【映画評】グレイテスト・ショーマン

渡 まち子
©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

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19世紀半ばのアメリカ。興行師のP・T・バーナムは、妻と二人の娘を幸せにすることを願い、さまざまなことに挑戦し、失敗と成功を繰り返していた。差別や偏見の中で生きていたオンリーワンの個性を持つ人々を集めて今までにないショーをヒットさせた彼はついに大成功するが、裕福になっても上流社会から認めてもらえないことに不満を持ち、美貌のオペラ歌手ジェニー・リンドのアメリカ公演を成功させることで、一流のプロモーターとして名士の仲間入りを果たす。一方、上流階級出身の興行師で、バーナムの若き相棒フィリップは、団長をまかされ、何とかショーを成功させようと懸命に取り組んでいた。だが、彼らの行く手にはすべてを失いかけない危険が待ち構えていた…。

©2017 Twentieth Century Fox Film Corporation

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実在した興行師P・T・バーナムの半生を描くミュージカル「グレイテスト・ショーマン」。芝居や音楽が特権階級のものだった時代に大衆向けのショービジネスの原点を築いた興行師フィニアス・テイラー・バーナムは、サーカス形式や、興行列車での巡業というスタイルの発案・確立などで知られ、映画「地上最大のショウ」(1952年)のモデルとなった人物だ。一方で、ホラ男、山師という評判もある多面的な男でもある。実際、フリークスとしてひっそりと生きていた人々を表舞台に押し上げたサーカスは、彼らに活躍の場を与えたが、同時に見世物にしたのも事実で、今も評価が分かれるところだ。だが映画は難しいドラマは潔く排除し、家族思いで上昇志向の強い男のサクセス・ストーリーとして、スピーディに展開するとびきりゴージャスなミュージカルとして、誰もが楽しめるエンタテインメントに仕上がっている。

何しろ、冒頭からさく裂する歌とダンスの圧巻のパフォーマンスのすべてに目と耳が釘付けだ。多芸多才なエンターテイナーのヒュー・ジャックマンと、古巣のミュージカルで水を得た魚のように生き生きしているザック・エフロンの二人は、キレキレのダンスと見事な歌を披露。他の出演者たちのパフォーマンスも魅力にあふれている。表層的なドラマの軽さに不満を感じても、ここまで豪華な歌とダンスを見せられれば満足感は得られるはずだ。ずっとバーナムに否定的だった評論家が、階級や人種の壁を取り除いたバーナムの功績を静かに評価する場面は、大衆芸術の真価を語っていた。主題歌「This is me(これが私)」に本作のメッセージのすべてがつまっている。
【65点】
(原題「THE GREATEST SHOWMAN」)
(アメリカ/マイケル・グレイシー監督/ヒュー・ジャックマン、ミシェル・ウィリアムズ、ザック・エフロン、他)
(ゴージャス度:★★★★★)


この記事は、映画ライター渡まち子氏のブログ「映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評」2018年2月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。