男はなぜ「オレって昔はワルでさ」みたいな自慢をするの?

尾藤 克之

画像は書籍書影(筆者撮影)

ビジネス心理学をご存知だろうか。よく知られているものに、アサーティブ、フレーミング、バーナム効果、コールドリーディングなどがある。心理学は「人問心理を解き明かすもの」だが、知っているだけでは役にたたない。大事な場面で、「使える」という実践的なレベルにまで高めておかないと、中途半端な知識で終わってしまう。

今回は『モテすぎて中毒になる男女の心理学』(すばる舎)を紹介したい。著者は、神岡真司さん、累計140万部を超すビジネス心理学の専門家として知られている。主要著書としては、30万部ベストセラー『ヤバい心理学』(日文新書)がある。

男性がオラオラするメカニズム

埼玉県浦和に本社がある、埼玉自動車販売(仮名)は中古車ディラーである。本店の穂積店長(23歳)は地元の高校を卒業して同社に入社した。4月に念願の店長に昇格してやる気に燃えている。先週、中途入社の吉田君が入社2ヶ月目にしてようやく売上をあげた。高級車なので利益率が高く周囲は羨望の眼差しだ。しかし穂積店長の評価は厳しい。

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穂積店長「なんだ、この売上は。こんなゴミみたいな売上で調子に乗るなよ!」

吉田君「利益率が高い高級車をほぼ即決で決めたのですから、その言い方は納得できません。しかも、この四半期で同モデルを売ったのは僕だけです!」

穂積店長「ハァ?オレを誰だと思っている。高校の頃、この辺りじゃ泣く子も黙る穂積さんって言われてたんだ。オレは『番長』だったんだぞ!高校の半分はしめていたんだぞ!タイマンだって誰にも負けたことはないんだぞ!」

吉田君「ばばばんちょーですか?スゴいっすね!」
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男であれば、このような会話を耳にしたことは多いはずだ。しかし、なぜ、男はくだらない「ヤンチャ自慢」をしたがるのだろうか。

「男性は、獲物をどれだけ獲得したかで、序列が決まる原始時代のメカニズムを引きずっています。女性に対しても、ライバル心を燃やしています。ゆえに、美人の女性を従えていると自信がもて、他の男たちより優越感も抱けます。そのために、美人を連れた男性を目にすると、無意識に『負けた』という劣等感も刺激されます。」(神岡さん)

「こうした『男性脳』は、もとより荒々しく粗野で、喧嘩に強そうな男になることを夢想しています。男性が、西部劇や格闘シーンのあるアクション映画に魅了されるのも、『強さ』への信奉があるからに他なりません。」(同)

そのため、女性に対しても勘違いを起こしやすい。少なくとも女性は男性と思考が異なるので、ヤンチャであることがプラスにはならない。

「女性は、強く、猛々しい、精悍な男に憧れるものという勘違いです。男性が女性の前で『昔はワルだった』『学生時代は不良だった』『喧嘩が強かった』『暴走族でパトカーとバトルを繰り返した』などと、昔を振り返ってヤンチャ自慢をするのも『強さ』への憧憬がベースにあるからです。このように男性は単純で、とても幼稚なのです。」(神岡さん)

「強さのアピールをはき違えた男性は、女性の前でも『オラオラ系』を出せば、女性の気を惹けると考えてしまう傾向にあるわけです。男性の勘違いをそのままにしておくと厄介です。早く大人の紳士へと脱皮させておかないと大変なことになります。」(同)

「知的で紳士的な男性」に改造せよ

「女性が好きな男性は、粗野で猛々しい男ではありません。清潔感があり、女性を守る気概に満ちたジェントルマンが、理想の男性像だからです。共感思考の『女性脳』は、好戦的なタイプの単純な男性よりも、知性と教養に満ちた男性を好みます。現代では、こういうタイプが、経済的基盤の裏付けさえも感じさせられるからです。」(神岡さん)

「知的で紳士的な男性に改造するには、男性の喜ぶ言葉をチェンジさせていくことが必要です。ヤンチャ自慢を『昔はイキがってたのね』『へーただのガキだったのね』とけなしてはいけません。プライドが傷つきます。『ふーん、すごかったんだ』『腕っぷしに自信あったのね』などと、ほどほどに持ち上げればいいのです。」(同)

そして、最終的には、相手を自分の求める方向性に誘導したい時に使う『ラベリング効果』をつかうことで相手の行動は変わってくる。相手は、ホメられた部分を意識と無意識に浸透させて、望ましい人物像に知らず知らずに近づきはじめる。

本書は、男女の関係に特化した心理テクニックが紹介されている。 恋愛、夫婦問題、仕事のベースも、すべては人間関係によるもの。面倒な異性を黙らせ、社内で評価されるには心理学を理解しておきたい。心当たりのある方には早めの処方をおすすめする。

尾藤克之
コラムニスト

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即効!成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)