世界に約12億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会の総本山があるバチカン市国はパレスチナの国家承認に踏み込むことを決定し、パレスチナ交渉団との最終文書(基本協定)の作成をこのほど完了した。
バチカンとパレスチナ両国作業グループが13日明らかにしたところによると、「最終的な文書作成で満足いく進展があった。文書は調印を待つだけだ。正式の調印式は近いうちに行われるだろう」という。
バチカン国務省外務局のアントワン・ カミレリ次官補はバチカン日刊紙オッセルバトーレ・ロマーノの14日付のインタビューの中で、「最終文書は、通常のバチカンの外交文書と同様だ。パレスチナ内のローマ・カトリック教会の地位、信仰の自由の保証などが記述されている。その他、パレスチナとイスラエルの2国家案の枠組みでの和平実現を支持する旨が明記されている」と説明している。
バチカンは2013年末以来、非公式だがパレスチナを国家と呼んできたが、ここにきて正式に国家承認することになったわけだ。バチカンとパレスチナ解放戦線(PLO)は2000年、基本原則に関する協定を締結し、04年にはその内容を具体化するために委員会設置を決定した。そして、前法王べネディクト16世が2009年、ベツレヘムを訪問し、バチカンとパレスチナ間の関係促進で一致した経緯がある。
バチカンのパレスチナ国家承認というニュースが流れると、イスラエル外務省は、「バチカンの決定に失望した」と表明。一方、パレスチナ自治政府側は、「平和と公平の実現に貢献する決定だ」と高く評価している。
フランシスコ法王は昨年6月8日、中東和平の実現のために、「信仰の祖」アブラハムから派生したユダヤ教、キリスト教、そしてイスラム教の3宗派代表として、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領、そしてイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長をバチカンに招き、祈祷会を行うなど、中東和平に努力している。
バチカンからの情報によると、パレスチナ自治政府のアッバス議長は16日、ローマ入りしてフランシスコ法王を謁見するという。同議長は17日、サン・ピエトロ広場で挙行されるパレスチナ出身の2人の修道女の列聖式に参加する予定だ。
なお、国連総会は12年11月29日、パレスチナを「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を採択したが、パレスチナを国家承認している国は既に130カ国を超える。パレスチナは2011年10月末、パリに本部を置くユネスコ(国連教育科学文化機関)に加盟したが、今年4月1日には国際刑事裁判所(ICC)に正式に加盟するなど、国家承認国との関係を強化し、パレスチナの国際社会での地位向上に努力している。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2015年5月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。