コールセンター派遣を「底辺職w」とバカにする人へ反論

黒坂 岳央

こんにちは!肥後庵の黒坂です 。

ネットを巡回していると、コールセンター派遣の仕事を激しく叩いている記事を 発見しました。

「テレオペレーターなんて専門性も将来性のない仕事だ」

「コールセンターはいつまでもモラトリアムをやる人たちの吹き溜まり」

といった具合です。一つ一つ記事を読んでみると…確かに否定できない部分もあります。ですが私は高校卒業後、しばらくニートを経て大阪にある某携帯電話会社のコールセンターで5年間派遣社員 をしていた経験があり、お世話になったコールセンター業をバカにするのを見るとなんとも悲しくなってしまいます。

さて、この批判ですが「正社員で責任を持ってキャリアを積み上げ、市場価値を高めていくべき」という一方向から見たものでしかありません。実はコールセンターで派遣社員をするワークスタイルに魅力を感じる人も、一部では存在するのです。

今回は過去にコールセンターで実際に働いた経験を踏まえてお話したいと思います。

コールセンターには夢追い人、自由人がとても多い

先程お話をしたサイトでは、「コールセンターの派遣社員はまるでフリーター製造工場のようだ。働いている人たちはいい年をしていつまでもコールセンター派遣を続けている!」と 派遣社員を糾弾していました。しかし、これは逆を言えば「コールセンター派遣は、夢追い人や自由に人生を送りたい人たち向けの仕事」ということにならないでしょうか?

夢を追うというのは、例えば働きながらライブ活動に励んだり、声優や俳優を目指したりする人たちのことです。また、自由に生きるというのは、「稼ぐ→海外旅行→稼ぐ→海外旅行」みたいに会社にしばられずに自由を謳歌するライフスタイルです 。この他にWワークや、時給の高い学生バイトとしての受け皿としてもコールセンターは機能します。夢追い人、自由人は確かに一つの会社で自分の専門分野を極め、日々仕事で研鑽していく、という生き方ではありません。しかし、「夢を追いかけ、自由に生きていくことを何より優先したい!」という人たちにとっては、コールセンターはありがたい存在です。

夢追い人、自由人がコールセンター派遣以外で生計を立てるとなると結構難しいのです。毎日定時で帰れるような正社員を探すのはなかなか大変ですし、年に何回も海外に出かけてしまうことを許してくれる会社は多くないでしょう。しかし、コールセンターの派遣社員は給料がそこそこ高く、都市圏であれば1,000円以上(東京では2,000円近くも可能)は確実にもらえます。また、毎日きっちり確実に定時で帰れる職場が多いですから、業務外でスキルを磨く事に時間を取られずに済みますので、そうした人たちにとってはまさにうってつけなわけです。

私が働いていたところでは実際、バンドマンや旅行に命をかける人、声優やパティシエ、アナウンサーや俳優を目指す人に加えて、起業して経営者をしながら、ビジネスが軌道に乗るまでの副業にしている人なんかもいたりして、かなり驚かされたものです。

「コールセンターでダラダラ働くと、夢追い人や自由人になってしまう」という人がいますが、私に言わせればそれは「逆」です。「夢を追いながらやれる仕事がコールセンター」なのです。体も疲れませんし、ルーチンワークだからこそ極端な疲労がなく、業務終了後にプライベートを楽しんだり、夢を追いかけたりできるわけです。ちなみに私が働いていたコールセンターでは、プロの声優や俳優になって夢を叶えた人たちがいました。まさにコールセンターで生計を立てながら夢を叶えることが出来たわけです。

正社員という立場でキャリアを追求する人たちからすると、コールセンター派遣はNGに思えるかもしれません。しかし、人には色々な事情や価値観がありますから、「コールセンター派遣というワークスタイルは都合が良い」、という人もいるということです。

コールセンターに対するマイナスイメージは正しくない

世間ではコールセンターで働くことに マイナスイメージを持っている人がいます。

中でも多いのは「クレーマー対応に精神が病む」と言うものです。確かにクレーム対応が好きだという人は世の中にいないでしょう。しかし、職場を選べばそんなことはありません。事実、私が働いていた携帯電話会社では携帯の操作方法などの問い合わせが多く、無事に解決すると非常に高い確率で「ありがとう。助かりました」とお礼を言われることが多かったです。クライアントはお客様から「ありがとう」といわれる件数をカウントし、オペレーター同士競い合わせて成績が良い人は時給アップ、なんてのもありましたね。激しいクレームだけがやたらに目立つから、「コールセンターはクレームで精神を病む」みたいに言われるわけで、実際にそんなクレームの多いところを選ばなければ良いだけだと思います。

そして「ルーチンワークでスキルがつかない」という批判は、確かにその通りかもしれません。しかし、コールセンターには、色んな事情や価値観を持った人がいます。夢追い人、自由人にとってはコールセンターを「サクッと稼ぐツール」みたいな位置づけで考えている人が存在し、そうした人にとっては毎日きっちり定時に仕事が終わり、マニュアル完備でルーチンワークという環境はとてもありがたいものです。

世間で言われている「コールセンターはだめ」という意見は「正社員としてスキルアップをするべき」という価値観から見たイメージに過ぎず 、実際にはそんなことはないと私は思っています。

コールセンター派遣は週末起業家にこそおすすめ

私自身、コールセンターにはずいぶん助けられたものです。

大学に入ることを決意してからは学費を稼ぎつつ、就業後に大学受験勉強を毎日していました。アメリカ留学後に上京して生活をするための資金作りが出来たのも、コールセンターのおかげです。特に学生時代は勉強をすることを第一優先にしていたので、体力を消耗したり、従業員同士の人間関係に気を使う一般的なバイトをやっていたらもっと大変だっただろうと思います。

もしも仮に、今の私がニート、フリーターの状態として「これから起死回生を狙うならどうする?」と問われればこう答えるでしょう。「コールセンター派遣で生活費を稼ぎながら、業務外の時間を使って起業する」と。起業後はどんなビジネスでも収入が安定するまで時間がかかりますから、起業した後もビジネスが軌道に乗るまで、コールセンターで生計を立てる道を取ると思います。起業するということは途方もない時間とエネルギーを投入する必要がありますから、定時に帰れて体も疲れないコールセンター派遣は、週末起業をする上ではかなりおすすめです。

今は面白くてたまらない、全く別の仕事についていますから、「今からコールセンターをやるか?」と言われたら「No」というのが答えです。しかし、コールセンターにずいぶん助けられてきたので、糾弾する人たちへ一言反論したくなってしまいました。

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。