マーケティングのなかに市場調査という分野が存在します。市場調査では多様なマーケットの調査、企業調査、市場分析などをおこないます。その多くは、フィールドサーベイという手法がベースです。
●市場規模の算出方法
シンクタンクが発表する市場規模。市場規模算出にはいくつかの方法があります。例えば、ドラッグストアの市場規模を算出しようとしたら、業界最大手のマツモトキヨシの売上高が、485,512百万円(2015年3月期)であることが分かりました。他の業界新聞などの情報を見ると、同社の市場におけるシェアは約8%程度とあります。
<基礎情報>
・マツキヨの売上高=485,512百万円
・マツモトキヨシの市場シェア=約8%
485,512百万円×12.5倍(8%/100)=6兆689億円
このケースではドラッグストアの市場規模を、売上高から市場シェアを割ることで算出しました。実際に、数社のシンクタンクの調査会社のレポートを見たところ、市場規模は6~7兆円前後の数値の発表が多かったからの外してはいないのだと思います。業界団体の日本チェーンドラッグストア協会(JACDS )は6兆97億円と発表しています。
ところが、群雄割拠の市場であることや、淘汰が厳しい市場や付帯事項を踏まえれば6兆円にも満たない可能性もあります。メーカー出荷ベース、並行輸入品、返品されたものの再委託もあるでしょう。ところがコンサルティング会社やシンクタンクが発表するマーケット情報は推測で成り立っていますから確かめる術はありません。
●結局、市場規模は誰にも分からない
先ほどのマツモトキヨシの例では、同社の売上高や元々の市場規模が公表されていますからマーケット情報を精査することは容易ですが基礎情報がない場合はどうすれば良いのでしょうか。
基礎情報がない場合には、ドラッグストア大手数社にインタビュー取材を申し込みます。マツモトキヨシ、サンドラッグ、スギホールディングス、ツルハホールディングスなど大手の商品開発部、購買部、マーケティング部などにインタビューをすれば、実務的な話しが聞けるものです。
「A社はコンビニエンスストアで売上を伸ばしているらしい。ここ3カ月で3倍納入している」「N社は並行輸入品を扱うことで価格を廉価に抑えている。先月は北米から100コンテナ輸入している」など、様々な情報を収集して整理すれば、当該市場のイメージはつくものです。
●メイキングに気をつけよう
コンサルやシンクタンクは、プロジェクトベースで動くことが基本です。そして上位ポジションの人が仕事を受注してきます。しかし売上の悪い人は筋の悪い仕事(利益率が低い仕事)を受注してくる傾向が強くなります。
例えば、上場企業の役員へのインタビュー取材、医師相手のインタビュー取材などは難解な仕事です。そのサンプルを100件集めるとしたら@3~5万円程度の謝礼は必要になります。ところが、売上の悪い人は、見せ掛けの売り上げが欲しいため、@1万円とかグロスで100万円とか、あり得ない金額で受注してきます。外注もできない金額ですから、最初から部下に丸投げです。
このような時に、実施されるのがメイキング(実査をせず自分で回答をつくること)です。情報収集が簡単ではありませんから相当数のメイキングが必要です。マーケティング調査を依頼する際には、そうならないためにも、調査票の原本、取材対象者の名刺などは報告時に一緒に提出してもらったほうが良いでしょう。また訪問面接調査(面接取材)ではその傾向が強まります。
尾藤克之
経営コンサルタント