従業員を追い込むなんて許せない!と思った時に読む話 --- 城 繁幸

今週のメルマガの前半部の紹介です。先日、ある社労士センセイのブログ上での発言が波紋を呼びました。
(元記事は削除済みなので興味のある方はJcast参照)

非情に嘆かわしいことですね。労働者は人間です。人間が粗大ごみみたくぞんざいに扱われるようなことはあってはなりません。ということで、今回は、どうすれば可哀想な労働者の皆さんを企業の追い込みから守ることが出来るのか、そして、どうすれば某社労士センセイのような方をやっつけることが出来るのかをまとめてみたいと思います。

・従業員を追い込まない会社なんてない

さて、その前に、まず大事な事実を一つ確認しておきましょう。それは、それなりの規模の日本企業なら、どの会社でも大なり小なり従業員に追い込みかけて辞めさせる仕組みは存在するということです。今までは幸運にもやったことないという企業はあるかもしれませんが、必要が生じれば躊躇なくやるはずです。

なぜ?だって終身雇用だから。会社都合でクビにするのが事実上不可能な以上、「こんな会社ヤメてやる!」という精神状態に追い込むのは仕方ないことですね。

たとえば追い出し部屋なんて典型ですね。もちろん追い出し部屋なんて名乗ってませんが、多くの大企業にある「人材開発センター」とか「キャリア支援室」みたいな“前向き”な名前のよくわかんない部署がそれです。社内で余った人たち、辞めてほしい人たちを集めて、研修や雑用をいろいろやらせるわけです。

というと「楽な仕事で給料もらえるんだからラッキー♪」なんていう小学生がたまにいますけど、逆ですね。組織とのつながりや前向きなビジョンがないと、人間は必ず壊れます。ほら、よく「バイトで入った山パンのラインがすげえきつい」みたいな話、あるでしょ?あれは分業化された単純作業の繰り返しでは組織の中での役割やビジョンがぜんぜん得られないからです。まあそういうのが逆に合ってるという人もいますけど、少なくとも大企業に入っているような人は、半年持たないですね。

いくつか、筆者が知っているケースもお話ししましょう。
ある大手企業は、いらなくなった従業員を窓の無い倉庫に集めて、大昔の製品の紙のマニュアルをずーっと端末に手入力させていました。そんなの外注に出せよとか、そもそもそんな必要性あるのかとか疑問に思う人は多いでしょうが、明らかに意味の無いとわかる仕事をやらせることに意味があるわけです。100人ほど集めてスタートし、半年以内に無事に全員エグジットしていただけたとのこと。

それから別のメーカーでは、そうした人たちに工場の空き地の草むしりをやらせてましたね。田舎だから数か月たつとすぐにまた草が生えてくるわけです。で、それを延々むしらせるわけです。まさに「穴掘って今度はそれを埋める仕事を延々やらせる」みたいな話ですね。

そこは一応半年くらいたっても最後に一人残ってたそうですが、精神的にボロボロな状態で、最後は泣き落とし専門の人事部長に「俺、もうお前のそんな姿見てられないよ。なあ、そろそろ新しい人生、前向きに考えてみないか?」みたいなこと言われて落とされたそうです。

最近だと、リストラ対象者にオフィス備品の補充やらせてる会社ありましたね。あれ、個人的には一番しんどいと思いますよ。だって元の職場に補充しに行ったら

「あー〇〇先輩じゃないっすか、へーいまOA用品の補充やってるんすか。あ、じゃあコピー用紙もうひと箱頼んでいいっすか、あ、急ぎなんで。はいトロトロしない!ダッシュ!」

とか言われるわけです。半年続けたら確実にどこかぶっ壊れてると思います。

労組ですか?労組も基本、経営と同じスタンスです。彼らはバカではないので、生産性が低い人の給料が自分たちの財布から出ていることをよく知っています。だから、追い出し部屋なんかを設置する際はもちろん事前に打ち合わせはするけれども、再就職支援や割増し退職金は議論しても追い出し部屋自体は黙認しますね。

まあ、そんな感じで、日本企業は大なり小なり、辞めてほしい従業員を追い込んで辞めさせているわけです。はっきり言うと、冒頭の某社労士センセイとの違いは、ノリノリで口に出すかどうかの差くらいしかないと筆者は思いますけどね。

・規制を無くすと豊かになる人、困る人

では、我々はどうすれば、可哀想な従業員を企業による追い込みから守ることが出来るのでしょうか?それは金銭解雇ルールを作ること、つまり「何か月分かの賃金を払えばいつでも簡単に解雇できるようにすること」です。手切れ金でクビに出来るんなら、誰もめんどくさい追い込みなんてしませんからね。

というか実際今でも、いわゆるブラック企業的なヤクザな会社は、そういう風にいらない従業員を辞めさせてます。十万円くらい包んで「お前、今日でクビだから」というノリであっさりと。従業員ボロボロに追い込んで辞めさせてる方がよっぽどブラックだと筆者は思いますけどね。

理解しやすいように図も書いておきましょう。分かりやすくするために、手切れ金は給料3か月分100万円、某社労士センセイの報酬も100万円とします。

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金銭解雇ルールを作るだけで、

・誰も追い込まれずに済む
・しかも従業員は100万円ゲットできる
・某社労士センセイは経営危機!

という効能が見込めるわけです。素晴らしい!青筋立てて某社労士センセイを叩いていた正義感あふれるネットの皆さんも、もう金銭解雇ルール導入に反対する理由はありませんね!

あと、ついでに言うと、こういう局面では左翼弁護士とか左翼ユニオンもちょくちょく登場して、同様に企業や労働者から金をむしろうと絡んできます。先の図で言うとこんな感じです(本編図アリ)。彼らが経営側の士業と険悪なのは当然ですよね。だって金の奪い合いしてるんだから。

筆者は某社労士センセイも左翼の労働弁護士も同じ穴のムジナだと考えています。どっちも企業や労働者がまっとうな経済活動で得たお金をむしって生きているけど、右からむしるか左からむしるかの違いだけですね。

世の中には規制のおかげで食ってる人というのが少なからずいて、そういう人たちはきまってもったいぶった理由を付けては規制緩和に反対するものです。平たく言えば、規制緩和というのは、企業活動に吸い付いているそういう蚊みたいな人たちをシャットアウトする意味あいもあるわけです。

以下、
ストレスチェックに期待するな、自分のメンタルヘルスはこうして守れ

※詳細はメルマガにて(夜間飛行

Q:「若手の自分に雑用が集中して困っています」
→A:「オススメはこいつに頼むとめんどくさいと思わせることです」

Q:「維新と大阪維新って何が違うんでしょうか?」
→A:「あえて言うなら民主党に期待している人たちととっくに見限ってる人たちの差です」

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逆に言うと、ちょっとでもマッチすれば学歴やら職歴やらは簡単にまくれるわけです。


編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2015年12月9日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった城氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。