あんなものだろう、などと軽く片付けない方がいい。
自民党はあの証人喚問で着実にポイントを稼いでいるのに、野党の方々は空振りしてしまった、というのが第三者的に見た場合の評価だろう。
ポイントを稼いだ人がもう一人いる。
証人喚問の場から逃げなかった佐川氏本人である。
議院証言法の証言拒否権を実に有効に利用して、肝腎のポイントについては完黙しながら、しかし結構饒舌に語っていた。
刑事訴追の虞があるから証言を差し控えさせていただきます、というのは、ある種の魔法の言葉で、水戸黄門の印籠のような作用をする。
今日の証人喚問に立った方々は、衆参を問わずそれぞれに与野党の精鋭と目されるいわゆる真面目な方々だったろうから、議院証言法を持ち出されてしまうとまず金縛りにあう。
まあ、自民党にとってはそれなりの成果があったので期待どおり、というところだろうが、大方の人にとっては、特に得るものがなかったという意味で予想どおりだった、というところかも知れない。
財務省でまずまずの出世コースを歩んできた佐川氏は、抜群の才能の持ち主とまでは言えないが、こういう場面での証人喚問を無難に切り抜ける技術と能力を持った能吏の一人だった、というくらいのことは言っていいかもしれない。
伝家の宝刀があるから、何を聞かれても動じない。
大方の国民が佐川氏本人の口から聞きたい本当のことはついに明らかにされなかった、と見るべきだろう。
佐川氏はよくやった、と評価する人が現れるかも知れない。
自民党もよくやった、と評価する人が現れるかも知れない。
時間の制限がある国会の証人喚問では、本当のことを聞き出すことは実に難しい。
多分、議院証言法にそれなりの欠陥があるからだと思うが、日本の国会での証人喚問は大体はあんなもので終わってしまう。しかし、国会が虚仮にされた、という大事なことを忘れてしまったのでは、今日の証人喚問は虚しかった、というだけの話で終わってしまう。
与野党を問わず、今日の証人喚問をこれからの国会審議にどう活かしていくか、ということを考えた方がいいだろう。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2018年3月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。