ども宇佐美です。
久々のブログ更新です。
まずは告知ですが、おときた先生とのサロンを密かに再会したので、ご興味ある方は初月は無料ですので期待せずに参加してみてください。基本的には月一でゲスト招いてオフラインイベントやるだけのローキーのサロンですが、一応コラムなんかも書いてます。先日のイベントでは紗倉まなさんを招きました。今後ともおとなしくやっていくつもりなのですが、私とおときた先生となるとどこかでこのサロンも炎上する予感がしますね。
さて森友学園問題に関係する文書を財務省が改変した問題についてですが、ある程度背景が見えてきたので思うところまとめておきたいと思います。まずこの問題を私自身がどう捉えているかということについてまとめておきます。
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①近畿財務局の森友学園の土地売却の手続き自体は、国土交通省が匙を投げた経緯や近隣地(野田中央公園、豊中給食センター)の売却価格・事情との比較から見ても大きな問題はなかった。ゴミの土壌処理費用は高く見積もり過ぎたかもしれないが、豊洲市場の健康に全く問題ないレベルの土壌汚染処理にあれほどこだわったマスメディアに殊更それを非難する資格はない。
②近畿局は籠池氏の政治家を使った要望を度々はねのけており、国有地売買の原則を守ってよく仕事をしていた。ゴミが出てきて大幅な値引きをせざるを得なくなったのは、以下の通り大阪航空局の無責任な対応の結果、近畿局が訴訟に巻き込まれる可能性が高くなったからであり、致し方ない。
(http://www5.sdp.or.jp/policy/policy/data/180312.pdf より)
③そういう意味では本件は「火のないところに煙が立った」案件であり、当然本省のキャリアがマスコミや政治の不当な非難から、地方局のノンキャリを守るべき案件だった。ところが財務省の一部キャリアは逆の選択をした。具体的には2017年2月の安倍首相の「私や妻が関与していれば総理・議員を辞める」という趣旨の軽率な答弁を受け、それにまさに”忖度”した形で、同3月に佐川理財局長の「価格提示はしていない」「交渉記録はない」という答弁ラインを作った。
(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/193/0095/19303150095008c.html より)
④この間準備作業として大規模な決裁文書の改変が2017年2月から行われたが、その後予想に反して財務省は森友学園問題について地検の取り調べを受けることになった。捜査の過程で大阪航空局側に保管されてる決裁文書と押収文書の内容が異なることに複数の者が気づき、これを何者かが朝日新聞にリークした。なお国交省が早い段階で改変に気づいても政府上層部に報告しなかったのは、おそらく財務省に対していわゆる筋悪案件を押し付けた負い目があったからと推測する。
⑤こうして朝日新聞はリークに基づいて一面報道し、実際に改変作業をした地方のノンキャリア職員は、組織からも守ってもらえず、公益通報という出口も失うことになった。このような追い詰められた環境で、職員の方は不幸にして自殺という道を選んでしまった。
⑥なお3年前に地方局が決裁文書から削除したとされるメモの内容は、本省理財局業務課の担当ベースの非公式な見解を決裁文書に残しているという意味でそもそも不適切であり、修正の意図自体は十分理解できる。ただし修正手続きが取られていないのは当然問題である。
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以上が私の認識です。私が声を大にして何度でもいいたいのは
本当の被害者は近畿局の現場のノンキャリである
ということです。彼らの仕事を公正に評価せずに政局に仕立て上げたマスコミも野党も、軽率な答弁をして問題を大きくした首相も、ノンキャリを捨て駒にした財務省のキャリアも全て悪い。そういう意味では今調子づいている一部のメディアや野党議員には心の底から辟易しています。もちろん文書改変は許されるものではありませんが、それは森友学園問題の売却経緯とは全く別の問題です。
さて話が逸れましたが、以上のような認識を踏まえて私がもうこのような事態を起こさぬように、今後各主体が考えるべき論点として以下の三つを挙げます。
①内閣人事局のあり方
(https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_kanbu_kanri.html より)
安倍政権では官邸が各省庁の幹部人事を全て掌握しており、その中核となっているのが内閣人事局です。幹部人事に関しては上図のように官邸への協議が必要不可欠となっており、事実上の任命権者となっています。このため各省幹部は官邸の顔色を強く伺うようになったことは否めず、今回の事案もその影響があった可能性は否めません。
この点「縦割りを廃すためには総理が各省幹部の人事を握るのは当たり前だ」という意見もあり、実際官邸の指揮能力はこれまでの政権に比べて格段に高まったと言われていますが、一般に議院内閣制の国では政権が変わっても官僚が変わらないため、官僚と政治家の関係性に距離を持たせることが人事制度の原則となっています。内閣人事局制度はまさにこの原則に逆行しており、むしろ大統領制の国に近いモデルで、我が国の行政組織においてこのような改革が本当に適切だったのか、改めてメリット・デメリットを踏まえて検討し直すことが求められているように思います。
②文書管理のあり方
文書による記録の保管と情報公開は民主主義の根幹であり、行政文書の大規模な改変は民主主義の屋台骨を揺るがすもので、早急な再発防止対策が求められます。
今回の文書改変の対象となったのは紙の決裁文書でした。他方私の経産省での経験上、電子決済では決裁文書の事後的な改変による隠蔽はログが明確に残るため至難の作業となります。その意味では電子決済システムの普及は文書改変対策として大いに有効なものと考えます。この点上表の通り、経産省と総務省を除けば電子決済の普及率はまだ低く、政府全体で早急に体制を見直すことが求められているように思います。
③リークに基づく報道のあり方
(http://www.jinji.go.jp/fukumu_choukai/shuhi.pdf より)
国家公務員には守秘義務がかけられており、その対象は「職務に関連して知り得たすべての秘密」を指すものとされ、基本的には国家公務員のリークは犯罪となります。そうした犯罪を根拠としたリーク報道は「犯罪の片棒を担いでいる」と言ってもいいでしょう。
他方でこうした守秘義務の例外として「公益通報」制度があります。公益通報制度は犯罪に加担させられた職員の告発を守るための制度であり、一番弱い末端の職員の味方になっている、といってもいいでしょう。第三者によるリークは、①犯罪行為なので今回の報道のように証拠の提示ができなくなり第三者の検証可能性を奪う、②そしてなによりも公益通報をする権利を有している職員の告発の機会を奪う、という大きな問題を抱えています。
前者の意味では私を含む多数の方々が「朝日新聞は証拠も出せないのか」と報道の真実性を疑ったわけですが、これ自体は極めて健全な反応で、私はなんら恥じることがないと思います。むしろ証拠も出さない報道を「朝日新聞」という看板だけで全て信じろというのが無理な話ですし、今回の件で外部が萎縮しては今後「第四の権力」である報道機関の誤報を検証することができなくなってしまいそれはそれで民主主義の根本を揺るがすことになるでしょう。他方で後者はより深刻で、今回のリーク報道は職員の自殺の直接の引き金となった可能性があることを報道関係者も私たちも忘れてはならないとおもいます。率直に言って私は今回の報道を「朝日新聞の大勝利」というように評価している方々の感性を理解できません。そもそもこの問題は大阪地検が追っていた案件で、遅かれ早かれ表面化した可能性が高い問題でもありますし。
以上長々となりましたが、私なりに今回の一連の問題について思うところをまとめさせていただきました。今後はこの問題について表ではあまり積極的に発言しないようにしたいと思います。
最後になりますが、今回自殺された近畿財務局の職員の方のご冥福をお祈りいたします。
ではでは今回はこの辺で。
*追記:
以下の記事によると現実には弁護士、業者ぐるみでゴミは過大に申告されており、近畿局は籠池氏に詐欺にあったことになる。その意味では近畿局は被害者であるとともに、詐欺を見抜けなかったことに問題はあるかもしれない。ただ個人的には給食センターの事情や地歴を考えると、近畿局は籠池氏の主張を十分に信じるに足る状況はあったように思う。
編集部より:このブログは「宇佐美典也のblog」2018年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は宇佐美典也のblogをご覧ください。