清原さんへの職務質問 ⁉︎ 警察は再考して欲しい!

田中 紀子

昨日夜遅く、驚くべきニュースが入ってきました。

9月11日に清原和博さんが歌舞伎町で職務質問され、パトカーで警察署まで連行、尿検査までされていたというのです。
もちろん尿検査後は無罪放免になったのですが、この記事を読み私なんぞは怒り心頭です。

清原和博氏「使ってない!」 歌舞伎町でパトカー連行目撃証言(NEWSポストセブンより)

この記事によると、清原さんが歌舞伎町で馴染みのお店でお食事をして出てきたところを、警察が職務質問をかけたというのです。糖尿病治療でインシュリン注射を打っている清原さんの注射痕が、半袖Tシャツからみえていたので、それが疑われたのかもしれない….と綴られています。

この状況が真実だとしたら、警察にはあきれるとしか言いようがありません。

まず「警察官職務執行法」をご覧頂ければ分かりますが、

法律の目的として、第一条第二項に

この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、
いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。

と書かれています。ただ食事から出てきた人を、いきなり職務質問にかけることを濫用と呼ばず何と呼ぶのでしょうか?
まるで戦時中の特高のようです。

そしてこの記事の通り、糖尿病の注射痕が腕にあってそれを疑われたとしたら、この警察官は薬物事犯の勉強をしていないのか?と疑ってしまいます。考えてもみて下さい、万が一清原さんが再犯していたなら、注射痕のある腕を堂々と見せながら歩くでしょうか?

これがですよ真夏のとても暑い日に、一人だけ長袖のシャツを着ていた….というのならまだ分かりますよ。
こんなこと少し考えれば素人でも分かることではないでしょうか?
警察官なら当然その辺の薬物事犯の行動特徴を学ぶはずですよね。

また歌舞伎町を歩いていただけで疑われるようなら、新宿区は歌舞伎町改善プロフラムを色々とやっていますが、まだまだ効果が不十分だということですよね。行政の怠慢、努力不足以外の何ものでもないと思います。

さて今回の件は、清原さん一人の問題に留まらず、依存症からの回復に取り組む、当事者・家族である我々にも大きな衝撃を与えました。

薬物依存症という病気から回復するには、病気から回復すれば社会復帰できるという良いイメージが持てること、実際、そういう人達を多く輩出して、希望が継続するるようにしていくこと、これがとても重要です。

ところが回復途上の一番苦しい時に、「前科者」扱いをされ、一度でも失敗したものは二度と信用されない、「再起」などと言う言葉は信じてもらえないという、スティグマを強化してしまうような扱いは、回復への意欲を失いかねません。

清原さんは私たち依存症者にとって特別な意味を持つ人です。

有名人でこれだけ回復途上の苦しさや、道のりの困難さをを吐露してくれた方など、これまで一人としていませんでした。
皆さん、なかったことのようにそのことには一切触れないか、「家族のために頑張ります!」といった、綺麗事しか言いません。田代まさしさんが唯一ダルクさんに繋がり回復された後、発信されるようになった位ではないでしょうか。

清原さんは有名人にしては珍しく、回復する姿をかっこつけずに見せてくれる方です。
清原さんの中にも、まだまだ葛藤や矛盾を抱えていらっしゃるようですが、それらを書籍や雑誌やテレビのインタビュー記事などで、表現してくれています。私たちは、そんな清原さんの苦しみと努力を精一杯応援していると共に、その清原さんの姿こそが、回復途上にある我々のような人間の助けになっています。

警察の目的の一つには、再犯防止があるはずです。
そして薬物事犯の再犯防止には、何よりも依存症からの回復が重要であることは、
もう十分理解されているはずです。

有名人である清原さんが、ただ単に前科があるだけで、衆人環視の前で恥をかかされるようなことがあれば、私たちに依存症者やその家族にとって「やっぱりやっても無駄だ…」と、意欲が失われていってしまいます。

この職務質問は果たして適切であったのか?
警察内部でキチンと検討会を開き、再考して欲しいと願います。

清原和博 告白
清原 和博
文藝春秋
2018-07-27

編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年9月21日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。