民主主義国家の行政機関として、絶対にあってはならない問題が起きました。国有地売却をめぐり、財務省で14もの決裁文書が書き換えられるという事態に、私自身も一報を聞いたときは、あまりの衝撃に言葉を失ってしまいました。
書き換えられた内容自体はこれまでの議論の前提を覆すようなものではありません。
しかし、行政機関が国会へ提出した文章と原本が異なるということは、行政府が立法府(国民の代表組織)を欺いたということであり、行政に対する国民の信頼を大きく損なうもので、与野党関係なく大変大きな問題です。私自身も現在政務官として行政機関に所属するものとして、深刻に受け止めています。
なぜ改竄が行われたのか。どうすれば再発を防ぐことができるのか。
国会ですべき議論と検察の捜査に任せる部分、それぞれをしっかり意識して丁寧に対応を進めることが重要だと考えています。
法整備や電子化を進めていた中での不祥事
1980年代におきた薬害エイズの問題をめぐって、1996年に厚生省で一度は「存在しない」とされた資料が担当部署のロッカーから「発見」されたことがありました。医師や製薬会社、そして厚生省の職員が業務上過失致死傷罪に問われる事件に発展しましたが、当時、中学生だった私も衝撃を受けた記憶があります。
1930年代に公文書施設ができたアメリカに比べ、日本の公文書管理の取り組みは遅れてきました。国立公文書館の開設は1971年。前述の厚生省の問題をきっかけに情報公開法が制定されたのは2001年と、21世紀に入ってからのことでした。それでも年金記録の紛失問題などがおきて、福田内閣時代に公文書管理の法制化を進め、麻生内閣時代の2009年に成立。その施行は2011年と最近のことでした。
一方、霞が関の実務レベルでも決裁文書の電子化を急いできました。電子化されることでペーパーレス化や災害時の業務継続が円滑になるだけでなく、一度決裁された文書を手直しすればデータとして残ります。
こちらの政府サイトのPDFにも記載されているように、霞が関全体で2013年度に55%だった電子化の比率は、2016年度には91%にまで引き上げられています。
ただし、省庁別に電子化の取り組みのスピードの格差はありました。「電子政府」の旗振り役だった総務省と経産省は2013年度の段階で9割以上の電子化を進めていましたが、財務省は13年度時点で3.4%にとどまっていました。その後、47.6%→83.5%→91.4%と、電子化の取り組み自体は着実に進めてきましたが、地方の出先機関まで徹底ができていなかったのか、今後の検証につなげたいところです。
テクノロジーによる信頼回復
財務省だけでなく、行政機関全体に対する不信感をどう払拭し、再発を防ぐのかについては、私自身は、テクノロジーによるアプローチをさらに強化するべきだと考えます。
専門家の方に今後意見を聞いてみたいと思いますが、ブロックチェーンの仕組みを導入することで厳正な記録保存に活用することができないか、検討してみる価値は大いにあるのではないでしょうか。すでにイギリスでは年金分配システムへのブロックチェーン導入が進められているとのことで、日本でも公文書管理の新しい仕組みづくりに向けて参考になりそうです。
テクノロジー実装による公文書管理の改革については、引き続き情報を収集し、実現可能性を追求したいと思います。
編集部より:この記事は、総務政務官、衆議院議員の小林史明氏(広島7区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2018年3月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は小林ふみあきオフィシャルブログをご覧ください。