沖縄知事選、LINEの選挙フル活用が当たり前に

新田 哲史

沖縄県知事選(30日投開票)が、最終週に入る。序盤は、玉城デニー氏が佐喜真淳氏をリードしていると伝えられたが、共同通信は、この土日の電話調査と取材結果を総合的に判断し、情勢は「互角」と速報した。一方、朝日新聞の情勢報道では、引き続き玉城氏先行と伝えられているが、佐喜真氏については「激しく追っている」と分析。(追記:9:20  その後、取材を進めたところ「玉城氏先行、佐喜真氏追撃」の構図が確認)。

さて、きょう夜に沖縄に入り、今週は現地取材をする予定だが、ここまで両陣営のネット発信をみていて印象に残ったのが、LINEの選挙活用だ。正確にいうと、個人向けLINEではなく、ビジネス向けアカウント「LINE@」の活用になるのだが、2年前の都知事選や参院選のときと比べても、大型選挙でのLINE活用が当たり前になったことを痛感する。

玉城氏、佐喜真氏のLINE@より:編集部

今回の選挙戦では、玉城、佐喜真両陣営とも立候補に名乗りを上げ、ツイッターなどSNSの整備を進める過程で、LINE@を開設していた。先に立候補を表明した佐喜真氏のほうがLINEも先行していたと思うが、登録者数(24日午前1時時点)は佐喜真氏が6508人、玉城氏が5373人。両陣営とも積極的に活用。何時にどこで演説するか翌日のスケジュールはもちろん、インフォグラフィックを使った政策アピール、動画の配信などを行っている。

振り返れば、都知事選のときは、急な選挙だったこともあり、小池百合子氏、増田寛也氏、鳥越俊太郎氏の有力3候補のいずれもLINEは使っていなかった。ただし、その直前に行われた参院選の東京選挙区(定数6)で三宅洋平氏がLINEを駆使。落選したものの、25万票を獲得した裏で支持者や音楽関係者らの間でチェーンメール状態で動画リンクが出回っていたことが選挙関係者の間で話題になり、「LINE選挙」のポテンシャルに注目が集まった(TOKYO MX「モーニングCROSS」で過去に解説)。そして翌年の都議選、衆院選で若い候補者らを中心に活用する動きが増えていたが、今回の沖縄知事選のように、全国的な注目度が高く、事実上の一騎打ちとなる大型選挙でフル活用するようになった。

クリックすると動画に飛びます

ネット選挙解禁当初から選挙戦の裏方を務めていた筆者だが、LINEの活用可能性について当初はイメージが沸きづらかった。韓国の選挙ではLINEと同じようなチャットアプリ、カカオトークを活用していたから、可能性は排除していなかったものの、TwitterやFacebookと異なり、外に拡散するものではない、インナーコミュニケーションのツールであるLINEをどう使うか、思い当たらなかったのだ。2014年都知事選で、ネット起業家の家入一真氏を支援した際、彼のカリスマ性に惹かれた有能なITエンジニアたちが結集したが、それでも当時はLINEの本格活用には至らなかった。

しかし、よく考えてみればLINEは、内に閉じているだけに、誰を支援しているとか、おおっぴらに言わなくてもこっそり親しい友人たちに支持候補を打ち明け、「おすすめ」をクリックしてもらい、支持を呼びかけるなど「水平展開」が期待できる。三宅氏の場合がまさにその横展開が活発に増えていったケースであり、LINEでつながるコミュニティーのインフルエンサーの誰かに拡散してもらえば、広がる可能性はある。

LINE@の活用が増えた背景としては、若年層や女性を中心にFacebook離れが取りざたされるなど、SNSの利用動向の変化も大きいだろう。LINEは、パソコンを使わない中高年の女性でも使いこなしている。投票率の高い世代との親和性は意外にあるかもしれない。

なお、選挙や政治の現場を見てきた経験からの仮説だが、公明党の支持母体、創価学会員が若い人を中心に選挙戦でのtwitterなどの活用が積極的なことを考えると、彼らがLINEもうまく使っている可能性は考えられる。自民党の首都圏の地方議員が以前、「自民党の支持基盤は高齢化していることもあり、草の根的なSNSの活用は学会に遅れをとっている」と指摘していたことがある。学会関係者との付き合いが最近ないので、詳しいことはわからないが、中核である婦人部のおばちゃんたちが、学会員以外の友達からの支持(フレンド票)獲得の武器に、日頃愛用しているLINEのネットワークを活用していることは十分考えられる。(学会選挙の内部事情に詳しい方、誰か教えてくだされば幸いです)。

LINE選挙の成否という観点から、このあとどんな選挙結果になるのか。事後に裏話も出てくるだろうから、このあたりは沖縄の取材でも探ってみたいところだ。