な問題が出されたとき、朝日新聞の主張に従えば、「日本」だけを正解とするのではなく、「中国」、「台湾」までも正解に含めなければならないことになってくる。こんな出鱈目なことを国民は許すのだろうか。中国の主張を教え込むために日本の公教育が存在するのではない。
また、他にも気になる文章があった。
いま、政権批判や在日外国人の存在そのものを「反日」と決めつける風潮がはびこる。それだけに、日本の立場をひたすら強調する方向での記述の変更には、危うさを覚える。
政権を批判したから「反日」などと決めつけられるのだろうか?この社説でも明らかだが、日本の立場を貶めることを是とし、中国の主張を受け入れよといわんばかりの主張を繰り返すから『朝日新聞』は「反日」的だと非難されるのではないだろうか。
また、在日外国人の存在そのものを「反日」と決めつける風潮というものは、私には理解が出来ない。中国人も、台湾人も、その他の国々の知り合いもいるが、彼らのことを「反日」だなどと思ったことがない。政治的見解はそれぞれ分かれるが、国家が異なるのだから、その見解に相違があるのが当然だと思いながら付き合っている。
『朝日新聞』の主張どおり教育を行うことには断固反対だし、存在しない現象を存在するかのように騒ぎ立てる「オオカミ少年」のような論調にも違和感を覚える。
編集部より:この記事は政治学者・岩田温氏のブログ「岩田温の備忘録」2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は岩田温の備忘録をご覧ください。
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